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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下19「疑問いろいろ」

「お米はどうして白いんだろう」


 ……どうも、トメです。


 ただいま食事中。そして例によって例のごとく、うちのカカが妙なことを言い出しました。


「なに、そのバカを哀れむような目は」


「いや、だって、ねえ」


「さも答えにくそうに言わないでよ」


「ほら、おまえだって掲示板に書いてたじゃん」


「む」


 痛いところを突かれたのか、カカは黙った。


 ちなみに掲示板とは先日購入したホワイトボードのことだ。玄関に置いてあるそれには家族への伝言と、カカの日替わり魂の叫びが書かれている。


 そして書かれている本日のカカの叫びは『バカは目つきでころせ』


「そんな目で見ないでよトメ兄」


「や、おまえの言うとおりにしてみたんだけど」


「それじゃ殺せないよ。せつなくなるだけで」


「はいはい。で、なんで急にそんなこと言い出したんだ?」


「なんとなく思ったの」


 なんともわかりやすい答えである。


「よくわからんこと考えるよな、子供って」


「じゃあ説明できる? お米はどうして白いのか」


「……む」


 どうして白色に見えるか――それなら科学的に言えばお米が光を反射すると白色に見えるから、ということになるが……なぜ白いのかと聞かれれば誰にもわからないだろう。


 カカも小さい頃は無自覚な子供の質問で僕の頭を悩ませてきたものだ。さすがに最近はなかったのだけど、やはりたまにはそういう疑問が浮かぶらしい。


 しかしそれは難しいけど悪いことじゃない。むしろ良いことだと思う。大人になっていろんなことに無関心になるよりは、よほど健全なことだろう。


 なので、まぁ、そんな余計なことを考えても意味が無いなどとは言えず、ちょっと付き合ってみることにした。


「そうだなぁ……白いほうがおいしそうだから、とか? ほら、黒とか緑色のお米とかあったら食べたくなくなるじゃん」


「でもそれだと、お米は食べてもらいたがってるみたいだよね。トメ兄、自分がお米だったらわざわざ食べられやすいような色になる?」


 自分がお米だったらとは……また意外なことを言う。


 でも案外そういう発想はおもしろい。もし自分が〜だったら、という話はよくあるが、大抵は生き物が相手だ。食べ物を当てはめるのは幼児向けの番組くらいのものだろう。


「そうだな……じゃああれだ。不本意だけどその色にならなきゃならない理由があったとか」


「そうだね。世の中そんなうまくいかないもんね」


 なんでそういうところだけ大人な思考なのかねこのお子様は。


「そのつもりはないのに色気が出てるからってむさぼられていく……嫌な世の中だね」


「ちょと待てお子様。いま色気って言ったか? その言い方だとなんか悲惨な女性みたいに聞こえるぞ。色だろ、色」


 貪るとかいう言葉もよく知ってるな、ガキのくせに。


「色って不思議だねえ」


 そう言われてみればそうかもしれない。普段当たり前に目にしている色も、子供のころはクレヨンで遊んだりして新鮮な気持ちを味わっていたはずだ。


 普段あるものに慣れてしまい、楽しみを忘れたのはいつのころだろう。


「……じゃさ、海とか空はなんで青いと思う?」


 どこかで聞いたような話をカカに振ってみる。


 科学とか常識とか、そういう余計な考えがないこの子供はどんな答えを出すのか――少し気になったからだ。


 だけど意外にもカカはあっさりと答えた。


「そんなことくらい、考えればすぐわかるよ」


「へぇ、なんで」


「空だって海だって、綺麗でいたいからに決まってるでしょ」


 それは大人が言えば陳腐な答えだろう。


 恥ずかしげもなく子供が言うからこそ、心地よく聞こえる。


「そっか」


 綺麗でいたい。なるほど、確かに納得できる理由だ。


 身近にある海と空が綺麗じゃなかったら、僕達だって元気がでないしな。


「でも……いくら綺麗になろうと気を使っても、やっぱ荒れるときは荒れるんだよね。化粧が大変そう」


「なんで君はそう女性を例えに使うのかね」


 そのうち海や空がダイエットとか始めたらどうする気だよ。


 ちょっと見てみたいけどさ。

 



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