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カカの天下  作者: ルシカ
206/917

カカの天下206「トメのいいとこ、前編」

「ねぇ、トメ兄のことどう思う?」


「な、なによ急にっ」


「どうかしたのー?」


 急に聞いてしまったカカです。


 今は学校の帰り道。いつも通りサエちゃんサユカンと三人で歩いていたとき、ふと思ったのです。


「や、私らってしょっちゅうトメ兄と遊んでるけど……あの男のいったいどこがいいのかな、と」


「カカちゃん、お兄さんにあの男はないでしょー」


「そうよっ、お世話になってる人に失礼よ」


 わ、結構本気で怒ってる。


 やっぱ好かれてるよね、トメ兄。


「でもさ……トメ兄ってそんなに特徴ないじゃん?」


 サエちゃんとサユカンは二人して目を合わせて頷き、私のほうに向き直った。


「「ツッコミでしょ」」


「それ特徴?」 


 特徴って言えば特徴だけど……そんな二人で声ハモらせてまで言うほどのことかな。


「サエちゃんはトメ兄のこと、どんな人だと思ってる?」


「んー、なんか本当のお兄さんみたいな感じー」


 む、トメ兄は私の――っとと、なに言おうとしてるんだ私は。


「サユカンは?」


「ら、らぶ?」


「はいはいよくわかりました」


 この上もなくわかりやすい答えをありがとう。


 むむむ……でも結局トメ兄のどこがいいのか、よくわかんないな。


 眉間にシワを寄せている私を見かねたのか、サエちゃんが口を開いた。


「そうだねー、私がなんでトメお兄さんを本当のお兄さんみたいだなーと思うかというとね、カカちゃんだけじゃなくて、私たちにも妹みたいに優しく接してくれるからだと思うよー」


 優しい……? トメ兄が?


「僕が楽しみにしてたおはぎを勝手に食べたな! なんて激怒するトメ兄が、優しい?」


「トメさん……そんなことで怒るなんて可愛いっ」


 はいはい、トメ兄ならなんでもいいんだよねサユカンは。


「あははー」


 あれ、サエちゃんいつものニコニコ顔なのになんか笑ってないっぽいよ?


「それはねー」


 あれ、なんかサエちゃん顔が近いよ? 声が低いよ? 


「私でも怒る」


「申し訳ございません」


 ……こあい。


 サエちゃん食べ物に関してはうるさいんだった……


 あれ、そういえば。


「サエちゃんって食べ物にこだわるけど、ずっと前にやったスイカ割り大会とかはいいの?」


 食べものを粗末にしてる感じがするけど。


「あれはああいう遊びでしょー。だからいいの。人のを盗るのはダメー」


 今後気をつけよう。


「んー、話は戻るけど、結局トメ兄のいいとこってなに?」


「優しいとこかなー」


「全部っ」


「サユカン黙って。参考にならないから」


 なんかサユカン寂しそうな目になったけど、本当のことだから仕方ない。


「カカちゃんはどう思ってるのー? トメお兄さんのこと」


「私? うーん……」


 どうなんだろ。


「改めて聞かれるとよくわかんないんだよねぇ……だから二人に聞いてるんだけど」


「じゃ、あれしてみればー? えっと、ストッキング」


 ……あい?


「ストッキングを、どうするの?」


「かぶるんじゃ――」


「間違えた、ストーキングだったー、ってサユカちゃん今なんて言った?」


 思いっきり目をそらすサユカン。


「「かぶる?」」


「い、いやぁ、そのっ、こないだテレビでそんなの、やってて……」


 恥ずかしそう……かわいい。


「で、話は戻るけど。ストーキングのこと?」


「そうそう、トメお兄さんの後をつけて、いいところを見つけるのー」


 ふむ……それは面白そうだ。


「よし、家に帰ったら早速やってみよう!」


 意気込んだ瞬間。がしっ、と肩を掴まれた。


 振り返ればサユカンが。


「報告よろしく」


「報告したらストッキングかぶってくれる?」


「その話は忘れてっ!」


「じゃあもっと可愛くお願いして」


「よ、よろしく♪」


「ひねりがないなぁ」


「ひ、ひねりってっ……んと、んと……よろしくにゃん♪」


「任務了解!!」


 鼻血出るかと思った。

 

 先日リクエストのあった「トメの魅力を全開で」と言う要望に応えるため、この話を書いてみました。まだ前半です。次が勝負です。果たしてトメは格好いいところを見せることができるのか!? 


 続きます。

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