カカの天下208「FC相手に、がんばれタケダ」
「まいったな……」
タケダだぜ!
まいってるぜ!
何にまいってるかと言うと……最近カカ君に近づこうとするたびに四方八方から視線を感じて常に四面楚歌な気分なのだ。
おそらくは先日、俺に宣戦布告したカカちゃんファンクラブなる者どもの視線なのだろうが……いくら俺が頭がいいとはいえ、所詮は小学生。一人で多数の男子を敵に回して無事に済むはずがない。カカ君じゃあるまいし。
しかし……せっかく名前を覚えてもらえたというのに声がかけられないのはもどかしい! カカ君のことだ、もうそろそろ会話しないと俺の顔も名前も忘れてしまうだろう。
「あぁ、それだけはダメだ!」
「あれ、タケダ君だー」
む、その声は!?
「サエ君ではないか!」
「なに一人でもだえてるのー? 最近流行りの精神いじょー者?」
「流行ってなどいない!」
流行ってたまるか! がんばれ社会! がんばれ日本!
「とにかく助かった! ちょっと話を聞いてくれ」
「わー、拉致監禁される」
「監禁などしない!」
「じゃー軟禁?」
「キンキン言うな! とにかく屋上へ」
「はいはい、そう熱くならないでー」
カカ君に近づけなかったせいでサエ君と話すのも久々になるが……相変わらずマイペースな子だ……
さて、場所は屋上にチェンジ!
「もしかして告白されるのー? 絶対やだー」
「告白などしないがそんな言い方は傷つく」
この際そんなことはどうでもいい!
「実は今、俺は狙われてるのだ!」
「帰っていいかなー?」
「そんな微塵も興味なさそうに言わないでくれ! おかげでカカ君に近づけなくて困っているのだ」
「カカちゃんに?」
おお、カカ君の名前を聞いて目の色が変わった!
「そうだ。カカちゃんファンクラブというものがあってな、そいつらに睨まれているおかげで俺は……」
俺が詳しく説明しようとしたとき、サエ君は唐突に指をパチンと鳴らした。
「――サエさま、なにか」
うぁどこからともなく黒い男が現れた!?
「カカちゃんに付きまとってる人たちがいるみたいだからー、それを調べて適当にお灸を据えといてー」
「御意」
うぁ消えた!?
「さ、サエ君。今のは……」
「私のファンクラブの会長さんだよー。多分明日にはそのファンクラブを解散に追い込んでくれると思うよー」
「さ、サエ君……なんというか、いくらなんでも」
「……はぁ、言いたいことはわかるよ」
あれ、もしかしてなんかすごい落ち込んでる!?
「皆が黒い黒いって言うからさー、いっそのこと本当に腹黒っぽいことしまくってやろーかと思ってさー、はぁ」
い、いじけてる……こんなサエ君初めて見た!
「調子にのってこんな風に悪役のボスみたいな感じで振舞ったらさー、ファンクラブの人たちもノッちゃってさー、でもさー、私も別に好きで黒いキャラとかやってるわけじゃ」
「わ、わかった! 話聞くから、な? 今夜は飲もう!」
「オレンジジュースねー、はぁ……」
「ああ、何杯でも奢ってやるともさ!」
肩を落としまくるサエ君を励ましながら、僕は『この学校、ファンクラブいくつあるんだろう』などと疑問に思っていた。
次の日から。
本当に四方八方からの視線がなくなっていた。
「なにをしたのだ、サエ君……いや、サエ君ファンクラブか」
おそるべし貴咲小学校。
はいカカちゃんファンクラブ壊滅〜でもサエちゃんファンクラブは残ってます。
そのせいもあってサエちゃんいじけてますが(笑)