カカの天下220「無防備でもツヨイ子ら」
「ただいまー」
「ぐー」
すばらしいお出迎えありがとう、トメです。
仕事から帰ってくれば居間に転がる三つの物体。川の字になって気持ちよさそうに眠っていらっしゃいますカカサエサユカ。
「……ただいまー」
「ぐー」
……さみしい。
こほん! さて、眠っているものは仕方ない。
起こさないように部屋に戻るかー。
「ふぅ」
「……めそ」
っと……寝言か。にしても『めそ』ってなんだ。さすが我が妹。相変わらず普通の寝言は言わないな。
「そう、例えば『お腹いっぱい、もう食べられないよ』とかベタなのは」
「おかわり」
うぉ、ビックリした。
そっかぁまだ食べれるんかぁ――じゃなくて。いまの声サエちゃんか。
さっきから僕が声出すと反応してるような……
よし、ためしに。
「ばんごー」
「……いち」
「いちー」
「いちっ」
全員一番かよ。謙虚さが無いやつらだな。
「好きなものは?」
「サエちゃ」
「ごはんー」
「トメさんっ」
おお、サエちゃんが寝ててよかったなカカ。正直すぎるぞ。
しかしサユカちゃん、寝言とはいえ僕のことを好きって言ってくれるなんて……いやぁ、子供に好かれるのって嬉しいな。
「鈍感め」
「あれ、父さん」
「出たなテレパシートメ兄……むにゃ」
カカのやつ、まだ父さんのことテレパシーとか言ってるのか。しかしこいつの寝言はいつも本当に寝てるのか怪しいのばっかだなぁ。
「出張から帰ってきたのか?」
「おう。すぐ発つがな」
「そか。この時期は忙しいね。いってらっしゃい」
「おう」
ここでカカがむにゃむにゃと一言。
「いらっしゃい」
『いってらっしゃい』を変に略すな。誰が来店したんだよ。
「俺だ」
「人の心読んでまで合いの手いれなくていいよ父さん」
「ちぇ」
さて、と。
父さんもシュバッと消えたところで、もうちょっとこいつらで遊ぶか。次は個別にいこう。
まずはカカ。
「最近、お兄ちゃんに隠してることとかないかな?」
「トメ兄白髪がふえた」
「マジで!?」
あ、あとで確認してみよう……くそぅ、悪さしてないか聞こうとしたのに思わぬ反撃が……
「かわいそ……」
可哀想とか言うな! 鏡見るの怖いだろ!?
気を取り直して、次はサエちゃんだ。
「トメお兄さんのことどう思ってる?」
「ごはんー」
食べるの!?
「つくるひとー」
あ、ああそういうことか。びびった。なんか答えに納得いかないけど、食べられるよりはいいや。
さて、次はサユカちゃん。
「トメさんのことどう思ってる?」
「メチャクチャにしたい」
しないでくださいお願いします。
サユカちゃん……僕のこと好きなの嫌いなの? どっち? そのよだれはどういう意味? こわい……
詳しく聞いてみたいのは山々だけど、もし誰か起きてそんな場面見られたら何を言われるかわかんないし、やめとこう。
夕飯の買い物でも行ってくるかな。
くそー、しかし気になるな。
白髪。
家に帰ってくると、ちょうどカカが起きたところだった。
「……んにゃ、あれ」
「おはよう、カカ」
「メソポタミア文明最後のトメ兄はどこ?」
「ああ、さっきの『めそ』ってそのことかぁ、って、うぉい!」
なんちゅー夢見とるんだ。
どんな僕かちょっと気になるじゃないか。
笑える話よりものんびーりした話書こうと思ってお昼寝話にしたのですが……あんまのんびりできてませんね(笑)
むむむ……近々もっとのんびり話を書きます!
別に私がリアルでのんびりできてないからじゃないですよ!
ほんとですよ!