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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下18「レンガの使い方」

「ただいまトメ兄」


 ただいまられたトメです。新しい言葉を作ってしまいました。使いにくいですね、はい。


「おかえりー。ん? なんだそれ」


 学校から帰ってきた妹は、手に古ぼけた赤色の直方体を持っていた。


「なにそれ」


「レンガ」


「なんでそんなもん持ってるんだ?」


 カカはなぜか驚いた顔をした。


「なんでって……レンガだよ?」


「レンガだな」


「三匹の子豚では狼を退治したという伝説のレンガ様だよ!?」


「や、退治したっていうか使われただけだし」


 どうやらカカの中ではレンガが神格化しているらしい。でも確かに今時レンガのブロックだけを見るのは珍しいかもしれない。


「そんなのどっから持ってきたのさ」


「公園に落ちてたよ」


「へぇ」


 なんでそんなものが落ちてたんだろう。よく見てみれば結構きれいな状態だ。建設業者が捨てていったとか? よくわからんけど。


「で、そのレンガをおまえはどうしようってんだ?」


「飾る!」


「まてや」


 そんな直方体を飾ればこの間のテルテル坊主の悪夢のごとく部屋が妙な空気になるではないか。


「えー、だめなの? ほら、兄妹喧嘩のときの武器にもなるし」


「おまえは僕を殺す気でありますか?」


「持って振り回せば運動になるし」


「そして手を滑らせてレンガが飛んでって僕の頭に激突して僕は死ぬのか」


「なんでそんなに死にたいの」


「死にたくないから言ってるの! とにかく。何か使い道でもない限りは、そんなもの置いておくのは許しません!」


「むぅ」


 カカは真剣な表情で考えながら、自分の部屋へと帰っていった。




 そして次の日。僕が仕事から帰ってくると。


 玄関先にレンガが置いてあった。


 どこに置いてんだか……と持ち上げてみて、ふと気づく。


 何か文字が彫ってある。


『人生はわりと下り坂』


 ナンダコレハ。


「カカー!」


「おかえりなっさー」


「これ、なんだ?」


「私の魂の叫び」




 次の日。


 僕が仕事から帰ってくるとまたまたレンガが置いてあった。


 手にとって見ると、新たな文字が追加されている。


『世の中なるようになりなさい』


「カカー! これ」


「私の願い事」




 次の日。


 僕が仕事から帰ってくるとまたまたまたレンガが置いてあった。


 手にとって見ると、新たな文字が追加されている。


『納豆ごはんと漬物』


「カカー!」


「食べたい!」


「しぶいな」




 ……どうやらレンガに何か書いて僕に読ませるのが面白いらしく、それからしばらくレンガ伝言が続いた。だが間も無くして書くところがなくなり、カカが新たなレンガを探しにいこうとしたので――仕方なくホワイトボードを購入した。


 まぁ伝言するときに普通に役立つだろうし、いいか。


 それは二代目レンガとして我が家の玄関に鎮座している。


 そして今日も、カカの魂の思いつきが書かれている。


『エビのしっぽの動き』


 ……変なの。




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