カカの天下209「サユカの任務、茶飲み友達編」
み、みみみなさんこんにちは! サユカですっ!
な、なぜいきなりどもっているかというと……
「すいません、三色おはぎセット一つ」
「わ、わたしは栗ようかんセットでっ!」
「かしこまりました、少々おまちくださいませ」
そ、そうなのです!
なななんと! トメさんと二人きりでお茶しにきてるのです!
「セットでついてくるここの緑茶がおいしくてさー」
「そ、そうなんですかそそれは楽しみですねっ!」
夏休みの初めあたりに「一緒に緑茶をすすりにいこう」という約束を覚えてくれていたトメさん……やっぱりステキな人!
「でもごめんね、こっちからお茶に誘ったくせに今まで忘れてて」
忘れてたんですか!?
それをわざわざ思い出してくれるなんて……なんて素晴らしい人なの!
「ポジティブすぎ」
どこからか声が聞こえてきたけどきっと空耳だわ!
とにかくこの状況にわたしは緊張しっぱなし!
なぜ!? 色々あってトメさんと仲良くなれたと思うのに、なぜいつまで経っても成長しないのわたしの心臓はっ。そんなに暴れなくてもいいでしょうに!
「カカもどっちかというと和風びいきなんだけどさ、緑茶だけがどうしても好きになれないらしいんだよ。だから茶飲み友達ってのがほしかったんだ」
「光栄であります!」
「和菓子にはやっぱ緑茶だよな」
「その通りであります!」
「や、サユカちゃん。そんな敬礼してまで答えなくても」
ううぅ……だって頭ぐるぐるなんだもん。
「お待たせしました」
そうやって頭をぐるぐるさせているうちに、注文したセットが登場。
「さて、じゃいただこうか」
「は、はいっ」
いただきます、と合唱して、落ち着いた色合いの湯のみを手に取った。
そして二人してお茶をすする。
「ふぅ……お茶がおいしいなぁ」
隊長! 緊張のせいで味がわかりません!
「こういう和風な店でお茶を飲むと……ほんと落ち着くね」
隊長! テンパって落ち着けません!
「さて……お菓子も食べようか」
「隊長! 食べてもきっと味が――」
「隊長とは誰ぞや?」
「あぁしまった口に出しちゃった!?」
恥ずかしい恥ずかしい……
「なんだ、心の中に隊長さんとやらがいるのか?」
「え、ええそうです、その、こう白ヒゲを生やして赤い服きて、えーっとでっかい荷物持ってるみたいな隊長が」
「サンタさん?」
「そ、そうですサンタ隊長です!」
何言ってんだわたしは!?
「そうかぁ、それじゃクリスマスには活躍してもらわないとね」
……あれ。
トメさん、すごい普通の笑顔だ。
「あの、自分で言うのもなんですけど……よくこんな変なこと話してるのに普通に返せますね」
「んー、いや」
トメさんは恥ずかしそうに笑った。
「変な話はカカで慣れてるから」
なるほど。これほど納得できる理由もないわね……
「それとサユカちゃんの暴走にも慣れてきたし」
「なにか言いました?」
「いや、なにも」
視線をそらしながらお茶をすするトメさんが何を言ったのか、わたしには聞こえなかった。
でも、うん。なんだか心が軽くなった気分だ。
変な話だけど、緊張しててもトメさんは受け入れてくれるってわかったら、緊張が解けたみたい。
これできっと栗ようかんを食べても味が――
「お、トメとサユカじゃん」
「あれ、テン」
味がしなくなったじゃないのっ!!!
「て、テンカ先生……」
こんなときこそ、昨日の電話で聞いたあの言葉を思いだすんだ!
「というわけで……サカイさん! 何か秘策はないですか!?」
「そうねー。サユカちゃんくらいだと一番の武器は視線かなー。想いを込めて見つめて、目で落とすの」
「なるほど……目ですか」
「さ、約束よー。相談聞いた代わりに……最近のあの子のことを話して!」
「あー、はいはいっ」
回想終わり!
というわけでっ、武器は想いをこめた視線!!
「おぉ、なんだサユカ、デートか? わたしも混ぜ――」
帰れ帰れかえれかえれカエレカエレカエレカエレカエレカエレカエレ!!!
「――っとと、な、なんか、用事思い出したから、帰るわ」
よし、目で勝った!!
あれ、目で落とすだったっけ? まぁいいやっ。
「なんだったんだ、テンのやつ。慌てて」
「用事があったんですよっ。それよりもほら、おはぎが冷めないうちに食べましょう」
「……や、おはぎは冷めても別に」
あぁ、栗ようかんが甘い。
でもこの時間はもっと甘い!
……にへへ。
にへへ……
甘っ(笑