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カカの天下  作者: ルシカ
234/917

カカの天下234「愛ゆえに起こる殺人」

「はいサエちゃん、あーん」


「あーん、ぱく」


「……甘い」


 ……こんにちは、サユカです、給食中だからといって別に甘いものを食べているわけじゃありません。


「じゃー次カカちゃんね。あーん」


「あーん♪」


「……甘すぎる」


 ちっとも甘くないはずのほうれん草のおひたしを口に入れながら、わたしはげんなりして呟いた。


 甘ったるいのは……わたしの友達の雰囲気だ。


「あれ、どったのサユカン」


「そんなに甘いの? そのほうれんそー」


「……あー、うん。甘いわね。なんか」


 君ら見てると。


「でさ。君ら……いくらなんでもくっつきすぎじゃない?」


 ここまでの会話からもわかるとおり……カカすけとサエすけはべったり密着しながら給食を食べさせあっているのだ!


 朝の登校中からずっとだし!


 付き合ってんのか君ら!


「えー、だってさ。私たちは新たな絆に目覚めたんだよ?」


「一度はすれ違ったけどー、お互いの大切さが改めてわかったのー」


「もう私たち二人は一生、一緒なのさ!!」


「カカちゃん!」


「サエちゃん!!」


 ざざざ、ざっぱーん!


 ひしっと抱き合う二人の背後に荒波日本海が見える。


「……付き合ってられんわ」


「そんなことを言いつつ、隣のクラスにも関わらず私たちの教室で給食を食べているサユカンであった」


「サユカちゃんもくっつきたいのー?」


「トイレ!!」


 なんか旗色が悪くなってきたんで一時撤退。


 うーん……あの二人、仲直りしたのはいいんだけど。


 あそこまでラブラブされたら目の毒というかなんというか……なんか本当に禁断の恋におちて付き合ってるみたいだ。


 やれやれ……わたしはため息をつきながらトイレを済ませ、教室へ戻った。


「ぷいー」


「めそめそ……」


 あれ?


 今の今までベタベタしてた二人が離れてる!?


 しかもなんかサエすけはそっぽ向いてるし、カカすけはめそめそ泣いてるし!


「めそめそー!」


 口でめそめそ言ってるから嘘くさい泣き方だけどっ。


「な、何があったのっ?」


「サユカーン……サエちゃんに捨てられたー」


 破局はやっ!


「うん、ポイしたのー」


 ポイとか言うなっ。


「え、なんで? さっきまであんなに……」


「サユカン……代わりに私をもらって」


「代わりにって……君、さっきサエすけと二人で一生一緒って言ってたじゃないのっ」


「一回死んだことにして!」


「できるかっ」


「じゃー戸籍をいじって社会的に抹殺されたことにして!」


「……カカすけ、難しい言葉知ってるわね」


「こないだ殺人番組でやってた」


 テレビって知識の宝庫ね。あと、その物騒な番組は多分殺人事件のサスペンス番組かなんかのことだと思うけど、言い方気をつけようねカカすけ。


「ねーねー、サユカン。新しい人生をあゆもーよ。親御さんは泣いてるよ?」


 わたしゃ殺人事件の犯人かっ。


「……あー! はいはいわかったわかった」


 自分の隣の席をぽんぽん叩くカカすけに従って、隣に座る。


 するとさっきサエすけにしていたように、カカすけはべったりくっついてきた。


 ……まぁ、いいんだけどさ。


「サユカちゃんうれしそー」


「うるさい外野っ!」


「サユカン、私あーんするからカモン」


「マジで? 食べさせるの? うぅ……や、やればいいんでしょやれば。はい、あーん」


「ぱく」


「サユカちゃんなんだかんだ言ってー」


「だから外野やかましいっ」


「じゃ、次は私の番だね。はい、あーん」


「あーん……ふがっ」


 鼻にじゃがいもがホールインワン。


「……カカすけ、離れろっ」


「えぇー!?」


 サエすけを見るとその目が「そら見たことかー」と語っていた。わたしがいない間にこれやったわけね。


「サユカン! 私の愛を受け取ってよ!」


「鼻じゃ受け取れんわ」


「愛って痛いし熱いんだよねー」


 深いこと言うなー。


 実際は熱々のでっかいじゃがいもを鼻にいれたときのこと言ってるんだけど。


「うぅ……サエちゃんにだけじゃなくてサユカンにも殺されたー!」


「人聞き悪いこと言うなっ!」


「捨てただけだよー」


「殺されて捨てられたー!」


「ハイレベルにしてんじゃないわよっ」


 と、給食中に大騒ぎしてたのがまずかったのか、教卓で食べてたテンカ先生が寄ってきた。


「あーっと、おまえらさ、死ぬなら理科の時間にしろよ。実験するから」


「なんの!?」


「あ、家庭科の時間でもいいな。調理実習で」


「食べるのっ!?」


「それが嫌なら死ぬとか殺すとか、そういう言葉は止めろ」


「「「……はーい」」」


「んむ、素直でよろしい。とはいっても子供ってやつは禁止すると反発してやりたがるからな。たまに言うくらいならいいぞ」


「せんせー、それ私たちの目の前で言っていいんですかー?」


「オレは正直が好きだ」


 ……そういう問題かな。


 とにかく、先生の指示によってその場はお開きになったんだけど。


 カカすけは家に帰ってから、こんな会話があったそうな。


 トメさんと夕飯を食べている最中に、ふと思いついたように言ったんだってさ。


「トメ兄は私を殺したりしないよね」


「ぶっ!!」


「食べたりもしないよね」


「学校で何があった!?」


 カカすけ、本当にもうちょっと言い方気をつけようねっ。


 カカの夢が期間限定で叶いましたねっ。

 ほんと限定だけど。

 これで本当に二人は元通りです(笑)

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