カカの天下237「誕生日計画の裏側、そのに」
「なによサエすけ、こんなところに連れてきて」
「ちょっとカカちゃん抜きでお話したくてー」
お話されるサユカですっ。
学校のお昼休み、カカすけが先生と喋っている間にわたしたち二人は教室を抜け出し、誰もいない中庭へとやってきました。
「話ってなによ、こんな人気のないところに呼び出して」
「実は……私、サユカちゃんのことがー!」
「そういうボケいいから」
「おうおう、前からおまえのことが気に食わなくてなー!」
「別バージョンもいいからっ」
「一応やっておこうと思ってー」
この子もつくづくカカすけっぽくなってきたなぁ。
「でね、カカちゃんのお誕生日なんだけどー」
「ああ、その話ねっ。シューさんとのプレゼントの打ち合わせは来週だったわよね」
「うんうん。それでね、会場をどこにしたらいいと思うー?」
「どこって、カカすけの家じゃないの?」
「うん、そうしようかと思ってたんだけど……でもそれだとあらかじめ準備しておくってできないでしょー。私たちも学校あるしー」
前フリなしで突然「おめでとう!」って驚かせたい、その気持ちはわかるけど……どれだけ大がかりな準備する気なのサエすけ。
「だから、どこか大きい場所借りれないかなー」
「あのねぇ、知り合いでそんな場所貸してくれる気前のいい人なんて――」
そんな人――いない、こともない。
「心あたり、あるんだねー?」
「う……」
鋭い。
「じゃ、そこお願いねー」
「いやっ、でもっ」
「お願いー」
……お願いされてしまったっ。
そういうわけで、絶対無理とわかってるけど来てしまった。
サカイさんの家へ。
「――と、いうわけなんですけど」
「カカちゃんの誕生日の会場、いいですねー。わたしは全然おっけーですよー」
ほにゃほにゃ笑いながら承諾してくれたサカイさんは、重大な問題に気がついていないらしい。
「あの……でもそうなると、サエすけもこの家にきちゃうってことになるんですけどっ」
「え」
口をぽっかり開けて絶句するサカイさん。やっぱし気づいてなかったか。
「サエが……この家に?」
「はいっ」
ぽっかり口のまま器用に聞き返してくるサカイさんに頷く。
するとサカイさんは次第にわなわなと震えはじめ……
「ぃやっほおぉい!!」
なんか爆発した!!
「サエが! サエがわたしの家にー! ぃやったー! どうしましょうどうしましょうどうやってお出迎えしましょう!? お茶とお菓子と満漢全席と懐石料理と世界の料理フルコースのどれがいいですかねー!? ああ家も飾らないとっ、とっておきのモアイ像どこにしまったかしらー。あとクラッカーを千個くらい用意しましょうかそれともどこかのパレードを引っ張ってきましょーかー!!」
「ちょ、あのっ!」
「クラッカー千個じゃ足りませんかっ? 爆発が足りませんかー!? ではいっそ核――」
「そうじゃなくてっ」
そうじゃない……けどこの人いま何を言おうとした!? ま、まぁいいやっ。
「あのですね……別にサエすけの誕生日ってわけじゃないんですからっ!!」
「だってだってー! 娘がくるんですよー?」
「顔合わせたらダメなんでしょうがっ。どうせそれだけやるならカカすけの誕生祝いでやってくださいっ」
「ヤですねーサユカちゃん。よその子のためにそこまでするわけないじゃないですかー」
ごもっともだけどなんかムカつくなその理屈っ。
「なにはともあれ了解しました! ふふふー、何着て会おっかなー」
まるで恋人とデートが決まったかのようにうきうきするサカイさん……って!
「会う気ですかっ!?」
「直接顔は合わせませんよー。でも……ふふふ。いい考えがあるんです♪」
……そういえばこの人はサエすけの母親だった。裏で何を考えているかわからない笑顔を見て思い出す。
「うまくやりますから心配しなくても大丈夫ですよー」
この人はバカっぽいけど本物のバカじゃない。あれだけ会えない会えないと悩んでいたのに、憂いもなくここまで喜ぶってことは……ちゃんとした考えがあるんだろう。
「わかりました、ではここをお借りします! 今度サエすけと下見に来ますけど……本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよー。サエはこの家には来たことなかったはずですし、多分」
「……多分?」
「わたし、細かいこと覚えるの苦手でー」
……本当にバカじゃないわよね、この人。
「たーのしみたーのしみルンルンルン♪」
「あの、うるさいです」
「ルンルンルーン!! あ、下見にくる日付と時間は事前に教えてねー。対処するからー」
「あ、はいっ」
さて、どうなるかなっ。
不安だわっ。
さて、いよいよ来週ですね、カカの誕生日。
果たして無事に準備をすすめることができるのでしょうか。
そしてサカイさん(の頭)は本当に大丈夫なのでしょうかっ!?
そのさんは近日公開よてーです。