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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下22「感謝の仕方」

 今日は勤労感謝の日。


 世の中では祝日だが、僕の勤めている会社は普通に出勤日だった。休日出勤じゃない、普通の、休日手当てのもらえない出勤日だ。くそったれ。 


 そんなやさぐれた僕は、せめてもの抵抗に早めに仕事を終えて家に帰ってきた。


「ただいまー」


「おかえりー」


 傍若無人で有名な妹、カカの声が返ってくる。どうでもいいけど、勤労感謝の日にいつも勤労してる人が働いて、勤労していないお子様が休みなのは……どうにも納得がいかない。


 そんな妹は僕が居間に入ると「おっす」と近寄ってきた。


「トメ兄、今日って働いてる人に感謝する日なんだよね」


「お、知ってたのか」


「だからね、わたしもいろいろと用意してみたんだよ」


 おお、なんと気の利く妹か!


 やさぐれた僕の心を癒してくれる……


「はい」


 ぽん、と渡されたのは小さな封筒。中にはじゃらじゃらと小銭っぽいのがいくつか。


「なに、これ?」


「謝礼金」


「あんだって?」


「あれ、感謝してる人にあげるお金のことだよね、謝礼金って」


「いや、たしかにそうだけどさ……こういう場面に渡すものじゃないぞ」


 どちらかというと自分より立場が上の人間からもらうような感じだよな、謝礼金って。


「大丈夫、安心して」


「何が」


「こんなこともあろうかと他にもお礼を用意してあるから」


 こんなこともあろうかとって……ちゃんと疑問には思ってたんだな謝礼金。


「えっと、まずはこの鉄パイプを」


「あいや待たれい! なぜに君は喧嘩上等な鉄パイプをお兄様に向かって振りかぶっているのでありましょうか?」


「あれ? これが正しいお礼参りだよね」


「それお礼じゃないから!」


「え。だって恩をアザで返すっていう有名なことわざもあるし」


「違うっ! それ間違って覚えてるから!!」


 普通に考えればわかるだろう! 感謝してる相手をボコってアザだらけにするなんてどこの地獄の礼儀だよ!?


「もう……トメ兄は感謝されてるくせに態度でかい」


「感謝されてる気が全然しないからだっての」


「自分にその気がないからって……相手の気持ちも考えてあげないと、ひどい目にあうよ?」


「……なんかそれ、別の話になってないか?」


「ま、なんかのドラマのセリフ適当に言ってみただけだし」


 このお子様は。


「まあまあ、トメ兄」


「なにさ」


「いつもありがと」


「……へ?」


 ぺこりと頭を下げて、何事もなかったかのようにスタスタと去っていくカカ。


「……なんだ、あいつ。いきなり」


 やたらと素直にお礼言われたけど……まさか、今までのは単なる照れ隠し、とか?


 だとすればかなり捻くれた照れ隠しのような気もするが……僕の妹だし、仕方ないか。


 なんだかんだ思いながらも、感謝されると結構いい気分な僕だった。


 まあ、あれだ。


 明日からも、また頑張りますかね。




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