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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下2「カカとしりとり」

「馬」


「マントヒヒ」


「暇」


「街」


「ちから」


 こんにちは、トメです。


 今日は日差しが爽やかな日曜日、ですが僕とカカは不健全に家でごろごろしながら漫画を読み、ついでにしりとりをしています。


「拉致」


 ちなみに今のが僕の番。


「ちんすこう」


 ぶっちゃけこれ、なんだったか覚えてない。そんな微妙な答えを返してくれたのは我が妹、カカっす。


「うち」


「ち、ち、チーカマ」


「マーチ」


「ち、ち、ち……ちきしょう、舐めやがって」


「なんのセリフだそれは」


「むぅ、『ち』ばっかり卑怯だぞおぬし」


「しりとりとはそういう勝負なのですよ」


 僕はやれやれ、と寝転がりながら首を振った。


「所詮は小学生。言葉のボキャブラリーで大学を卒業したこの僕に勝とうなど……はいはい、サービスでオッケーにしてあげるよ。ついでに『ち』じゃないので言ってあげよう。『敵』」


 我ながらムカつく言い方をしたおかげで、カカは顔を真っ赤にして悔しがっているだろう。僕の目線は漫画に向いているからそっちは見えないけどね。


 さぁ、どうする小学生のお子様。『吉』とでも答えれば僕に反撃できるぞ。もしくは何か僕を驚かせるような難しい言葉を言ってみるがいい。


「北朝鮮原爆実験成功!」


 小学生を侮っていた。やるなコイツ。


 じゃあ、これでどうだ!


「宇治川の戦い!」


 平安時代末期に源義仲。頼朝から派遣された範頼、義経による合戦のことだ。現代の問題に日本史で対抗したがしかし、カカは不敵に笑おうとして失敗したようなわざとらしい笑い声を上げた。変な声。


「インドのリライアンス、ジャムナガール製油所で火災!」


 な、なに! 世界三位の規模である同製油所全体の生産量に影響が出る可能性があるこの事件In十月二十五日に速報、を持ち出してくるとは……


「貴様、なぜそんなことを……」


 戦慄を覚える僕に向かって、妹は嬉しそうに言った。


「ニュース、ちゃんと見てるから」


 えらいなーおまえ。


 しかし僕も負けてはいられない! インドにはインドで対抗だ。


「インドネシア独立戦争!」


 インドじゃないって? インドって文字が入ってるじゃないか。だからインドだ。


 日本が第二次世界大戦を終え、連合国へ降伏したあとにオランダとの間で起こった戦争だ。八十万人も死亡したそうだよ。戦争いくない。ケンカもいくない。南無南無。


「また『う』かぁ……いや、いまトメ、せんそおおぉ! って勢いよく言ったよね?」


「いや、それはないだろ」


「言ったよ! 盛りのついたメスブタみたいに叫んだよ!」


「どっからそんな言葉覚えてくるのおまえは!」


「トメが寝言で言ってたんだよ」


「へ? は? そんな、嘘だろ。嘘だと言ってくれ!!」


 そんな自分すら知らない性癖でもあったのか!? ちょっと待て連載開始直後になんてキャラにさせるんだ!! 作者は鬼か!?


「じゃあ、次は『お』だね?」


 ああもう、なんでしりとりにこんな必死なんだ我が妹よ。暇だからですかそうですか。 


「はいはい、もうそれでいいよ。で、次はどんな事件を持ち出すの?」


「オタクブーム」


「それ事件なの?」


「ある意味そうでしょ」


 そう言われればそうなのか……


「おかげで日本のイメージが危ぶまれてるんだから」


 小学生に言われちゃおしまいだな日本。


「だからいいかげん、オタクやめなよトメ兄」


「いや、だからさ! 初回から変な設定つけるのやめてくれる!?」  


「なにをわけのわからないことを言ってるの?」


 世界の構造がわからない妹は小首を傾げる。くそぅ、僕だけが苦しんでて、なんか嫌な感じ!


 仕方ない、もう終わらせよう。


「じゃあ、『ム』だな。言うぞ。ムキムキ事件」


「あ、『ん』だ」


「あっちゃー失敗だなーあはは」


 ちなみにこの事件の詳細は各自の想像に任せる。


「やることなくなっちゃったね」


「あ」


 そういえば暇だったんだった。


「……もう一回やろうか」


「うん」


 そうして一日は過ぎていく……




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