カカの天下206「トメのいいとこ、前編」
「ねぇ、トメ兄のことどう思う?」
「な、なによ急にっ」
「どうかしたのー?」
急に聞いてしまったカカです。
今は学校の帰り道。いつも通りサエちゃんサユカンと三人で歩いていたとき、ふと思ったのです。
「や、私らってしょっちゅうトメ兄と遊んでるけど……あの男のいったいどこがいいのかな、と」
「カカちゃん、お兄さんにあの男はないでしょー」
「そうよっ、お世話になってる人に失礼よ」
わ、結構本気で怒ってる。
やっぱ好かれてるよね、トメ兄。
「でもさ……トメ兄ってそんなに特徴ないじゃん?」
サエちゃんとサユカンは二人して目を合わせて頷き、私のほうに向き直った。
「「ツッコミでしょ」」
「それ特徴?」
特徴って言えば特徴だけど……そんな二人で声ハモらせてまで言うほどのことかな。
「サエちゃんはトメ兄のこと、どんな人だと思ってる?」
「んー、なんか本当のお兄さんみたいな感じー」
む、トメ兄は私の――っとと、なに言おうとしてるんだ私は。
「サユカンは?」
「ら、らぶ?」
「はいはいよくわかりました」
この上もなくわかりやすい答えをありがとう。
むむむ……でも結局トメ兄のどこがいいのか、よくわかんないな。
眉間にシワを寄せている私を見かねたのか、サエちゃんが口を開いた。
「そうだねー、私がなんでトメお兄さんを本当のお兄さんみたいだなーと思うかというとね、カカちゃんだけじゃなくて、私たちにも妹みたいに優しく接してくれるからだと思うよー」
優しい……? トメ兄が?
「僕が楽しみにしてたおはぎを勝手に食べたな! なんて激怒するトメ兄が、優しい?」
「トメさん……そんなことで怒るなんて可愛いっ」
はいはい、トメ兄ならなんでもいいんだよねサユカンは。
「あははー」
あれ、サエちゃんいつものニコニコ顔なのになんか笑ってないっぽいよ?
「それはねー」
あれ、なんかサエちゃん顔が近いよ? 声が低いよ?
「私でも怒る」
「申し訳ございません」
……こあい。
サエちゃん食べ物に関してはうるさいんだった……
あれ、そういえば。
「サエちゃんって食べ物にこだわるけど、ずっと前にやったスイカ割り大会とかはいいの?」
食べものを粗末にしてる感じがするけど。
「あれはああいう遊びでしょー。だからいいの。人のを盗るのはダメー」
今後気をつけよう。
「んー、話は戻るけど、結局トメ兄のいいとこってなに?」
「優しいとこかなー」
「全部っ」
「サユカン黙って。参考にならないから」
なんかサユカン寂しそうな目になったけど、本当のことだから仕方ない。
「カカちゃんはどう思ってるのー? トメお兄さんのこと」
「私? うーん……」
どうなんだろ。
「改めて聞かれるとよくわかんないんだよねぇ……だから二人に聞いてるんだけど」
「じゃ、あれしてみればー? えっと、ストッキング」
……あい?
「ストッキングを、どうするの?」
「かぶるんじゃ――」
「間違えた、ストーキングだったー、ってサユカちゃん今なんて言った?」
思いっきり目をそらすサユカン。
「「かぶる?」」
「い、いやぁ、そのっ、こないだテレビでそんなの、やってて……」
恥ずかしそう……かわいい。
「で、話は戻るけど。ストーキングのこと?」
「そうそう、トメお兄さんの後をつけて、いいところを見つけるのー」
ふむ……それは面白そうだ。
「よし、家に帰ったら早速やってみよう!」
意気込んだ瞬間。がしっ、と肩を掴まれた。
振り返ればサユカンが。
「報告よろしく」
「報告したらストッキングかぶってくれる?」
「その話は忘れてっ!」
「じゃあもっと可愛くお願いして」
「よ、よろしく♪」
「ひねりがないなぁ」
「ひ、ひねりってっ……んと、んと……よろしくにゃん♪」
「任務了解!!」
鼻血出るかと思った。
先日リクエストのあった「トメの魅力を全開で」と言う要望に応えるため、この話を書いてみました。まだ前半です。次が勝負です。果たしてトメは格好いいところを見せることができるのか!?
続きます。