カカの天下179「カカだんご」
「……なぁ、カカ。悪かったって」
どうも、謝ってる最中のトメです。
今日はお盆休みでうちにいるのですが……カカが困ったことになってます。
お盆ということで、幽霊ネタでからかいすぎてしまい……
「なぁ、機嫌直してそこから出てきてくれよ」
「出ない。幽霊に会う」
カカは布団をかぶりまくってダンゴ虫になってしまったのです。
「ごめんな、ちょっと遊びすぎたよ。ほら、おまえだってやりすぎることはしょっちゅうあるだろ?」
「ある。でも幽霊に会うから出ない」
「あー、ほら。幽霊って物理法則関係ないじゃん? 壁とかすり抜けるし。だから布団かぶろうが、普通にしてようが、くるときはくるわけで」
「じゃあ死ぬ」
「死ぬなよ!!」
取り付く島もない。
「それにな、この真夏の昼間に布団かぶりまくってたら暑いだろ?」
「幽霊のせいで寒い」
「そのわりには喉かれてるし、ちらりと見える腕にはものすごい汗が見えるんだが」
「全部幽霊のせい」
幽霊って多機能だね。
さて、どうしたもんかな……
うーん、カカの普段が普段だから、唯一気が弱くなるお盆にはどうしてもからかいすぎてこうなっちゃうんだよなぁ。去年はどうやって謝ったんだっけ。
そうだ、食べ物で釣ったんだった。
「ほら、サカイさんからもらった桃があるぞ。そこから出てきて食べよう」
「丸い果物はお供え物に使われる。だからそんなの食べたら幽霊がお腹にきちゃう。だから食べない」
ええい、余計な知恵を身につけおって。
「ほら、桃だって切れば丸くないだろ? それなら大丈夫だって」
「……ほんとに幽霊、胃の中に入ってこない?」
「そんな胃カメラみたいな幽霊いないって」
「……じゃあ、食べる」
よかった。これでカカも布団ダンゴから出て……
出てきて……
「あの、カカさん」
「んしょ、んしょ、なに」
「なぜにそのようにもっそもっそ布団ごと移動されてるのでしょうか」
「布団はずすと、とり憑かれるから」
布団かぶってると幽霊防止になるのか。
布団も多機能になったもんだ。
「カカ、いいから布団をとりなさい」
「や」
ぐいぐい引っ張ってもカカは布団を離そうとしない。
どうしたものか……カカが一発で言うこと聞くには、食べ物と、食べ物と、食べ物……他になにか武器はないか!?
あ、そういえばあった。まだ使ってない手が。
「カカ、もしも幽霊にとり憑かれたら」
その言葉だけでびくりと震えるカカ。
しかし……
「霊感強いサエちゃんに看病とかしてもらえるんじゃないか?」
「くるなら来い幽霊!」
あれま、一発にも程があるぞ。
ほんと好きなんだなぁサエちゃんのこと。ここんとこ忘れてたけど。
さて、とりあえず舞い上がった布団を片付け……る前に。
「カカ、ほい」
「ん」
身体中、汗でぐしょぐしょなカカにタオルを投げてよこす。
「あー、とりあえず水飲め。倒れるぞ」
「……ん、あんがと」
まったくいつまで経っても世話の焼ける妹だ。
「トメ兄、お風呂入りたい」
「あーあー、そんだけ汗かけばそりゃそうだろうな。用意しとくから水飲んでから入れ」
「トメ兄、布団もぐしょぐしょ」
「あーあーあー、洗っとくからそこ置いとけ」
「私もぐしょぐしょ。洗ってくれる?」
「あーあーあーあー、布団と一緒にクリーニングに出してやろうか?」
ったく、どんだけ世話焼かす気だコイツは……
僕ってほんといいお兄ちゃんだなぁ。
誰かほめてくれ。
カカの怖いものがなくなりましたね!
……多分少し経ったらすぐ戻るでしょうが(^_^;)
怖いものって克服しにくいですよねぇ…