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カカの天下  作者: ルシカ
170/917

カカの天下170「海から見ればそんなもん! トメ編」

「サユカちゃんってたしか泳げなかったよね。もしよかったら僕が教えて――」


「カカすけ……泳ぎ教えて」


 はぅあ!?


 ……どうも、ただいまサユカちゃんに露骨に拒絶されてしまったトメです。


 現在、カカたちを連れて海へきているのですが……来て早々トラブルです。


 なんかよくわかんないけど、サユカちゃんに嫌われてしまったようなのです……


「……へっ!? あ、いや、でもその……ええ?」


 そんななんとも言えない表情で僕を見るなカカ……


「なに、わたしの後ろに背後霊でもいるの?」


「えっと、それに近いものが……」


「そんなのいるわけないでしょ……いこ……」


 ああ、僕の声など一切聞かぬと言わんばかりにスタスタ去っていくサユカちゃん……声をかけるときに差し出したこの手はどこへ持って行けばいいのか!? 


 今の僕の顔はおそらくカカが言ったとおり、背後霊のようになっているだろう……


「まぁまぁ、元気出してくださいトメお兄さん」


「サエ、ちゃん」


「サユカちゃんが意味不明なことを言うのなんて、いつものことじゃないですかー」


「そうだけどさ」


「あっさり頷きましたねー、いいですけど」


 それでもあんな拒否っぽいことは言わなかったんだよな……うぅ。


「今のはサユカちゃんが恥ずかしがってただけですよー。ほら、今のサユカちゃんを見てください。後悔してるみたいでしょー?」


 サエちゃんに言われて、遠ざかっていくサユカちゃんをちらりと見てみる。


 するとそのときたまたま独り言を呟いたのか、サユカちゃんがボソッと漏らした声が聞こえてきた。


「(わたしって)……最低」


 最低!?


 僕が!?


 最も底辺!?


 ……がっくし。


 ……あ、姉が回転しながら飛び魚みたいに跳ねながら泳いでる。


 いいなぁ、姉は悩みとかなさそうで。




「トメお兄さん、元気だしてください。とりあえずこれでも食べて」


 そう言ってサエちゃんが差し出してくれたのはイチゴ味のカキ氷。


 所変わってここは海の家の食堂だ。落ち込む僕を元気づけようと、サエちゃんが連れてきてくれたのだ。


「んー、このメロン味はおいしいですよー」


「ん……そうだね、いただくよ」


 お金払うの僕だけど。


「疲れてるときとか、ショックなことがあったときとか、ボロボロなときには甘いものに限ります」


「僕、そんなにボロボロ?」


「すぐにでも雑巾として使えそうなくらいボロボロですねー。あ、すいませーん、カキ氷の宇治金時を一つ」


「そうか……ああでも正直ショックだよ、子供に嫌われるっていうのは」


「んー、おいし。だからー、あれはサユカちゃんの照れ隠しですってー」


「……でも、いくら照れてるからって『来ないでください!』とか『最低』とか、言うか?」


「もしカカちゃんなら照れてるってだけで『今すぐその場で死ね』くらいは言いますよー。あ、すいませーんマンゴーシャーベット追加」


 そりゃカカならそれくらい言うだろうけどさ……しかしよく食べるなサエちゃん。


「とにかく、サユカちゃんがトメお兄さんのこと嫌いじゃないのは親友の私が保証しますからー、懲りずにサユカちゃんにぶつかってくださいなー」


「でもそれでまた嫌がられたら」


「嫌よ嫌よも好きのうち、と言うじゃないですかー。すいませーん、フルーツパフェ」


「その理屈でいくと世の中に嫌なことは一切ない、ってことになるんだけど……いや、泣き言はこのくらいにしよう!」


 恥ずかしくないのか僕は。小学生の女の子にこんなグチグチと。


「よし、もう一回サユカちゃんと話してみよう!」


「おー、よかった。元気でましたねー」


 年長者として保護者として、いつまでも情けない姿は見せていられないし、なにより――あんまり長い間落ち込んでいるとここの会計がすごいことになりそうだ!


「じゃ、遊びましょうかー、パパ」


「……ぁぃ? 今なんとおっしゃいました?」


「パパですよー。今の状況からしてそう呼ぶのがいいかなーと」


 今の状況? なんだそれ。


 今の状況って言ったら……僕(いい大人の男)が兄妹にしては似てない、しかもちょっと歳の離れた女の子(スク水姿)と甘いものをつついてる(甘いもので釣っているようにも見える)っていう、なんというか、海で小学生の女の子をナンパしてそのままお持ち帰りしようとする誘拐犯と間違えられてもおかしくない状況のことか。


「じゃ、いこー。パパ♪」


「ちょ、ちょっと待て! その呼び方はその呼び方でなんかマズイ! ほら、なんか周囲の視線が――!」


 そんなこんなでドタバタしたけど、おかげで少し元気が出た。


 ドタバタしてて元気出るなんて、トラブル製造機のカカで慣れてるせいかな。


 や、しかしサエちゃんいっぱい食べたなーほんと……財布が……


 ええい、泣くな僕!


 泣くならサユカちゃんの問題で泣けっ!


 さて、トメもちょっと元気だしました。財布の中身と引き換えに。

 次回、海編の後編です。なんだかんだ言ってちょっとしか元気でてないご両人。はてさてどうなることやら……

 しかし色んな意味でおいしいなーサエちゃん。

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