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カカの天下  作者: ルシカ
174/917

カカの天下174「ミッション・イン・飲み会 後編」

 ……こんばんは、しー……静かに、カカです。


 ただいまトメ兄とテンカ先生がお酒を飲んでいるのを盗み聞きしているところです。


「なんか食べますかー?」


「あ、お気遣いなく……」


 盗み聞きしてるわりにはお店の店員さん公認です。なぜか。


「じゃーフライドポテトを一つ」


「はーい」


「ちょと、サエちゃん。私お金もってないよ?」


「大丈夫、この世の中にはツケというものがあるんだよー」


「へー、サエちゃん物知りー」


 よくわかんないけど大丈夫なのかな。まぁいいや、それよりもトメ兄たちの会話を聞かねば。


 それにしてもサユカン、一言も喋らずにすだれに耳を当ててるなぁ。


「サユカン、いまトメ兄たち何の話してる?」


「カカすけの話」


「にゃにをー」


 聞かねば。


「あー、やっぱ学校でも相変わらずそんな感じかー」


「おぅ、変なことばっかしててな。オレの評価は上がりまくってるけど成績は順調に下がってるぞ」


 あー! 私のプライベートを!


「テンカ先生……ブッコロス」


 小さく呟いた声はもちろんトメ兄たちには聞こえていない。


「なんでカカはあんな風に育ったんだろう」


「そういう風に育てたんじゃないのか?」


「んなわけあるか。元々おたまじゃくし育ててるつもりが、いつのまにかウナギになってた気分だよ」


 あ、こないだ私が言ったネタを!


「ウナギかー、そりゃ掴みづらくて厄介だな。でもそういうところが可愛かったりするんだろ」


「……まぁな」


「このシスコンめ」


「やかましい」


 お、いいこと言うじゃん。


「テンカ先生……大好き」


「カカちゃん……殺すんじゃなかったの? あ、好きだから殺すんだね。うーん、愛だねー。もぐもぐ」


 や、ブッコロスって言ったのは勢いというか……それにしてもサエちゃん楽しそうだなー。


 あ、いつのまにかきてたポテト食べてるし。私も食べよ。


「ところでサユカのことだが」


「キター!!!」


 きゅぴーん! とサユカンの目が光った! 


「ん、サユカちゃんがどうした」


「トメ、あいつと仲良くやれてるか?」


「んー、微妙かな。なんか僕、あまり好かれてないみたいで」


 恥ずかしそうに言うトメ兄。


「ほんとはこんなストーカーするくらい好きなのにねー」


「う、うるさいなっ!」


「携帯の待ちうけ画面だってトメ兄なのにね」


「うるさいってのっ! もう、テンカ先生ってば余計なことを……ちょっとそこのお兄さん!」


 店員のお兄さんは今まさにトメ兄の席に料理をもっていこうとしていたのだが、サユカンにむんずと腕を掴まれて動きを止めた。


 そしてサユカンは店員さんの両手にある料理のうちの片方に、テーブルに置いてあったわさびを塗り込んだ。


「これをあの女に」


 あのね、サユカン。お店の人がそんなのオッケーするわけが。


「オッケー!」


 したよ!? どんだけノリいいのここの人ら!?


「はい、キノコ炒めお待ちー」


「ふっふっふ……苦しむがいいっ」 


「サユカン、ひどいことするね」


「そう言いつつ、カカちゃんも楽しそうだねー。もぐもぐ」


「や、ポテト食べてるサエちゃんには負ける」


 そう言ってる間に、テンカ先生はわさび入りキノコ炒めを口にした!


 どうだ!


「お、これわさびがきいてて美味いな」


 うそぉ!?


「わさびなんか入れておいしくなるなんて……ありえない!」  


「だよね!? 辛いんだよ? 緑色だよ? 輪っかのサビなんだよ?」


「カカちゃん、その当て字は強引だよー、もぐもぐ」


 うぅ……大人って変なもん好きだなぁ。


「トメも食ってみ」


「どれどれ……お、ほんとだ」


「……一緒に箸をつついた」


「……む」


「きゃー、二人とも怖いー♪ もぐもぐ」


 別に私は怖くないでしょ。別にムカムカとかしてるわけじゃ……や、してるけど! サユカンのために! 身を乗り出してるけど!


「じゃあさトメ、もしサユカが――」


 あ、乗り出しすぎた。


 がたん、とすだれが落ちる。

 

 


 後ろから何かが落ちた音がして、ビールを口にしていた僕は思わず振り返った。


 するとそこには……見慣れた顔が三つ。


「……カカサエサユカ三人衆、なにしてる」


 なんでこんなとこにいるんだ。そしてなんで三人ともハニワみたいな顔してんだ。


「い、いらっしゃいませ! ご注文は?」


 店員にでも化けたつもりかこの妹は。


「……じゃあカカ焼きを一つ」


「この時期のカカは質が悪いのでおすすめしませんよー?」


「サエちゃんひどっ!」


「サエすけはカカすけが焼かれないように言ったんだよっ」


「……悪いのは質じゃない。タチだ」


 なんだこりゃ。なんで僕らの後ろの席に三人がいるんだ。なんでポテト食ってるんだ。それもまた僕が払うのか。


「……ちっ」


「テン、なんで舌打ちしてる」


「せっかくサユカの言いたいことを代わりに言ってやろうと思ったのに」


「そんなことされなくても、わたしは言えるわよ!」


「じゃあ言ってみろ」


 なんだ、サユカちゃんが僕に言いたいことがあるのか?


 僕はサユカちゃんを見る。


 闘志に満ちた視線が僕を貫く。なんだかこのまま突進してきそうな勢いだ。


「トメさん!」


「はい!?」


「わたしも生を一杯!」


「飲むんかい!」


「お酒の力を借りれば言えるかと……」


「小学生が借りるな!!」


 まったく、こいつらは……


「テン、おまえの差し金か」


「いや、ついてくるのはわかってたから店員に案内するように言っておいただけだ」


「なんでそんなことを」


「そのほうがおもしろいから」


「……姉みたいなこと言うな、テン」


「あとまぁ、サユカが言いたいことあったみたいだからな。今日はもう言えないだろうが」


 む……何を言おうとしたのかすごく気になるが、仮にも教師であるテンが言えないと言ったのなら、言えないんだろう。今度聞いてみることにしよう。


「すいませーん、ポテト追加」


 とりあえず、今日のところはこいつらも合わせて食事会といこうか。 


 というわけで、飲み会編の後編でした。

 色々と詰め込んでたらちょっと長めになってしまいました。本当は中編をいれて余裕をもって書けばもっと面白くなったかもしれませんが……次回はカカラジの回なので^^;話載せ順ミスです……

 でもトメとテンカ先生の飲み話がまだまだ書き足りないので今後もまた書いていくつもりです!

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