カカの天下207「トメのいいとこ、後編」
前回の続きからのカカです。
私はトメ兄をどう思ってるんだろう、と突然思い立った私。理由は特にありません。
とにもかくにも……トメ兄を観察してみて、それを調べてみようと思います。
「じーっ」
お仕事から家に帰ってきたトメ兄は、居間でぐったり中。
帰ってきたらいつも10分くらい転がって停止してるんだよね。充電してるって言ってたけど意味はよくわかんない。
とりあえずそれを壁際から顔を出して遠目から見守ってる私。普通に居間にいてもいいんだけど、それじゃ気分がのらないもんね。
お、寝返りうった。あれやっぱ寝てるのか。
いつも10分くらいしたら動き出すから、てっきり起きてるのかと思ってたんだけど……目覚まし無しに10分だけ寝れるのかな。結構便利な能力だね。
お、頭がちょうどテーブルの下に。
起きた。
「だっ!?」
あ、頭にぶつけてる……ぷくく。
「ったぁ……か、カカ見てないだろうな」
きょろきょろ辺りを見回したので頭を即ひっこめた。
「ほっ……よかった見られてない」
見られてますごめんねトメ兄おもしろかったあっはっは。
再び覗いてみると、涙目で頭をさすってるトメ兄が見えた。意外と可愛い。
「さて……」
お、買い物行くのかな。
「カカー! 買い物行くからなー」
はーい、こっそりついてきまーす。
「……返事ないな。寝てるのか」
平日のこんな時間に寝たりしませんよ。トメ兄みたいに器用に起きれませんので。
さて、いつものスーパーへとやってきました。
後ろからこっそりつけていますが、全然ばれてません。私って尾行の才能あるのかも。
ただいまターゲットメ兄(誤植じゃないよ)は、卵売り場にいます。
売り場の上にある看板には『当店で千円分お買い上げの方には、一パック38円でご提供します』という文字が。
卵を安く買えるってだけで……幸せそうな顔しちゃってまー。タマゴに頬擦りしちゃってるよ。
お、次は野菜コーナー。
タマネギをいくつか持って比べたりしてる……なんか一緒に買い物来たときとは違ったおもしろさがあるなぁ、トメ兄の動きとか。片目つむってタマネギの何を覗き込んでるんだか。
お、いいタマネギ見つかったのかな、これまたうれしそー。
前に「トメ兄の趣味って私?」みたいなこと言った覚えあるけど……趣味、買い物かもしれない。なんかすごい満足そうだもん。
うーん、それにしても。
トメ兄のいいところを探そうと思ってストーキングしてるけど、あんま見つからないなぁ。
最初に見たのは頭ぶつけて痛がってるとこ……ちょっとおもしろかったけど。
で、次は卵の安売りで幸せそうなとこ……ちょっと可愛かったけど。
あとは、たまねぎ選んでるとこ……ちょっと動きが楽しかったけど。
別に全然いいところなんて……お?
甘味コーナーに入った。
あれ、昨日私が勝手に食べたおはぎ買ってる。
……二つ。
あれれ? 昨日のトメ兄、なんて言ってたっけ。
『新発売のおはぎ……楽しみにしてたのに勝手に食べたな!?』
『おいしかったよ』
『やかましい! 今度買って来ても絶っっ対! カカには食べさせないからな!』
『すっごく、すっごーくおいしかった』
『おまえもう黙れ!』
あんなこと言ってたのに……私の分も買ってくれたんだ。
そういえばトメ兄って……いつもなんだかんだ言いながらも、私が喜ぶことしてくれるんだよね……
見つけた。トメ兄のいいところ。
『私に甘い』だね。
や、いい兄を持ったもんだ。
やー、ほんとほんと。
……嬉しいじゃないか、このぉ。
「――トメ兄、なに買ってるの?」
「うわぉあ!? カカ!?」
目的を達成した私は尾行をやめて、トメ兄の前に姿を現した。
「あ、私が昨日食べたおはぎ! 二つある」
「む」
「私の分も買ってくれたんだ。うれしー」
ふざけてトメ兄に抱きつこうかと思った瞬間、トメ兄は言った。
「や、昨日おまえに食われたから二人分食べようと思っただけだぞ」
……ナンデスト。
まぁ、そんなことを言いつつ――家に帰った後、結局私に一つくれたんだけどね。
え? 私がトメ兄をどう思ってるか結論は、って?
んー。
内緒。
いいやつですね、ターゲットメ兄。
でもぶっちゃけた話『昨日の怒りは忘れる体質』でもないとあの姉妹と毎日はやっていけないんだろうなぁと思う今日このごろ。
トメの魅力、伝わりましたかね?
……どうなんでしょうかね^^;