カカの天下214「カカVS姉娘、教育」
「では、ごゆっくりしていってくださいな」
「はい、ご丁寧にありがとうございます」
「いえいえ。息子の友人が家にくるなんて久々ですから……私も嬉しいのですよ。では」
友達少なさそうだもんな、シュー君。
突然すいません、トメです。
ただいまシュー君のお母様と喋っていたところです。とても丁寧な対応と物腰に驚きです。親が出来すぎると子供は甘えてしまってろくな大人にならないのかもしれません。言いすぎ?
さて、最近姉娘タマの居所がはっきりしたので早速遊びに来たのですが、シュー君は仕事中だったため、シュー君のお母様に対応してもらったというわけですが。
別部屋に置いてきたカカは、おとなしくタマちゃんと遊んでるかな?
僕がシュー君のお母様と世間話しているうちに部屋を破壊なんてしてないだろうな。
「――というわけ。わかった? タマ」
「ぁい、わぁったカカ!」
よし、何も壊れてないな。カカがタマちゃんに偉そうにしているだけだ。
「あとね、鼻に指をつっこんでやれば相手は怯むからやりやすいよ。最終奥義は相手のズボンをおろせば」
部屋は破壊してないけど常識とか何か大事なもんを破壊してる!?
「カカ、なに教えてる!?」
「ほぇ? どしたのトメ兄」
「何を教えていたんだと聞いている」
カカは僕がなんで怒っているのかわからないようだ。可愛く小首を傾げている。
「幼稚園行ってるって言うから、必要なことを教えてあげてたの」
「必要なこととはなんでござるか」
「ケンカの必勝法」
「それ必要なのでござるか!?」
しかしどんだけストリートファイト流行ってる幼稚園なんだよ。
「なに言ってるのトメ兄。子供だらけの場所でケンカが起きないわけないでしょ。それにござるってなに」
「そりゃそうかもしれないがな、そんな具体的なこと教えなくても……ござるは気にするな」
カカだってたまに変な言葉遣いなるだろうが。
「でもさ、小さいころからこうやってあたしは強くなった、って姉が言ってたよ」
どんだけ自分の弟子を増やしたら気が済むんだヤツは。
「さぁタマ。私が教えたことをもう一度言ってみなさい!」
「あぃ!」
勢いよく手を上げて答えるタマちゃん。
「ケンカの最初はどうするの?」
「てを食べる!」
……あぃ?
「みみを食べる!」
それどこのプロレスラー?
「めを食べる!」
食べすぎ!
「はなをじゅっこむ!」
じゅっこむってなに。なんかわからんけどエライ痛そうなんですが。
「ずぼんさげる!」
……ああ、今言ってたやつか。
「これでカンペキだね!」
「なぁカカ。ケンカって相手を食べたら勝ちなんだっけ」
「それでも勝ちじゃん」
や、確かにそうだけどさ!!
「食べるっていうのは、私がかじるって言ったのを聞き間違えたんだよ」
ああなるほど……ってそれでも結構きついぞ! 目がどうとか言ってなかったか!?
「カカ、おまえな、あまり物騒なのは」
「もう一回言ってみよー!」
聞いちゃいねえ。
「ケンカの最初はどうするの?」
「ぇえっと……」
タマちゃんは小さい子供だ。教えてもらった言葉でもそんな長いこと覚えていられないだろうな。
「ケンカの相手を?」
「たべる!!」
うぉメチャ簡潔になった!?
「違うよタマ。相手を食べるんじゃなくて、かじるの」
「ぇえっとぉ……ぁい、めをかじる!」
だからこえぇよ!!
「それでよし!!」
よくねぇよ!!!
「姉もこうやって育っていったんだね」
「ケンカ相手を食べて育ったんか」
姉ならなんか納得できるが……第二、第三の姉を作ってはいけない!
「いいか、タマちゃん。カカが言ったことは忘れろ。僕がもっといいケンカのやり方を教えてやる」
「む、相手を食べる以上にいいケンカのやり方あるの?」
「当たり前だ! 仲直りできないケンカはダメだろうが」
無邪気な子供は程度を知らない、周りの大人がしっかりしないと!
「いいか、タマちゃん。ケンカになったら、まずは謝るんだ」
「はやまるのー?」
「早まって食べちゃうんだね」
「……カカ、どっか行ってなさい」
……この子の将来が心配だよ、やれやれ。
こうして姉は増え続けていく……
もうホラーですね。