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カカの天下  作者: ルシカ
212/917

カカの天下212「惜しい!」

「ただい――」


「ただいま!!」


 ……あれ、僕が買い物から帰ってきたのに、出迎えてくれたカカが「ただいま」なんて言ってきたよ?


 というわけで困惑中のトメです。


「あのさカカ。なんで」


「トメ兄、惜しい!! もう少しでただいまって言えたのに!」


 ……は?


「なんじゃそれ」


「いま私たちの間で流行ってるんですよー」


「なにか失敗すると、大きい声で『惜しい!』って指摘するんです」


 後ろからひょっこりと顔を出して説明してくれるサエちゃんとサユカちゃん。


 ていうかそれ……楽しいのか?




 さて、僕が居間に落ち着いてからも、三人は何かにつけてその『惜しいごっこ』を続けた。


「私トイレいってくるねー」


「惜しい! サエすけそこお風呂!」


「もうちょっとで一緒に入ってにゃんにゃんしちゃうとこだったよ?」


 にゃんにゃんってなんすかカカさん。


「せんべい食べよっと」


「カカちゃん惜しいー、そこ口じゃなくて鼻」


「ふが」


 女の子が「ふが」とか言わない!


「わっとっ、転びかけた」


「サユカちゃんのスカートがふわりとー、もう少しで中がー」


「トメ兄、惜しい!」


 なんで僕に言う。


 まぁ、そんな感じで本人たちは楽しそうにしている。僕にはいまいち楽しさがわからないが。


「夕食つくろ……」


「サユカンあぶなーい」


 ってなんでおまえらサユカちゃんを僕に向かって突き飛ばす!?


 立ち上がりかけ、という微妙な体勢だった僕はバランスを崩しながらも、なんとかサユカちゃんを受け止めた。


「サユカン惜しい!」


「もう少しでキスできたのにー」


「お、おまえらなぁ……」


 そんな危ないことすんなよな、もう……サユカちゃんだって恥ずかしさで顔を真っ赤にしてるじゃないか。


 サユカちゃんを落ち着かせ、改めて僕は夕食をつくりに台所へ向かう。


「トメ兄、今日の夕飯なに?」


「キスの天ぷら」


「「「惜しい!!!」」」


 だから何がだ。


 サユカちゃんまで一緒になって。


 まったく……こいつらは何がしたいんだかさっぱりわからん。


 呆れながら調理の準備をしていると……三人が台所へ入ってきた。


「どした? 整列なんかして」


「トメゾー」


「トメ吉」


「と、トメえもん!!」


 あぁ、なるほど。


 こいつらが何をしたいのか、今ならわかる。はいはい、やればいいんでしょ。


「……惜しい!! 僕はトメだ!」


 僕にもやってほしかったのね。


 三人とも満足そうな笑顔みせちゃってまー。


 さて、三人を追い払ったところで調理の準備を。


 あれ、買ってきたキス。多く見積もっても三人分くらいしかない……


 もう一人前あればサエちゃんとサユカちゃんにもご馳走できたのになぁ。


「惜しい!」


 ……結構クセになるなこれ。


 この遊びの発案者はカナブンさんという人です。

 カナブンさんが誰かって?

 それは秘密です^^

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