カカの天下194「二学期のはじまりっ」
「よ、おまえら。久々だな」
「テンカ先生。おはよーございまーす!」
「おはよー!」
「よう先生、元気してたかー?」
適当に挨拶していく生徒たち。タメ口をきく失礼なやつもいるけど、これも先生がクラスに馴染んでいる証拠です。
「おいこらカカ。なんだその口の利き方は」
怒られちった。失礼なカカです。
今日は夏休みが終わって初登校の日です。
「さて、始業式まで時間があるから先に宿題集めるぞー」
テンカ先生がそう言った瞬間、クラスがざわめいた。
「あの、先生。宿題なんか捨てておけって夏休み入る前に言いませんでした?」
手を上げて言う男子。名前は西革だか西川だかどっちか忘れた。
「あー、あれな。皆で叫びまくってたのが職員室まで聞こえたらしくてさ、あのあと教頭に怒られちまったんだよね。宿題はなによりも大事だのとガミガミ……うるせぇったらないね。てわけで前言撤回。また怒られるのめんどいから宿題はやれ」
「夏休み終わる前に撤回してくださいよ!!」
うあ、サエちゃんの言ったとおりになった……
しかしテンカ先生の言葉に動揺する生徒は思いの他少なかった。もしかしたら皆このことを予想していたのかもしれない。まぁ先生の性格を考えてみれば簡単にわかることだしなぁ。
「じゃとりあえずドリル集めるぞー。自由研究とかは後で各自で工作室に持ってってもらうから」
というわけで宿題の収集開始。
「な……カカ! おまえ宿題やったのか?」
「ええ、そですけど」
「どうしたカカ!! 頭がおかしいのか!? いや、元がおかしいから……頭が正常になっちまったのか!?」
あんたの言ってることがおかしいよ。
「先生、安心してくださーい」
私が何か言う前に、サエちゃんがほやほやと笑いながら声をかけた。
「宿題の中身はちゃんと変ですよー」
「ならよし」
この先生もほんとアレだなぁ。
「さて、宿題はこんなもんか。宿題やってこなかったやつは立て」
言われたとおり、起立する数人の生徒。
テンカ先生は厳しい表情で、ダン!! と教卓の上に拳を叩きつけた。
「なんでやってこなかった!?」
「「「あんたのせいで」」」
「それもそうか。座れ」
軽いなー先生。
「でも宿題は明日までな」
そしてきついなー先生。
「さて……この夏休み、おまえらは何をしてた?」
「赤くなってました」
「黒くなりましたー」
真っ先に発言したのは私とサエちゃん。テンカ先生はおもしろそうに目を細める。
「ほぅ……見たところそれほど日焼けしたようには見えないが」
私たちは夏休み入る前からそれなりに焼けてたしね。
「聞こう。何で赤くなった。何が黒くなった」
「血で赤く」
「お腹が黒くー」
「素晴らしい夏を過ごしたようだな」
なぜか拍手が起こる。
「先生は何をしてたんですかー?」
「オレか? そうだな……」
少し考え込んだテンカ先生は、やがてにやりと笑ってこう言った。
「彼氏と飲んだり――」
「誰が彼氏かっ!?」
バターン!! と教室の戸をぶっ壊す勢いで登場したのは、サユカン!?
隣のクラスにいたはずなのに、聞こえたの今の!?
愛の力って偉大だぁ……
「ま、こうやってカカとかサエとかサユカとじゃれついてたくらいだな。夏休みの思い出は」
そう言って笑うテンカ先生は、心底楽しそうに見えた。
「先生も寂しい人ですね」
「やかましい黙れさぁ始業式いくぞ」
お、トメ兄にちょっと似てる言い方。
「サユカもクラスに戻れ!」
「トメさんとは……」
「ああ、彼氏じゃねぇよ」
「そ、そうですよねっ。じゃ、教室に」
「まだ」
「ぁんだってぇ!?」
テンカ先生もサユカンで遊ぶの好きだなぁ。
今学期もこんな感じで過ごしていくんだろうな。
超楽しみ。
夏休みが終わりました!
夏ならではのイベント話が最近多かったですけど、次回からは『なんでもない日常度』が強くなると思います。
しかし学校が終わったとか始まったとかいうわりに学校の話が少ないこの作品(笑)あ、そうでもないかな? 夏休みが長かったからそう感じるだけですかねぇ……