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カカの天下  作者: ルシカ
203/917

カカの天下203「すっぽんぽん」

「おーいカカ」


「なに、トメ兄」


 こんばんは、ご紹介に預かりましたトメです。


 ただいま夕食どき。カカはテーブルについて僕がご飯をもってくるのを待っています。


「へい、すっぽんお待ち」


「へ、えっ、これが!?」


 そう、先日カカが食べたがっていた、というか飲みたがっていたすっぽんの血だ。


 さっき、近所のサカイさんからお裾分けしてもらったので、早速グラスにそそいで置いてみたわけだ。


「ご飯食べる前に、ちょっと口つけてみないか」


「おぉ……これが、すっぽんぽんの血」


「ぽんが多い」


 飲んだら脱ぎ出しそうな血だな。うあぁ、なんて犯罪チックなアイテムだ!


「これを飲んだら空が飛べるんだよね!」


「え、あ、いや」


 そういえばそんなこと言ってたな……


「空を飛べるほど元気になる、って言ったけど、本当に空を飛べるわけじゃないぞ?」


「空を飛べるほど元気になるんだよね?」


「あ、ああ」


「じゃあ飛べるんじゃん」


 ああもう! ニュアンスでわかれよお子様!


「とにかく飲んでみるね」


 あ、くいっと飲んじゃった。


 あ、顔をしかめた。血だもんなぁ。飲みにくいだろうに。


 あ、グラスを置いた。


「どうだった?」


「……若い娘の血は格別じゃのう」


 なんの漫画の吸血鬼のマネだそれは。


「すっぽんの血だっての」


「若いすっぽんぽん娘の味は格別じゃのう」


 それは確かにおいしそ……いやいや!!


「……お?」


「ん、どしたカカ」


 冗談を口にしていたカカの動きが止まった。


 と思ったら、なんだかそわそわし始める。


「お、おいどうした」


「イェイ!!」


「なんだいきなり」


「なんかイェイな気分なの! 身体が熱い!」


 あー、すっぽん効果か。身体が温まってきたのかな。


「イェイ!」


 しかしやかましい


「ワンダフル! ビューティホー! エキサイトウーマン!」


 素晴らしいがどうした美しいがどうした興奮した女がどうした。


「ああ、興奮した女っておまえのことか」 


「今の私なら空を飛べる! さぁ学校の屋上へレッツ」


「ゴーすんな! 飛ぶならここでやれ。ほら、グラス片付けてやるからテーブルの上で」


 行儀が悪いけどカカを落ち着かせるためだ。仕方ない。


「えー、低い」


「空を飛べるなら低くても飛べるだろ」


「でも滑空時間とか速度とか」


「そんな細かい知識はいらん! さっさとやれ」


「ぶー」


 文句を言いながらもテーブルの上に立つカカ。


 そして無意味に手をばっさばっさと振って……ジャンプ。


 もちろん飛べるはずもなく。


 ぽとり、とカカは墜落した。


 顔面から。


 もちろんぽとりなんて可愛い音じゃなかったけど、あんまりリアルな音を表現するのも痛々しいので勘弁してほしい。


 さて、畳とキスしたまま動かないカカは……


 あ、がばっと起きた。


「いまちょっと浮いたよ!?」


「……はいはい」


 幸せなやつだなぁ。


 元気出たのはなによりだけど。


「じゃ、これからちょっと外を走り回ってくるね。走ってるうちにまた浮くかもしれないし」


「変な噂たつからやめろ!」


 前言撤回。


 元気すぎるのも面倒だ……




 ――このあと、カカを落ち着かせるのに一時間もかかってしまった。


 迸る勢いを食に向けさせました。そしたらカカはすごい食べました。炊飯器の中身もすっぽんぽんとなりました。


 ……違った。すっからかん、か。

 

 恐るべし、すっぽんぽんの血。

 はい、先日言ってたすっぽんぽん編です。

 でも誰もすっぽんぽんになってなくてすいません。

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