カカの天下226「音楽の授業、のりのり」
「さて、今から音楽の時間なわけだが」
皆さんこんにちは、ふぁ……給食の後の授業でちょっと眠いカカです。
テンカ先生の言ったとおりこれから音楽の授業なわけですが、先生の目はとろんとしていて、とてもやる気があるようには見えません。私と同じです。
「えっとな、眠いから自習」
ほんとにやる気ないこの人!
「ほら、寝る子は育つって言うじゃん? 教頭ごまかすためにそれっぽい音楽かけとくからさ、昼寝でもしとけ」
え、お昼寝? それはちょっと嬉しいな。
「先生、ほんとに寝てもいいんですか?」
おそるおそる聞くニシカワ君に、テンカ先生は手をひらひらさせながら答える。
「おぅ、なんせオレが寝るからな」
なるほど、何かあっても全部先生のせいになるわけだ。
「先生、寝不足なんですかー?」
「あのな、腹がいっぱいになったら人間眠くなるの。そういうもんなの」
や、そりゃそうだけどさ。大人なのにそれでいいの?
「じゃ、オレは寝るから。おまえらもBGM聞きながら寝ろよーおやすみ」
そう言ってラジカセのスイッチをいれた後、テンカ先生は机に突っ伏した。
ふむ、先生としてこれはどうかと思うけど……音楽を聴きながらお昼寝というのは悪くない。
私と同意見の子も多いのか、もう机にぐったりとしている子が何人かいる。よし、寝ちゃえ。
お、BGMが聞こえてきた。
『き〜み〜が〜よ〜お〜は〜♪』
国歌斉唱。
寝にくい。
や、たしかに音楽の時間で使われるマジメっぽい曲だけどさぁ。
「先生、これはさすがに――」
「ぐー」
抗議しようとしたらもう寝てるし。
「……オレも……らじお……だせー」
なんかよくわかんない寝言呟いてるし。
「どうする?」
「なんかこんなの聞きながらじゃ寝れないよなぁ」
「遊ぶか?」
「でもどうやって」
ざわざわ騒ぎ始めるクラスメイト。でも『君が代』の音量が大きいから多分外には聞こえない。仕方ないなぁ。
「こほん……諸君! 遊びのことなら私にまかせろ!」
「「「おぉ、番長!!」」」
「番長って言うな! さて、今は音楽の時間だよね。だから音楽で遊ぼう」
「どうやってー?」
そう、たとえば……
『さ〜ざ〜れ〜、い〜し〜の〜♪』
「石野君、さざれ!」
「は?」
「いいからさざりなさい! 国の命令だ!」
「や、さざるってなにさ!?」
「いいからさざれよ石野!」
「番長に殺されるぞ」
や、私いくらなんでもそこまでしませんが。
「え、えっと……じゃあさざれのポーズ、いきます!」
ぱちぱちぱち。
「はいっ」
「……なにそれ」
「さ、サザエのポーズ」
「失格! おもしろくない! お、今度は蛍の光か」
『ほ〜た〜るの、ひ〜か〜り、まど〜の、ゆ〜う〜き〜♪』
「結城君、窓!」
「おっけー! いぇーい、まどー!!」
ノリいいなこいつ。やってることは窓から身を乗り出して「絶景かなー」とか言って周囲を見渡してるだけだけど。
「さ、次は――」
そんな感じで歌になぞって遊んでるうちに時間が経ち……
「つば〜さ〜が〜ほし〜い〜♪」
「アヤちゃんが翼君がほしいって!」
「きゃー、アヤちゃんだいたーん!」
「この大空に〜つばさをひろげ〜♪」
「アヤちゃんが翼君を開きたいんだって!」
ひ、開くってどこを?
「きゃー、アヤちゃんすぷらったー!」
あ、翼君の開きってことか。アジの開きみたいな感じで。
……食べるのかな、アヤちゃん。
まぁそれはともかく、いつのまにかクラスで一番歌がうまいアヤちゃんのオンステージになっている。みんなも踊ったりはやし立てたり伴奏したりと大騒ぎだ!
そんな楽しい時間も、そろそろ終わり――
「なにを騒いどる!?」
あ、終わっちゃった。デストロイヤー教頭登場。翼君の開きでお開きかぁ。
デストロイヤーは音楽室内を見渡して……とりあえず寝てるテンカ先生の首根っこを掴んだ。持ち上げられてもテンカ先生まだ起きないし。
「いま立っている生徒、ちょっときなさい」
う……ノリノリだったうちのクラスメイトはほとんどが立って踊っていた。当然私もだ。指揮なんかしちゃってたし……はぁ、ぬかった。
「あれ。サエちゃん座ってたの?」
「うん、こんなこともあろうかと座りながら鉛筆でたいこ伴奏してたー」
……さすがサエちゃん、ぬかりないな。
このあと、私たちは教頭にこの非常識を破壊された。や、怒られただけだけど。
ノリノリくらい、いいじゃんねぇ? 音楽の時間なんだし。
『君が代』、『蛍の光』、『翼をください』の歌を使わせていただきました。誰でも知ってる歌ですよねっ。
新しい名前がいくつか出てきましたが、今後も登場するかは不明です。なにせ歌から生まれたようなもの――げふんげふん。や、けしてそのようなことは……あるかもねっ。細かいことはキニシナイッ(笑