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カカの天下  作者: ルシカ
229/917

カカの天下229「相談はほどほどに、がんばれタケダ」

 やぁ、俺タケダ!


 最近、サエ君に頼まれていろいろ動いているエージェントさ!


 どういう風に動いているかは企業秘密さ!


 秘密さ隠密さ!


 そういうわけでいっつも隠れてるから、またカカ君としばらく話せていないのさっ。


 めげるぜ!


「どうしたのタケダ君。ため息なんかついちゃってー」


「……いやな、カカ君ともっと――」


「心配しなくても、仕事のできが悪いからって実験台になんかしないよー?」


 実験台ってなんの!?


 出来が悪すぎたら実験台にされるんですか!?


「も、もっとがんばります……」


「んー、いいよ別に。もう結構たまったしー、あとは適当で」


「そ、そうっすか?」


 なぜに敬語なのだろう自分。ううむ……先日の飲みジュースでのでサエ君の弱いところを見て、これからは対等に仲良くできるかと思ったのだが……


 なんかスッキリしちゃったらしく、最近は黒さ全開だ。機嫌を損ねると何されるかワカラン。


「では明日からはコソコソ作業は終わりだ!」


「はいはいー、がんばってねー」


 ファンクラブとかいう連中もいなくなったし、ようやく堂々とカカ君に声をかけることができるのだ!



 

 そうやって意気揚々と登校してきた次の日。


「カカ君、おはよう!」


「……はょ」


 ……あら?


 なんだ、この淡白すぎる挨拶は!?


 目もあわせずに去っていった我が女神! ああ、世界はなぜにこうも罪つくりな女性をボーン(英語で『生まれる』の意味)してしまったのか!? 障害を乗り越える度にマッチ(英語で『多くの』の意味)困難が俺をアタック(英語で攻撃――書くまでもないか)する! あぁ、世界よ、なぜそんなに僕にボーンでマッチでアタックなのか!?


「タケダ君、またマッチ(多くの)困難なのー?」


「おおサエ君! そうなのだよ! マッチでボーンボーンでアタックなのだ! ……なぜ俺の心の声が聞こえている」


「タケダ君さ、興奮したらいつも思ってることベラベラ喋ってるよー。難しく言おうとして失敗した感じに」


「……いつも?」


「マッチいつも」


「おぅ、マッチボーン!!」


「なにそれー」


「驚きのあまり合わせてしまった」


 カカ君がうつったかな?


「タケダ君もこりないよねー。自分が頭いいとか言ってるわりには」


「ふっ、サエ君よ。本当に頭のいい人間というのはな、目的に対して努力を止めない者のことを言うのだ!」


 って何かの本に書いてあった!


「なんだ、受け売りかー」


「また口から漏れてる!?」


 こ、これは危険だ……俺の秘めたるカカ君への想いが漏れないように気をつけねば!


「だだ漏れだよー」


「マジか!? というか俺の心の声って、全部喋ってしまってるのか?」


 俺にテレパシーはないのか?


「プライバシーでしょ」


 テレパシーなんかあるわけないな! あっはっは。


 笑ってる場合じゃない! プライバシーがないだと! どうしてくれる!


「自分のせいでしょー」


 そうでした。


「ふふ、タケダ君やっぱおもしろい。無駄な努力とは思うけど、マッチ頑張ってねー」


「……うん、マッチ頑張るよ」


 しかし、なぜに今日のカカ君はあんなに機嫌が悪かったのだろうか?


 もっとサエ君と相談して対策を練らねば……




 おまけ。


「おぅカカ。おかえりー」


「…………っ」


「おい、どした。ゴミ箱けっ飛ばすなよ。中身カラだから別にいいけど」


「だってさ!」


「不機嫌の理由はなんでございましょうかお嬢さま」


「最近、サエちゃんとタケダとかいうのがコソコソ仲いいんだもん!」


「……あー、それは多分、あぁ、言わないほうがいいか」


「なにあのタケダってやつ! これからも無視してやる!」


「……やってることは大体わかるが、裏目に出てるなーあいつ」


 そらそんだけサエちゃんと喋ってればねぇ……

 サエちゃんはカカの想い知らないから、こうなるのは当然なわけで……

 タケダはもういろいろがんばれとしか言いようがないわけで……

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