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カカの天下  作者: ルシカ
211/917

カカの天下211「続、返信カレー」

「お、カカすけっ。なにしてんの」


「メール」


 携帯をカチカチ、とカカです。


 ただいま学校の休憩時間。たった15分しかないのによくうちのクラスくるなぁサユカン。


「おっ、誰? 誰とメールしてんの?」


「メル友だよ」


「へぇ、そんなのいるんだ。なんていう人?」


「カレーの人」


「なにその曖昧な表現。隠すな隠すな、もしかして男だったりするわけー?」


「や、本当にそう登録してるんだって。ほら」


 私はサユカンにアドレス帳のページを表示した携帯を突きつけてやった。


「えっと……『カレー人』ってあるんだけど」


 あれ、『の』が抜けてたっけ。


 『星』をいれて『カレー星人』っていうのもいいなぁ。


「なんでこんな名前で登録してるのよ」


「だってメールでカレーのことばっか話すんだもん」


「だからってそんな……本当の名前は?」


「知らない。印度華麗とかそんな感じじゃない?」


 いんどかれい。うん、この人にピッタリすぎる名前だ。


「知らないって、どうやって知り合ったのさっ」


「それは一通の間違いメールから始まった……」


「そんなドラマあったような気がするわね」


 本当は間違いというよりはいたずらメールだけどね。


「カレーのことばっかって、どんなメールよ」


「例えば……私が『やっぱりケンカのトドメは正拳突きだよね』って送ったら」


「どういう話の流れでそんなメール送るのかも気になるけど、それで?」


「カレーの人は『私もそう思います。相手が吹っ飛んでケンカが終わると気持ちいいんですよね……ところでげんこつカレーというカレー屋さんがありまして、そこのカレーがげんこつくらうみたいに辛いんですよ――』って感じで続いてくの」


 正拳突きの握り拳も確かにげんこつだけど……そこからカレーにもっていくのは我がメル友ながらなかなかやると言わざるをえない。


「へぇ、偶然ね。げんこつカレー、わたしたまにそこいくのよ。全国チェーンで結構広まってるっぽいわよ」


「じゃあサユカンも心の友だね。って、そういえば昨日はサユカンもうちでカレー食べたんだっけ。いまさらだ」


「心の友? なにそれ」


 えーっと、携帯操作をぴっぽっぱ。


「これ読んでみて。昨日の夕飯に私がカレー食べたときに送ったメール」


「どれ」


 とりあえず報告しとこうと思ってメールしたんだよねー。


『今日の夕飯ね、カレーだったんだよ』


 そしたらものすごい速さで返信がきたんだよねー。

 

『心の友よ!!!!!!』


「どうよ、メル友の私がカレー食べたってだけでこの喜びよう。『!』マークが六つだよ?」


「……その人の心の友は昨日の晩で何人いたのかしらね」


「とりあえずインドあたりにたくさんいたんじゃないかな」


 友達が多くて羨ましい限りだ。


「多分この人は『心』と書いて『カレー』と読んでるね」


「その心は?」


「無かったら抜け殻もおんなじ」


「……重いわね、カレーって」


「カレーの人にとってはね」


 胃袋的には誰にでもそこそこ重いけど。 


 でもカレーなくなったらこの人は本当に死にそう。


「で、カレーの友カカすけはこの人に会ったりしないの?」


「や、会ったら絶対お腹がパンクするまでカレーを食べさせられそうな気がするから遠慮する」


「でも向こうから会いたいって言ってきたら?」


 ありうる、けど……


「大丈夫。元々適当に送ったメールから始まったメル友だよ? どうせすごい遠くに住んでる人に決まってるよ。たまたま近所に住んでるなんて、そんな偶然――」


 と、そのとき。


「か、れ、い、か、れ、い、かーれっい」


 …………ぅ? 背後から、なにか……


「ねぇ、カカすけ。なんか後ろからすごいカレーっぽい歌が聞こえない?」


「ぃ、いや、べつに」


「今日も今日とてか、れ、いー。きょーうは何カレーにしよっかなー」


 あるわけ……ないよね?


「ねぇ、カカすけ。なんかこの上もなく近所から歌が」


「わ、私には聞こえないよ?」


「牛さんいれる? 豚さんいれる? 鶏さんいれる? それとも魚? 野菜? 果物? それともたまにはにんげ――こほん」


 ちょっと待て今何を言おうと――いやいや空耳だ。気のせいだ!


「……あ、カレーメールきてる」


 カレーメールとか言うな!


「……なんて返事かな、カレーの友」


 本当にカレーの友とか言ってるし!!

 

「確定ねっ、カカすけ」


 なんでこんな身近に現れるのっ?


 そしてなぜそんなにわかりやすい独り言が多いのっ!?


「……幸い同じクラスだけどあの子と交流はまったくない……このままバレないようにやり過ごそう」


「できるかねー?」


「できる、といいな」


 できなければカレーの友決定だ。


 カレーは好きだけどさ、毎日は勘弁してほしい!


 こんな近所なら絶対付き合わされる!


 あ、返信きた。


『ところで心の友よ。あなたはどこに住んでる人?』


 ……えっと。


「なんて返信するの?」


 適当に誤魔化すしかないね。


「私の住んでいるとこは……シベリアです!」


「日本語でそんなこと言っちゃダメでしょがっ」


 サユカンの即ツッコミが炸裂。やっぱダメかぁ。

 

 そもそもシベリアにカレーあるかも知らないしなぁ。


 ……適当に誤魔化すしかないね。


「私は応募県に住んでいます」


「県をつくるなっ」


 ダメかぁ。

 

 どうしよっかなぁ……いいや適当で。


 かなーり前に出番があったカレーの人の話です。あれからカカはちょくちょくメールしてたみたいです。

 え? 本当の名前ですか?


 カレーの人です。

 他に説明はいりません。

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