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カカの天下  作者: ルシカ
224/917

カカの天下224「最終回!?」

「あれ」


 こんばんは、カカです。


 学校も終わって我が家に帰ってきたところで、私は不審者を目撃しました。


 そう、我が家の窓から大きな風呂敷を抱えた人間がのたのたと這い出してくるのを!


「どろぼー!」


「なにっ、どろぼーはどこだ!」


「あんただ! って、お姉?」


 ご丁寧に覆面までしていたけど、声でなんとか姉だとわかった。


「なにしてんの」


「やー、ちょっと旅に出るからさ、荷物を取りに」


 ……え?


「旅にって……また武者修行とかいうの?」


「や、実はタマのお母さんが見つかってさ」


 タマの!? そういえば姉娘って、どこかで押し付けられた子だったんだっけ……


「ちょっと居場所が遠いんだけど、これがすんごい資産家らしくてさ。できるだけ迷惑料ふんだくってやろうかと思って」


「そ、そうなんだ」


「あわよくばそこの娘になっちゃおうかと企んでる。ま、しばらくは戻ってこないわ」


「そう、なんだ」


「そうそう。厳密に言うと、この作品にはもう出番はないってことね。あたし最終回」


「なに訳わかんないこと言ってるの?」


「こっちの話よ。んじゃ。ばいびー!」


「ま、まって」


「なに?」


「あの、さ……できれば、帰って、きてね」


「あっはっは。いつもうざいだの消えろだの言ってるくせに」


「そ、それは――」


「お望みどおり消えるのよ。よかったじゃん」


 姉が、冷たい目をしてる。


 こんな目、見たこと、ない……


「ばいびー」


「……う、うん、ばいばい」


 私は、そんな答えを返すことしかできなかった。


 まるで忍者みたいに姉はシュバッと消えてしまう。


 お姉が……いなくなっちゃうんだ。


 や、元気だせ自分。


 確かにうるさいのがいなくなって清々したじゃないか。寂しくないといえば嘘になるけど……タマも本当のお母さんのところのほうがいいだろうし!


「カカちゃん」


「あれ、サエちゃん?」


 聞きなれた声に振り向くと、そこにはいつもの笑顔のサエちゃんが立っていた。


「早いね、約束の時間までまだ――」


「お別れを、言いにきたのー」


「……へ」


 うそ。


 なに、これ?


「実はねー、お母さんから連絡があったの。やり直そうって。親戚の人たちは全部言いくるめたからってー」


「え、なに、何の話?」


「それでねー、二人で新しい土地でやり直そうってなって」


「え、やだ。そんな」


「……私ね、お母さんが大好き。今まで強がって、カカちゃんをお母さんの代わりにして我慢してきたけど……もうそんなこと、しなくていいんだー」


 え、なに。


 我慢って、なに。


 代わりって、なに。


「だからね、お別れ」


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


「ばいばい」


 姉を送ったときのように、ばいばいなんて言えなかった。


 でもサエちゃんは私のほうを振り向きもせず、高そうな車に乗って、あっという間に見えなくなってしまった。


 追おうとした。でも身体が動かなかった。


 ショックなことが多すぎて、何から考えればいいのかわからない。


 自分がいま、何を思っているのかワカラナイ。


「おう、カカ」


「トメ兄!? ねえ聞いて! 姉が、サエちゃんが――」


「僕さ、サユカちゃんと結婚することにしたから」


「えええええ!?」


 あまりに予想外なことが続いて私はもうパニックだった。そんな冗談としか思えない言葉を笑い飛ばせないほどに。


「ごめんね、カカすけ」


 トメ兄の隣で幸せそうに笑うサユカン。幸せそう、可愛い、なのに、なぜかサユカンが私を馬鹿にして笑っているふうに見えてしまう。これは錯覚? 錯覚だよね。嘘だよね!?


「法律とかあったんだけど、父がなんとかしてくれてさ」


「すごいんだよ、トメさんのお父さん。裏操作で法律だって変えちゃうんだから。さすが現代の忍者って感じだよねっ」


 あ、はは。


 はははは。


「じゃ、僕らは二人で暮らすから」


「またね、カカすけ。わたしとトメさんのキューピッド役、感謝してるわ。だからたまには遊んであげるっ」


 あはははははははははははは!!


 は、ははは、は……


 なに、これ。


 こんなのって、ないよ……


 皆、一緒だったのに。


 昨日まで皆で、笑ってたのに。


 今日だけで皆、いなくなるなんて。


 そんなのおかしいよ。


 嘘だよね。


 夢だよね。


「誰か、夢って言って……ねぇ、夢だよって、ねぇ……ねぇ!! お願いっ、誰か……おね、がぃ……!」


 私は泣いた。


 何に泣けばいいのかわからないまま。


 ただひたすらに目を瞑って泣き続けた。


 コワレタ世界を見ないように。


 私自身もコワレテしまえと願うかのように。


 そして――


 私の世界は。


 壊れた。




 ――ご愛読、ありがとうございました。




 なんちゃって。


「カカ、朝だぞ」


「ってぇ、本当に夢オチかよ!!! 私のこのやりきれない想いはどこにやればいいんだあああああああ!!!!」


「カカ、起き抜けに誰に向かって叫んでるんだ?」


「本気で泣きそうになったじゃないかあああああ!!」


「か、カカ? なんで顔ぐしゃぐしゃで僕に抱きつくんだ」


「悪夢どっかいけぇ!! あうううううううううううううううううう!!」


 壊れた夢の世界を恨みながら、私は泣いた。


 信じられないほど冷たい世界と、この温かい世界の温度差を感じて。


 この温かさに、感謝しながら。


 あと、こんな世界を見せた誰かをおもいっきり恨みながら。


 はい恨まれてます作者です(爆)

 皆さん、いかがでしたでしょうか?

 すいませんドッキリでした最終回じゃないですよまだまだ続きますよ? や、ほら、やっぱ日常にも刺激が必要じゃないですか、だからね? そんな責めないでイタイ痛い石投げないで。

 でもですね、今回は想定できる中で本当に嫌な最終回のケースを夢に出しましたけど。そういう夢を見ると、今の日々の本当に大切なものが見えてくると思うんです。なにげない日々。満足していることも不満もある。でもその不満ですら大切なものかもしれない。それは失ってみなければわからない。

 考えてみるだけじゃわからない。体験しなければわからない。

 でもそれを疑似体験し、勉強できる場所が『夢』だと思います。

 カカはめぐまれている子だと思います。でもカカだけじゃありません。他の人も、必ずどこかに恵まれていることがあると思います。

 それを当たり前と言って見逃してほしくない。失くしてから気づいても遅いのだから……そんな思いをこめて、カカにはこんな夢を見せました。

 別に読者の皆さんを驚かせたかっただけではありません。ええ、ちょっとその気もありましたけど本来の目的はこっちです! 

 ……本当ですよ?

 あ、ちなみにこれは『みたに』さんからのリクエスト『夢落ち話希望』から書きました。リクエストいただいてから結構経ってますが、お応えが遅れてすいません^^;


 さて、気を取り直して次回はカカラジです! 

 ちょっとダークな話の次は盛り上がっていきましょう!

 

 ……いじわるしたからって見捨てないでくださいね^^;

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