カカの天下182「背景は大事です」
「ただいまー」
今日も仕事でしたが、だるいながらも終わらせて帰宅してきましたよトメです。
「おかえり」
「おかえりなさーい」
「おかえりなさいっ」
おー、今日はカカサエサユカ、三人ともいるな。
お盆シーズンもひと段落したしね。しかし最近帰ってきたら必ずカカ以外にも誰かいて「お帰りなさい」と言ってもらえるなぁ。
妹が増えた気分だ。お得な気分だ。
「トメ兄、お風呂にする?」
「トメお兄さん、ご飯にしますー?」
「トメさんっ、それとも、わた、わた、わわわ……って言えるかあああああ!!」
そしてどんどんカカ化してきてる三人。
本当に妹が増えた気分になる……ちなみにカカ化というのは変人化と同じ意味だ。
「はいはい、んじゃ生を一杯もらおうかね」
確か冷蔵庫に一本あったはず。
「はい、生でがっぷりと召し上がれ」
「ど、どうぞ……」
「なぜにサユカちゃんを差し出すのだ我が妹よ」
「食べるんでしょ。塩とかいる?」
「いらん!!」
「え……わたしはいらないんですか?」
「なんでそんな真剣に悲しそうなんですかサユカちゃん」
最近はサユカちゃんもノリがいいなぁ。
こないだの海のときはどうしようかと思ったけど……
海?
「あ、そうだ。そういえばサユカちゃんって、まだ泳げないんだよね」
「は、はいっ」
「じゃ今度の休み、皆でプール行こうか。サユカちゃんの特訓に」
「え……」
「僕が教えてあげるよ」
カカに泳ぎを教えたのは僕だし、教えるのには結構自信がある。
猛獣使いと呼んでくれ。
猛獣? カカのことだよ。似たようなもんでしょ。
「……ん、どした?」
「えっと、トメさんが、教えてくれるんですか?」
「うん」
「…………!」
あれ、カカとサエちゃんがなぜか目を見開いた。
「隊長! 前方にバラが現れました! サユカンの周囲一帯がバラの背景です!」
「おおー、乙女ちっくフィールド全開だー! サユカちゃん乙女モードだー!」
「バラの赤色が目に痛いでありますー!」
ば、バラ? そんなもんがどこに……って、ぅお!!
「いきます……だから、その、お願いします!」
サユカちゃんがうるんだ瞳でこっちを見ている!
仲間にしますか? じゃなくて!
「じゃ、じゃあ今度の日曜日、大丈夫?」
「あ……そ、その日は、用事、が……」
よほど申し訳なく思ってくれたのか、しおしおと崩れていくサユカちゃん。
「た、隊長! 背景のバラが次々と枯れていきます!」
「お、おおー、乙女ちっくフィールドが破られていく……サユカちゃん絶望モードだ!」
「枯れたバラの茶色が目にも心にも痛いでありますー」
ホントに何言ってるんだこいつらは。
「まぁまぁ、機会はまたあるから、そんな落ち込まないで」
「は、はい……ありがとうございます、トメさん!」
両手を祈るように組んで僕を見上げるサユカちゃん。
「なんかポーズが少女マンガっぽいよね」
「最近よく読んでるらしいよー。さっきの背景もそんな感じだったしー」
それを見てこそこそ喋るカカとサエちゃん。だから背景とかってなんなのさ。
まぁいいや。
とにかく今度の日曜にサユカちゃんに泳ぎを教えることはできない、っと。
じゃ何しようかなー次の日曜。
少女マンガといえば花背景ですね(そうか?
ぶっちゃけ、それを書きたかっただけです(ぉぃ