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カカの天下  作者: ルシカ
222/917

カカの天下222「あまにがティータイム」

「ただいまー」


「お土産は?」


「カカ、普通お出迎えのときはなんて言うんだ?」


 『おみやげ』じゃなくて『おかえり』でしょうに。


「おかみやえりげ」


「……なぜ合体させる」


「おかみやさん」


「なぜさん付けする」


「そんな人いそうだから」


 えりげってどんな漢字になるんだろうなぁ、なんて思いつつどうもトメです。


 ただいま買い物から帰ってきたとこで、出掛けにお土産を頼まれていたのでした。カカの頭は今そのお土産でいっぱいです。


「で、なに買ってきたの――」


「おかみやさーん」


「おかえりなさいっ!」


 おっとサエちゃんとサユカちゃんも登場。


「サユカちゃんだけだよ、普通におかえりって言ってくれるのは」


「えっ、おもしろくなくてすいませんっ!」


「や、謝んなくていいから」


 おもしろいこと言わなきゃならない義務なんか無いんだよ? 一応。


「それで結局は何買ってきたの」


「栗のパンナコッタとクレームブリュレ。二つずつな」


「オゥ、パンナコッタァ!」


 ヘタクソな英語みたいな発音で叫ぶカカ。なんか発音が気にいったのかな。


「ブリュー!」


 中途半端なとこで止めるサエちゃん。何の擬音だ?


「えっとっ、えっと……」


「や、だから無理して変なこと言おうとしなくていいから」


 いくら変な子トリオでも一人くらいまともなのいないとね。


「パンナちゃんってどんなお菓子?」


「ブリュちゃんはー?」


「擬人化したら食べにくくなるぞ。えっと、パンナコッタは生クリームたっぷりプリン、クレームブリュレは表面がぱりぱりの焼きプリンってとこかな」


「おいしいの?」


「僕は好きだぞ」


 和風びいきの僕だけど、別に洋菓子が嫌いなわけじゃない。


「僕はクレームブリュレ食べるけど、他のは早いもの勝ちな」


「わたしもクレームブリュレッ!」


 即答だサユカちゃん。そんなに食べたかったのかな。


「おそろいですねっ」


「ん、そうだね。じゃおそろいついでに緑茶も一緒に飲む?」


「はいっ」


 洋菓子に緑茶はないだろう、と思ったそこのあなた。


 甘いものは緑茶になんでも合うんです! これ、僕理論。


「んー、じゃあ私もたまには緑茶飲んでみようかなー」


「……じゃ、私も!」


「カカ、おまえ緑茶嫌いだろ」


「うー、でも私だけ仲間はずれヤダ」


 そこまで言うなら煎れてやるが……




 さて、休日のおやつスタンバイオーケー。


「いただきます」


「「「いただきます」」」


 なんとなく給食と同じように合掌して、まずはお茶をいただく。


 ずずず、と四つのすすり音が居間に響く。


「にが」


「……じゃあ別の飲めよ」


「ヤダ。大体さ、緑茶が苦いのは当たり前でしょ」


「じゃそれをわざわざ言うな」


「うるさいな。暑いときに暑いって言っちゃうのと同じだよ。言っちゃうの! あむっ……あまっ」


 生クリームたっぷりだからな。そりゃ甘いだろう。


「にがっ」


 うるさいのは放っておいて、と。


 ぱりっとクレームブリュレの表面をやぶり、中からとろりとしたプリンが顔を出す。こんにちはプリンさん。さぁ僕の口の中へどうぞ。


「あまっ」


「サユカちゃん、緑茶と洋菓子だけど合うかな? 僕は好きなんだけど」


「は、はいっ。死にそうなほどおいしいです!」


「サユカちゃんごしゅーしょーさまー」 


「にがっ」


「まだ死んでないわよっ、死にそうなだけで」


「どうやったらトドメさせるー?」


「あまっ」


「そんなにわたしを殺したいのかサエすけ」


「サユカちゃんがいなくなればそのクレームは私のものに」


「にがっ」


「こっち食べたかったのかサエちゃん」


「私は全部食べたかったです」


「「おい」」


「あまっっ」


 僕とサユカちゃんが文字通りサエちゃんにクレームをつけたところで、僕ら三人の声がハモる。


「「「うるさい」」」


「に――がめんなさい」


 がめんなさいってなんだよ、まったく仕方ないヤツ。


「牛乳でいいか?」


「うぅ……うん」


 嫌いなものってそう簡単に治らないもんだよな。やれやれ。


 その後は特に問題なく、僕らはゆったりとしたおやつを楽しんだ。


「にが……くもないし甘くもない。牛乳味ってなんて言えばいい?」


「黙って飲め」


 岡宮愛理毛さん。

 作中のを漢字でやったらこんなんでました。毛がヤな感じですね。

 これを読んでいる人で本当にいらっしゃったら勝手にお名前使ってごめんなさいっ。


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