カカの天下227「公園で遊ぼう、ブランコ編」
「今日はなにする?」
「ブランコしたいー」
「あははっ、サエすけったら子供ねぇ」
「サユカちゃん座ってー。思いっきり押してあげるから」
「……そっちしたいのね」
ブランコのようにぶらぶらと公園に遊びにきているカカです。
サエっちゃんとサユッカンといつものように放課後に遊びにきたのです。ん、なんで名前が跳ねてるかって? なんとなくノリで。
「ほらほら座って」
「はいはい……本当はこんな子供っぽいブランコにのりたくないんだけどねっ」
とか言いつつ嬉しそうなサユカン。
「ほら、座ったわよっ」
「じゃー私が背中を押すから、カカちゃん正面から押してね」
「へ、私も押すの?」
「キャッチボールもしたいのー」
なるほど、ブランコに乗ったサユカンでキャッチボールしようってことか――って。
「サエちゃん、それ正面から受け止める私って結構危なくない?」
「カカちゃんなら大丈夫だよー」
「ちょっと、ボール扱いされてるわたしのほうがっ」
「サユカちゃんだからだいじょぶー」
「ねぇ、それって『カカすけは運動神経いいから大丈夫』とかいう意味と違って『わたしはどうなっても気にしないから大丈夫』って意味に聞こえるんだけど!?」
「ちがうよー。サユカちゃんならきっと面白い顔してくれるから大丈夫って意味だよー」
「そっちのほうが意味わかんないしっ」
「とにかくいくよー」
「わっ、ちょと」
サエちゃんは問答無用でサユカンの背中を押し始めた。徐々にブランコのスピードが上がっていく。にしてもサエちゃん、今日は妙に強引だなぁ。
「そーれー、サーブ!」
へ、バレーボール?
困惑する私に容赦なく迫るサユカン! その勢いとサユカンの鬼気迫る顔にちょっとビビリながらも、なんとかブランコの端を持って受け止め――返す!
「れ、レシーブ!」
ブン、とそれなりに勢いがついて返っていくサユカン。
でもサエちゃんのほうは背中側だから、比較的簡単にサユカンボールを受け止め、返してきた。
「トスー」
トスのわりには結構な勢いが……えっと、トスときたら……
「アタック!」
「アタックすんなあああああ!!」
びゅおん! といい感じに風を唸らせながらすっ飛んでいくサユカンボールを、サエちゃんは見事受け止めた! 運動神経よくなったなーサエちゃん。
「回転レシーブー!」
「回転さすなああああああ!!」
ぐるんぐるん回りながら向かってくるサユカンボールはさすがに危険と判断した私は……避けた。
「避けるなあああああ!!」
「……こら、危ないことすんなや若人ども」
そんな感じでサユカンで遊んでいると、偶然通りかかったらしいトメ兄が現れた。
「お、トメ兄。夕飯の買い物?」
「そうだけど……とりあえずサユカちゃん助けるぞ」
暴走気味のブランコをわりと簡単に受け止めたトメ兄は、ふらつくサユカンを立たせて、支えてあげた。
「ほら、そこのベンチで休みな……ったくおまえらな。遊ぶなら相手を見てやれ! サユカちゃん本気で辛そうな顔してたろ!」
……や、いまトメ兄に抱きつけてめっちゃ幸せそうな顔してますけど。
「サユカちゃんはここで休んでな。カカ、僕がおまえに本当のブランコの遊び方を教えてやる。ちょっと座れ」
「ん? あいあい」
遊びと聞けば素直に従う。これ、子供の真理ね。
「座ったよ?」
「よし、そしたらな」
お? なんかトメ兄がブランコに座った私をぐるぐる回し始めましたよ?
そしたらもちろんブランコを支えている二本の鎖もぐるぐるねじれていって……
「レディー、ゴー!!」
「お、お、おー?」
トメ兄が私の肩に置いた手を離した。するとねじれた鎖は当然元に戻ろうとして回転していって――
「おー!!」
ぐるんぐるんぐるんぐるんっとぉ!!
やがてその回転は止まったけど、私の目に映る世界はいまだにぐるんぐるん回ったまま……ええい、わずらわしい!
「こら世界、フラフラしてないでしゃきっとせんか!」
「や、フラフラしてるのカカだから」
「カカちゃん世界のせいにしてるー」
「トメ兄! もいっかい!」
「あれ、気に入ったの?」
わりと楽しかった!
「ちっ」
なんか舌打ちしてるけど気にしない!
「トメ兄、もっかいー」
「はいはい」
そんな感じで、私たちはブランコで遊んだ。
おかげでトメ兄は夕飯の買い物にいけず、夕飯は店屋物となってしまいましたとさ。
ラッキー♪
「ところでサエちゃん。なんか今日強引だったね」
「え、そうかなー」
「うん、なんかあったの?」
「……ふふふー」
なんだろう、この笑いは。
何か企んでるのかなー。サエちゃんのことだし。
ブランコでぐるぐる、昔よくやりました。
でもねじれてく鎖、あれに服挟まったりすると結構危険そうですよね、気をつけましょう^^;