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カカの天下  作者: ルシカ
167/917

カカの天下167「吸血鬼サカイさん?」

 こんにちは、トメです。


 最近ムカつくほどに晴ればかり続いている空は、やっと日が落ちかけてきたところだ。倒れる人が続出しそうな殺人的陽光が薄らいで、僕の会社帰りは少しだけ快適だった。


 暑いことには変わりないが、程よい風が身体を涼めてくれるのだ。うん、夏って感じ。


 そんな夕方に近い時刻。ふと地面を見るとセミの死骸が転がっている。


 命短し、か。これも風流だねぇ。


 その横に人が転がっている。


 風流だねぇ。


 ……風流?


 ちょっと待て。地面に人が転がってる光景が風流だなんてどこの戦場の話だ!?


「ちょっ! 大丈夫ですか!?」


 僕は慌てて倒れている人に駆け寄った。


 身体に負担がかからないように気をつけながら、そっとその身体を起こすと……


「って、サカイさん!?」


「……ぅ、あれ、トメさん?」


 薄らと目を開けたその人は、紛れもなく近所の引きこもり(改善中)のサカイさんだった。


「どうしたんですか!?」


「ぁ……あの、ですね」


「とにかく家に!」


 僕は今にも意識を失いそうなサカイさんを背負い、自分の家に駆け込んだ。




 カカはまだ帰ってきていないようだった。


 サカイさんを居間に運ぶ。急に倒れたようだったから心配だったけど、水を飲ませてあげたらすぐに元気になったようだ。


 大したことないみたいでよかった……


「ふぅ……ありがとうございます……おかげで助かりましたー」


「いえいえ。でもどうして急に倒れたりなんかしたんですか?」


「はいー……多分、日光に当たったからじゃないかとー」


 は? 日光に当たったから倒れるなんて、そんな吸血鬼じゃあるまいし。それもこんな夕方に近い時間の日光に……


「普段はまったく浴びませんからー」


「い、いくらインドアなサカイさんでも……最近は頑張って働いているんでしょ?」


「はいー。パートをなんとか続けてますー。でもそこは室内ですしー、クーラーが効いてますしー」


「……会社まで移動するときは日光浴びるでしょ」


「移動はクーラーをガンガンにかけた車ですしー、外へ出るときは日傘さしてますしー」


「そこまで徹底するとほんと吸血鬼みたいだねサカイさん」


「わたし、日光と暑さに弱くて……トメさんの血を吸えば強くなります?」


「なりません!!」


 ちょっとイケナイ妄想が浮かんだけど却下!


 にしてもインドアにも程がある。クイーンオブインドアだ。略してイーンインだ。変なの。


「今日は会社に車と日傘を忘れてしまってー」


「日傘はともかく車忘れるってなに!?」


「歩いて帰ろうとしたらポックリといっちゃったんですー」


「いやポックリ逝っちゃったらダメだから!?」


 ……久々に話したけど、そういやこんな人だったなぁ……サカイさん。


「歩いて帰れるって、会社って近いの?」


「車で三分ですー」


「近っ!? それで車? しかもその距離で倒れるの!? やっぱサカイさん、あまりに引きこもりすぎて吸血鬼になったんじゃ」


「あらー、引きこもってると吸血鬼になるんですかー?」


「へ、いや、そんな素の顔で返されても」


「じゃあ今の世の中は引きこもりでいっぱいですから……ホラーな社会になりますねー」


 そらー厄介な社会問題だ。なんとかできるのか政治家たちよ。ガンバレ。まずは吸血鬼を倒せるように身体を鍛えるのだ。ムキムキ政治だ。


「それはいいとして」


「いいんですかー? 吸血鬼社会。みんな血をちゅーちゅーですよ」


「流そうとしてるんです」


 この人わかってて言ってるのか素なのか、ほんとどっちかわからん。


「あ、わかった。カカちゃんに吸ってもらいたいんでしょ。本当に男の人って妹萌えな人が多いんですねー」


「なんでそうなる!?」


 あと萌えってなに!? 


 あ、こないだカカが言ってたっけ。たしか何とも言えない感情だっけ。


 カカに血を吸われる? 噛まれて?


 どこを噛まれて?


 ……や、ほんと何とも言えない。


 言うわけにはいかない。


 僕がいま何をどう思ったかは誰も聞くな。


「トメさん、顔赤――」


「じゃかあしい! ともかくサカイさん。そんな近いんなら会社まで送りますよ。うちの傘使ってください。日傘じゃないですけど、この時間なら普通の傘で充分日よけになるでしょ」


「ありがとうございますー」


 というわけで、サカイさんと僕は外に出た。晴れてるのに傘をもって。うーん、変な気分。


「トメさん、吸血鬼って日光に当たると灰になるんですよねー」


「そういう伝説もありますね」


「きゃー!! いやー!!」


「ど、どうしました」


「ハイになってみましたー」


「はよ歩け」


 僕の周りってダジャレ好き多いなぁ。


 僕? 大好きですが何か。


 人間、たまには日光浴びないとダメですよね^^;

 久々に登場のサカイさん、見えないとこで頑張ってます。


 さて、次回は海の話です。リアルの私も明日海いきます、バーベキューです。

 泳ぎません。食べるのみです(ぇ

 あ、もちろんトメたちは泳ぎますよ(笑

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