カカの天下198「カミカミ」
「なんかさっ、甘いもの食べたくない?」
「太るよサユカン」
「わたしは別に気にしてないもーん」
む、私ちょっと気にしてるのに。
どうも、カカです。今日は学校の帰り道。用事があるらしいサエちゃんは先に帰ってしまったので、私とサユカンの二人だけの帰宅となりました。
「んじゃ商店街よってこっかっ」
「そだねー。何食べたい?」
「なんかあずきが食べたい気分っ」
「あー、そういえばあずさちゃんと仲直りしてないな」
「あずさちゃん? そんなのいたっけ」
「うん。私にいちゃもんつけてきたの。なんか気に入らないって」
「どっかで聞いた話ね」
「そだね」
「どこでだったかな……うーんっ」
自分のしたことって案外忘れるもんだよねぇ。
さて、とにもかくにもやってきました甘味処。入り口の上の看板には店名がでっかく書かれている。その店名とは……
『とけろ』
……なにが? と最初は思った。
だから店員さんに聞いてみたんだけど、そしたら「程よく溶けかけのアイスを使った甘味をウリにしているので、それが由来なんですよ」と教えてくれた。
にしても『とけろ』はないと思う。
そんなことを思い出しながら、私とサユカンは案内された席についた。
「なに頼もうかな……」
「わたしはあずき抹茶パフェ! これがもうね、あみゃいのっ」
そっかー、おいしそうだな……ん?
ちらりとサユカンを見る。
なんかあさっての方を見てる。
「あみゃいの?」
「……あ、甘いの」
「あみゃいの?」
「……いやっ、そのっ、だから」
「あ、みゃ、い、の?」
「う、うううう」
私はサユカンの向かいの席から隣の席に移動した。
「あみゃいの?」
「ちょと、カカすけ、顔ちか」
「もっかい、あみゃいって言ってみ」
「そ、そそそそんなこと言ってない!」
くぁーわいいっ!
「店員さんに、『このあみゃいのください』って言ってみ」
「そ、そそ、そんなこと言えるわけ」
「言ったらおごってあげる」
「……う」
サユカンは迷ったのか、所持金を確認しようと財布を取り出そうとして……固まった。
「財布……が、ない」
「忘れてきた?」
「かもっ!」
にやり。
「さぁ……もう言うしかないね」
「きょ、今日のところは甘いものはあきらめ」
「きれるの?」
「……うぅ」
無理だね。女の子はそういう生き物だ。
「す、すいませーん!」
手を上げて声を張り上げ、ケンカを売るような勢いで店員を呼ぶサユカン。
「こ、ここ、このあみゃいのください!」
「は、はい……あずき抹茶パフェですね」
「あ、私はこれ」
「はい……白玉クリームあんみつですね。かしこまりました、少々お待ちくださいませ」
よほど体力を使ったのか、ゼーハーと息を荒げながらサユカンは私を睨んだ。
「こ、これでいいんでしょっ!?」
「うん、じゃあハイ財布」
「君が盗んだんかいっ」
あー、もうホントにサユカンはおもしろいし可愛いなぁ。
甘いのとサユカンを味わえて、私は大満足でした!
人がかむとこみると、苛めたくなりますよね。
……なりますよね?(汗