カカの天下219「大合格?」
「はいこれ」
「ふむ、どれどれ」
もーどうにでもなれと開き直ってるカカです。
現在、今日もらったひどいテストをトメ兄に見せているところです。今のところトメ兄の表情には特に変化はありません。
あ、ちょっと驚きの表情になった。
「すごいなカカ。全部満点か」
「まぁね」
おお……せ、成功したのかな?
「どれ、テストの中身は……」
げ、まずい。
「……カカ」
「な、なに?」
「この国語テストの『話中の節句aの意味を答えなさい』の答え、『たのしろい』って書いてあるんだが、なにこれ」
「楽しいとおもしろいを合体させてみた」
「なるほど」
あれ、納得した。
ばれてない?
「じゃさ、この『話中の節句eの意味を答えなさい』の答え、『ちゃけば』ってのは?」
「ぶっちゃけた話、をぶっちゃけばなし、にして、さらに略してみた」
「なるほど」
あれれ、納得した?
ホントにばれてないのかな?
「んじゃこの『背に腹は変えられないという言葉の意味を答えなさい』の答え、なんで『お腹がすいてる』なんだ?」
「背中とお腹がくっつきそうなんでしょ?」
「なるほど! はっはっは、その発想はなかったなぁ」
あれれれ? 笑った、納得してる!?
も、もしかしてホントのホントに大丈夫なのかな。やった!
トメ兄がボンクラでよかった!
「じゃあこの算数テストの」
「うんうん! や、この『からだの面積=体重』っていうのは結構うまいこと言ったと思うんだよね! 『からだの』っていうのは私が書き込んだんだけど――」
「あれ? これよく見たら算数のテストじゃなくてお笑いテストって書いてあるなぁ」
……ぇ。
「あれあれ? これよく見たら100点って数字が歪だなぁ」
……ぎく。
「あれあれあれ? なんか正解だっていう○も歪だなぁ。なんかペケをむりやり○にしたみたいな感じだなぁ」
……ぎくぎく。
「あれあれあれ? こんな細工をしといて我が妹君は何を嬉しそうに語ろうとしているのかなぁ?」
……ぎくぎくぎく。
「カカ」
「はいっ」
「このテスト内容を、反省……してないみたいだな」
してやられた!
「罰として腕立て百回」
「ここどこの軍隊!?」
「それとテストの見直しな。夕飯食べた後にでも教えてやるから。厳しくな」
「うぅ、せめて優しくして」
「ちゃんと反省してるようなら優しくしてもいいと思ったんだけどな」
「うまく騙せたかと思ったのに」
「こんな答案を見て騙されるやつがいるわけなかろうが」
「だよねー」
「わかってんじゃん」
「でもそのラクガキみたいな『100点』見ても顔色一つ変えなかったからさ、もしかしたらいけるかと思って」
「そこらへんはテンからメールあって知ってたし」
「ぬぁに!?」
あのセンコーのせいか!
「んとな、『オレがラクガキしたのもあるけどひどい答案だから、なんかこらしめてやってくれ』とかなんとか。たしかにお笑いテストだったら100点かもしれんがな」
「そ、そうそう。このラクガキは全部テンカ先生が」
「テンは自分がラクガキした内容もちゃんとメールに書いてたよ。カカがなんか書き足すかもしれないからって」
してやられたパート2!
「さ、夕飯のあとは覚悟しろよ」
「ひーん」
その夜のトメ兄は本当に激しかった。
「誤解を招くようなこと言うな」
怒られた。
一応前回の続きです。
テストといえば家族に見せるというイベントがセットでついてきますからね。
テスト自体よりもこっちのほうが重要なイベントだった人も多いはず。
親が喜ぶか怒るか。
カカの場合は兄ですが、やはり保護者として多少は成績を気にしてるらしいです。
教えてくれるあたりがいいお兄ちゃんですけどね。