カカの天下176「ホントに迷惑な墓参り」
「おじいちゃん、おばあちゃん、ご先祖様……今年もきたよ」
「久しぶりだね、じーじ、ばーば」
どうも、トメです。
今日はカカと姉と三人でお墓参りにきました。
花を飾り、掃除をして、お供え物を……これでよし、と。
「ご先祖様がた、僕らは元気でやってます」
「じーじ、ばーば、元気に死んでた?」
「あぁ、きっと元気に死んでたさ」
ニャー、と黒猫が横切った。
あれ、僕が適当なこと言ったせいかな……まさかね。
「最近はね、いつも一緒にいる友達がいるの。サエちゃんとサユカンっていってね、サエちゃんは黒レンジャーで、サユカンは桃レンジャーなの」
「……その説明でわかるのか」
「じーじもばーばも戦隊モノ好きだったし」
「あー、そういやそうだったな。『じじばば戦隊、老いぼレンジャー!』とか言ってたっけ。懐かしい」
あれ、なんか頭上にカラスが寄ってきた。なんでだ。
「姉はね、最近どんどん怪獣みたいになってきてるの」
「そろそろ巨大化してもおかしくないんじゃないかと」
……あれれ? 頭上のカラスが増えてきたぞ。
さっきまで聞こえていたひぐらしの鳴き声もやんでるし……
「トメ兄、なんか周りおかしくない?」
「んむー……あんまりにもあんまりなことばっか報告するから、じーじとばーばが心配して出てきたとか……」
「じゃこれ、幽霊登場の演出!?」
あー、これで煙でも出てきたらカンペキ……って出てるしっ!
どこから煙なんか……と周囲を見渡したそのとき!
近くにあった墓石が倒れた!
不気味なほど静かな墓地に、鈍い音が響き渡る。
「なんだこれ……墓石が倒れるなんて自然現象じゃ有り得ないだろ!」
「トメ兄……お兄ちゃんでしょ、守ってね」
気がつけばひしっと僕にしがみついてるカカ。心なしか声が震えてる。
そういやこいつ、こういうの弱かったんだよな……
「し、心配するなカカ。世の中、超常現象なんてそうそうありはしないんだ……そうだ、ほら、これが幽霊の仕業だと思うから怖いんだ」
とりあえず、震えている妹の恐怖を取り除かねば。
「ほら、こんな変な状況、姉の仕業とか思えば」
「ばれたか!!」
「ほんとにおまえの仕業かよ!!!」
倒れた墓石の近くから登場したのは……花瓶の水を替えに行ったまま一時間くらい姿をくらましていた姉だった。
「いやー、いい雰囲気だったからつい」
「なにがどういいんだ?」
「人を驚かすのに」
こいつ最低だ。
「黒猫とかカラスとか煙とか、どうやって用意した」
「なんか呼んでみたらいっぱいきたよ?」
こいつはどこまで人間離れしてくんだ。
「煙は?」
「線香がごっそり捨ててあったから燃やしてみた」
こいつはどこまでハタ迷惑なんだ。
「大体さ、どこまで水替えに行ってんだ」
「ちょっと滝まで」
こいつはホントどこまで行くんだ。
「ほら、カカ。ほんとに姉の仕業だったんだ。心配ないぞ」
「……や、別に怖がったりとかしてませんですから。ほんとですのよ?」
「はいはい、口調変わるほど怖かったんだな。よしよし」
いまだにしがみついてくるカカの頭を撫でていると……ふと、声が聞こえた気がした。
――おまえらは相変わらずやのぅ。
空耳?
それともまさか……
墓石を見上げる。
まさか、ね。どことなくおばあちゃんの声に似てるような気がしたけど……
どっちでもいいか。
これからも見守っててくれよ、おじいちゃん、おばあちゃん、ご先祖様。
「ま、あたしの声なんだが」
「おまえもう帰れ!」
――ほんと、相変わらずやのぅ。
その墓参りの帰り道。
「あ、忘れ物」
「なんだよ姉。まさか墓地にか? いちいち戻るの面倒だから嫌だぞ」
「……倒した墓石を、戻すのを」
「戻って!!! いますぐ回れ右して戻って!!!」
半狂乱のカカを落ち着けながら、騒がしく回れ右した僕らなのでした。
……祟られないよな。
祟るなら姉にしてくださいよ?
お墓参りは厳かに、ルールを守ってしましょうね^^