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カカの天下  作者: ルシカ
168/917

カカの天下168「海から見ればそんなもん! 前編」

「おー、水着だ!」


「まっさきにそれか……カカ、おやじくさいぞ」


「じゃあなんて言えばいいのさ」


「普通は最初に『海だ!』って言うもんだ」


「海だ水着だ!!」


「水着ははずせないのな」


 どうも、テンション高いおやじなカカの兄、トメです。


 今日は先週の約束どおり、カカたちを連れて海に泳ぎにやってきました。


「カカちゃん、水着姿好きですからねー」


「プールでも女の子ばっか見てるし」


 ……大丈夫かコイツ。女の子的にも世間的にも。


「はいはいっ! アブノーマルなのはうちの家系上、仕方ないことなの。だからそんな話題は放っておいて、さっさと着替えておいでー!」


 パンパン! と手を叩いて仕切る声に従って、三人の女子はそそくさとでっかい車の後ろへと潜り込んだ。


 下に水着を着てくるように言ってあったので脱ぐだけなのだろうが、一応見えないところへ行くのは気分というものだ。


「……どこの家系がアブノーマルだって?」


「うちら」


「アブノーマルなのは僕以外だ!」


「そう言う人に限って自分が一番アブノーマルなんだよね」


 やれやれ、と癪に障る笑みを浮かべているのは……呼ばれてないのについてきた、というかそもそもどこから話を聞きつけてきたのか不思議でならない我が姉その人である。


「……うちに来た時点ですでに水着姿だったあんたに言われたかないわ」


 天下の往来をそんなパッツンパッツンの水着姿で……捕まるぞ。まぁシュー君は捕まえるどころか狂喜乱舞しそうだけど。


「お、なに。欲情した?」


 無駄にセクシーポーズをとる姉。


 鍛えられているため無駄な脂肪はなく、そして出るところは出ている姉は確かにスタイルはいい。だがしかし……


「例えばだ、姉」


「ん?」


「アリが恐竜に欲情すると思うか?」


「……しないだろうね」


「そういうことだ」


「あんたの中であたしはどんだけ異種族なんだ!?」


「や、だからアリと恐竜くらいだよ」


「あたしは人間だぞ!」


「一応見た目はな。でもなんかほら、もし花火の代わりに空へ打ち出されても死ななそうなイメージあるんだよ姉は。冗談だけど」


「……確かに死ななかったけどさ」


「あるのか! 打ち上げられたことが!?」


「うるさいなっ、でもちょっと身体痛めたんだぞ!」


「……恐竜だ」


「恐竜って言うな! せめてドラゴンと言え!」


「ドラゴンならいいのか」


「格好いいじゃん、火吹くし。あと酒とライターあれば火吹けるしね、あたし」


 長い付き合いだけど、この人の思考回路はほんとわからん……


「吹こうか?」


「飲酒運転なるからやめれ……そういやこの車って」


「サカイちゃんのよ?」


「……サカイさん本人は?」


「こんな暑いとこ来たら死ぬよあの子」


「免許は?」


「サカイちゃんは持ってるよ」


「あんたは!?」


「お、ほらほら」


 姉と無駄話しているうちにチビどもの着替えが終わったようだ。


 ……この件はあとでちゃんと追求しておこう。


「よし、泳ぐぞぃ」


 一番に飛び出してきたのはカカ。新調した赤いリボンつき水着が小柄な身体によく似合っている。やっぱ見た目は可愛いお子様だな。中身は怪物だけど。


 続いてサエちゃん。最近の傾向として黒い水着かと思ったが予想外。ワンピースタイプの紺色の水着……って、スクール水着!?


「サエちゃん……水着それしかなかったの?」


「いえー、他にもありますよー」


「じゃ、なんで」


「狙ってみました」


 何を!?


「さてさて、お次はサユカンの登場!」


 カカが妙にニヤニヤしてるのはなんでだろう、という疑問はすぐに氷解した。


「ど、どもっ!」


 なぜか改めて挨拶してきたサユカちゃんが着ている水着は……この間カカの水着を買いに行ったときに僕が「サユカちゃんに似合いそう」と言った水着そのものだった。


「あー……っと」


 カカのやつ……やってくれたな。


「あれだ。うん、似合ってる」


 思ったことはいろいろあったけど、とりあえずそれを真っ先に言うべきだと思った。


 サユカちゃんは嬉しそうにはにかんだ。おー、真っ赤になって可愛いのー。


 僕と喋るときはいまだにガチガチなとき多いけど、やっぱ嫌われてはいないんだよな。


「赤くなって可愛いねサユカン! そんなにトメ兄に気に入られたいのー?」


「べ、べべべべ別に全然まったくそういうわけじゃないわよ! こんな水着見られてるのが恥ずかしいだけでっ」


「さ、サユカちゃん、カカの冗談にそこまでムキにならなくても」


「見ないでください来ないでください恥ずかしい! 大体これはカカがむり、やり……」


 サユカちゃんが「しまった」という感じにこっちを見る。


 周りの人(なぜか通行人も含む)は「あちゃー」と頭を抱えた。


 嫌われて……ないんだよね? 僕……


 なんかまた自信なくなってきた。


「と、ともかく海だよ海!」


「そ、そうですよー。楽しみましょー!」


「ほらほら二人ともショボンとしてないでっ! 敵はすぐそこだぞ!!」


 ……そうだな。なにはともあれ、海だ。


 カカの親友だし、話す機会も多いんだから……サユカちゃんとも仲良くしたいんだけどなぁ。


 すごい勢いで拒否されてちょっと凹んだけど。


 ちょっと、頑張ってみるかな。


 さ、海編です!

 楽しい海水浴になるかと思いきや……やや微妙な滑り出しとなりました。めずらしくサユカちゃんに歩み寄ろうとするトメ! 果たしてサユカちゃんはどうするのでしょうか……次回に続きます。

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