カカの天下183「お金も大事だよー」
「ただいまー」
相も変わらず仕事帰りのトメです。
そしていつも通り出迎えてくれる三人。
「おかえり、先に私にする?」
「それとも私ですかー?」
「それとも、わた、わた……」
またこのパターンかい。微妙に違うけど。
えーっと、ど、れ、に、し、よ、う、か、な、あ、ね、の、い、う、と、お、り……に、は、し、た、く、な、い、っと。
「じゃあサエちゃんで」
「とっても高いですよー」
「いくら?」
「八万で一発、どうですかー?」
サエちゃん、おそろしい子!
なんかリアルにそれっぽく聞こえるんですけど意味わかってませんよねっ!?
「やるねサエちゃん。じゃあ私は十万でどう?」
なんのオークションだこれは。
「わ、わたしなら二万でお安いですよっ」
安くねぇよ。
「おまえらな……そんな軽々と万万言うなよ。一万稼ぐのにどれだけ働かなきゃなんないのか、わかってるのか?」
はい、と手を上げるカカ。
「ゲーセンでガキを三人ほどボコって」
「それは犯罪だこのガキめ」
はい、と手を上げるサエちゃん。
「花を摘んで、駅前あたりで泣いて立ってれば」
「それは反則だ、この腹黒め」
はい、と手を上げるサユカちゃん。
「二日くらい、働けばっ」
「それは普通だ、この常識人め」
「あれ……常識人じゃダメですかっ」
「「「ダメに決まってる」」」
「トリプル!?」
はっ!? しまった、ついつい……
「ごめん、サユカちゃんくらいは普通でいてくれ」
「トメさん……わかりましたっ! 例え家が火事になっても友達が火事になっても地球が火事になっても宇宙が火事になっても普通でいますねっ!!」
や、その状況で普通なのは逆に異常だから。
「なんでそんな火事ばっか言うの?」
「うちのお母さんがですねっ、毎日家事を手伝えってうるさいんです!」
あー『かじ』ね。
この子もこういうこと言うようになったか。誰のせいだ。僕らのせいだな。なんまいだぶ。
「とにかくな、お金は大事なんだからそう軽々と何万とか言うもんじゃない」
「はーいっ」
うん、いい返事だサユカちゃん。
「いいじゃないですかー数万程度」
うん、いやな返事だサエちゃん。
「稼ぎが少ないトメ兄らしいね」
うん、いやみな返事だカカ。表に出ろ。
「あ、トメ兄。ほんとに稼ぎが少なくなったら言ってね? 狩ってくるから」
うん、危険な返事だカカ。やっぱ表に出るな。
「はぁ……子供はこれだからなぁ。一度労働の大切さってものを経験させればいいんだろうけど」
「あ、じゃあ駅前にいきましょうかー?」
「ゲーセンいこか?」
「そうじゃなくて!」
そんな不健全な労働を覚えられたら将来が不安でしょうがない。
うーん……会社見学でもさせてみるか?
どこの?
……やっぱうちの会社か。
んー、考えて、みるかな。
さぁさぁ皆さん、カカは10万、サエちゃんは8万、サユカちゃんはたったの2万ですよ! お買い得です買った買ったぁ!!
……冗談です。
そんな安いわけありませんよね♪(そもそもお金に換えるな