カカの天下229「相談はほどほどに、がんばれタケダ」
やぁ、俺タケダ!
最近、サエ君に頼まれていろいろ動いているエージェントさ!
どういう風に動いているかは企業秘密さ!
秘密さ隠密さ!
そういうわけでいっつも隠れてるから、またカカ君としばらく話せていないのさっ。
めげるぜ!
「どうしたのタケダ君。ため息なんかついちゃってー」
「……いやな、カカ君ともっと――」
「心配しなくても、仕事のできが悪いからって実験台になんかしないよー?」
実験台ってなんの!?
出来が悪すぎたら実験台にされるんですか!?
「も、もっとがんばります……」
「んー、いいよ別に。もう結構たまったしー、あとは適当で」
「そ、そうっすか?」
なぜに敬語なのだろう自分。ううむ……先日の飲み会でサエ君の弱いところを見て、これからは対等に仲良くできるかと思ったのだが……
なんかスッキリしちゃったらしく、最近は黒さ全開だ。機嫌を損ねると何されるかワカラン。
「では明日からはコソコソ作業は終わりだ!」
「はいはいー、がんばってねー」
ファンクラブとかいう連中もいなくなったし、ようやく堂々とカカ君に声をかけることができるのだ!
そうやって意気揚々と登校してきた次の日。
「カカ君、おはよう!」
「……はょ」
……あら?
なんだ、この淡白すぎる挨拶は!?
目もあわせずに去っていった我が女神! ああ、世界はなぜにこうも罪つくりな女性をボーン(英語で『生まれる』の意味)してしまったのか!? 障害を乗り越える度にマッチ(英語で『多くの』の意味)困難が俺をアタック(英語で攻撃――書くまでもないか)する! あぁ、世界よ、なぜそんなに僕にボーンでマッチでアタックなのか!?
「タケダ君、またマッチ(多くの)困難なのー?」
「おおサエ君! そうなのだよ! マッチでボーンボーンでアタックなのだ! ……なぜ俺の心の声が聞こえている」
「タケダ君さ、興奮したらいつも思ってることベラベラ喋ってるよー。難しく言おうとして失敗した感じに」
「……いつも?」
「マッチいつも」
「おぅ、マッチボーン!!」
「なにそれー」
「驚きのあまり合わせてしまった」
カカ君がうつったかな?
「タケダ君もこりないよねー。自分が頭いいとか言ってるわりには」
「ふっ、サエ君よ。本当に頭のいい人間というのはな、目的に対して努力を止めない者のことを言うのだ!」
って何かの本に書いてあった!
「なんだ、受け売りかー」
「また口から漏れてる!?」
こ、これは危険だ……俺の秘めたるカカ君への想いが漏れないように気をつけねば!
「だだ漏れだよー」
「マジか!? というか俺の心の声って、全部喋ってしまってるのか?」
俺にテレパシーはないのか?
「プライバシーでしょ」
テレパシーなんかあるわけないな! あっはっは。
笑ってる場合じゃない! プライバシーがないだと! どうしてくれる!
「自分のせいでしょー」
そうでした。
「ふふ、タケダ君やっぱおもしろい。無駄な努力とは思うけど、マッチ頑張ってねー」
「……うん、マッチ頑張るよ」
しかし、なぜに今日のカカ君はあんなに機嫌が悪かったのだろうか?
もっとサエ君と相談して対策を練らねば……
おまけ。
「おぅカカ。おかえりー」
「…………っ」
「おい、どした。ゴミ箱けっ飛ばすなよ。中身カラだから別にいいけど」
「だってさ!」
「不機嫌の理由はなんでございましょうかお嬢さま」
「最近、サエちゃんとタケダとかいうのがコソコソ仲いいんだもん!」
「……あー、それは多分、あぁ、言わないほうがいいか」
「なにあのタケダってやつ! これからも無視してやる!」
「……やってることは大体わかるが、裏目に出てるなーあいつ」
そらそんだけサエちゃんと喋ってればねぇ……
サエちゃんはカカの想い知らないから、こうなるのは当然なわけで……
タケダはもういろいろがんばれとしか言いようがないわけで……




