カカの天下210「和風、洋風、○○風」
「トメお兄さんって料理うまいですよね」
「ん、そか?」
「そうですよっ、たまにご馳走してくれる夕食とかほんとおいしいですっ」
「そりゃご馳走するときは見栄はってるもん」
やかましいそこの妹。正直なこと言うな。
どうもトメです。今日もそろそろ夕食時。うちにたむろしてる妹どもと別れて、そろそろ買い物に行こうかなと思っていたところです。
「サエちゃんとサユカちゃんも食べてく? それなら材料多めに買ってくるけど」
「わ、いいんですかー」
「サエすけ、それ目当てでこの話題振ったでしょ」
「むー、別にそういうわけじゃ」
「サエちゃん腹黒だね」
きゃいきゃい騒ぐカカサエサユカは、腹ペコ状態の僕と違ってほんと元気いっぱいだ。
「ところでさ、サエちゃんとサユカちゃんってどういったものが好みなんだ?」
「サユカンの好みはトメ――ぐほぁ!?」
「な、なんでもないですよっ」
すげぇ……あの姉拳法の使い手カカに、不意討ちとはいえ鳩尾に肘を決めるとは……
「そ、そういえばサユカちゃん和菓子好きだし、もしかして和風な料理好き?」
「あ、はい! お料理も和風なのが好きです!」
「ふむふむ、サエちゃんは?」
「私はですねー、お菓子もお料理も洋風なのが好きですね」
なるほど。
「わ、私も洋風好き!」
さすが我が妹、復活が早いな。
「だからサエちゃん、お揃いだね!」
「まて。カカは和風好きだろ」
何年おまえの飯を作ってきたと思ってるんだ。
「む! 違うの洋風なのお揃いなの!」
「お揃いになるために嘘なんかつくな! それじゃ今のカカこそが腹黒だぞ」
おぉなんかサエちゃんものすんごく嬉しそうだ! カカと腹黒でお揃いだからか?
「嘘じゃないもん! そもそも私は基本的になんでも好きだもん! 和風でも洋風でもなんでもこいなんだもん!」
「ほほぅ、なんでも、と言ったな? じゃあネズミとかゴキブリを使った中国料理も大好きなんだな!」
中国料理って本当になんでも食べるからな。
「身近なゲテモノを出しましたねー」
「さぁカカすけ、答えはっ?」
「ちゃ、ちゃんと調理してるなら大丈夫だもん!」
「へぇ? じゃ今度調達してきたらちゃんと食べるんだな?」
「いいよ、食べてやるよ! ゲテモノがなんぼのもんよ!」
ちぃ、手強いな……ならこれならどうだ!
「じゃあ姉の丸焼きとかでも食べるんだな!?」
「すいません無理です」
降伏はやっ!
「身近すぎるゲテモノはアウトかー」
「カカすけ、残念っ」
ゲ、ゲテモノって……ちょっとサエちゃん。仮にもうちの身内にそんな言い方――
「あたしのこと呼んだかい!?」
「出たなゲテモノ!!」
「ひどっ!!」
あ、僕が言っちゃった。
ま、いいや姉だし。
「ところで……何の話してたんだっけ?」
一番エキサイトして喋ってたくせに小首を傾げるカカ。
でも……あれ? 僕も途中から勢いに任せて喋ってたから話の趣旨忘れちゃった。
「みんなでおいしくトメお兄さんのご飯を食べようって話ですよー」
「あ、そうだっけ。じゃ結局……なに作ればいいんだ」
「ちなみにあたしが好きな食べ物は――」
「聞いてないし興味もない。よし、じゃあ中をとって皆大好きカレーライスでどうだ!」
「「「さんせーい」」」と三人。「ブーブー」と豚が一人。
さて、献立も決まったし買い物に行くかな。
五人分ともなると結構な量になるし、さっさと作らないとな。
――そして今夜は、とても騒がしい食卓となりましたとさ。
果たして○○にはいったい何の文字が入るのでしょうか……謎です。そうでもないか(笑)




