カカの天下218「大合格!」
「先生、これ、どういうことですか!」
「あん? なんだよカカ」
どうも、激怒中のカカです。
いまは四時間目が終わって給食時間に突入したところ。本来なら私もクラスメイトと一緒に準備するところですが……ちょっと納得いかないことがあって、テンカ先生に抗議です!
「このテストです」
「おー、さっき返したやつな」
「この点数!」
「おー、全部のテスト0点だってさ。はっはー、バーカバーカ」
ムカッ!
「なんで私が0点なのさ!」
「そりゃ全部間違えたからだろ」
「でも全部おもしろいでしょ!」
「それは認めるが、そんなんで点数やれるか」
むむむ……でも合格とか言うんなら点数くれたっていいじゃないか。
「あのなぁ、カカ」
テンカ先生は嫌味な感じにため息をついて、偉そうに喋りだした。
「おい、誰が偉そうだって?」
「先生」
「当然だ」
なんだこの人。胸中にまでツッコんできて、トメ兄じゃあるまいし。
「あのなぁカカ。おまえ自分がどんな答え方したかわかってるのか? 算数のテストで計算式を『男×女=子供』って書いたりさ。『×』とか生々しいんだよ」
だってそのその通りでしょ。
「国語のテストの『この文章の何が間違っているか答えなさい』って問題の答えを『書いたやつ』って答えたり」
だって間違った文を書いたやつが悪いんじゃん。私間違ってないよ?
「最後の小話の感想文なんか『先生にはもっと面白い話を選んで欲しいと思った』って、オ
レにケンカ売ってんのか」
だってそれ読んでそう思ったんだもん。感想ってそういうことでしょ?
「こんなんで点数やってたらオレが教頭に怒られるだろ」
「……だって、全部合格だったら百点もらえるかと思ったんだもん」
「なんでそう思うかな」
「テンカ先生ならノリでくれるかと」
「てめぇ」
「こんなテスト、トメ兄に見せられないよぅ」
「大丈夫、絶対ウケるから」
「テストって笑いとるもんだっけ?」
「はははーひどい点数だバーカヴァーカ」
「笑うな!!」
「笑えるもんよ」
こいつ本当にセンコーか!
「へぇへぇ、じゃこうしてやろう」
テンカ先生は私からテストを奪い、ちゃちゃっと何か書き込んだ。
『国語テスト』や『算数テスト』などが書いてあるところに……
『国語』の部分に斜線引いて、そこに書かれた言葉は『お笑い』の文字。
つまり全部『お笑いテスト』
「これでよし!」
「よくない!」
「笑えるじゃねぇか」
「笑えませんな」
「そうそう、笑えない……ん?」
あれ、なんか野太い声が後ろから……
テンカ先生と一緒に振り向くと、そこには――
「げ、デストロイヤー教頭!」
「誰が破壊神ですか、テンカ先生」
「そこまで言ってませんけど、破壊神のほうが似合ってますよ。顔的に」
「……テンカ先生、こっちにきなさい」
「ちっ」
「テンカ先生、舌打ちとは影でやるものですよ?」
「影でやったら悪意が伝わらないじゃないですか」
「上等です。こいや」
あぁ、顔の厳しさは日本一と名高い教頭にテンカ先生が連れてかれていく……にしてもテンカ先生って態度でかいなぁ。
ま、それはどうでもいいとして、どうしようこのテスト。怒りをぶつけるはずの先生は行っちゃったし……
「カカちゃん、テンカ先生は? 給食どうしよー」
「あ、サエちゃん。そだね、先生の分は」
キラーン。いいこと思いついた。キラーンっていうのは思いついた音ね。
「私があとでよそっておくよ」
「ん、わかったー」
とりあえず腹いせに給食のおかず全部混ぜてご飯の上にかけてやれ。
これで腹の虫はおさまった!
……何も解決してないけど。
トメ兄、怒るかなぁ。
0点……小学生のころ、一度とったことがあります。
テストの裏があることにきづかず、白紙で提出したのですが……悔しいと同時に嬉しくもありました。
滅多にとれるもんでもなかったですし、いい話のタネになりましたからね(笑)
カカみたいに全部面白い答えを書く、みたいな偉業も今思えばやってみてもよかったなぁ、なんて感じる今日この頃。