表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カカの天下  作者: ルシカ
164/917

カカの天下164「カカサエサユカ、無敵説」

「あれ、あいつらってうちのクラスの」


「あ、ほんとだー。なにやってるんだろ」


「なんか……ケンカしてるみたいねっ」


 どうも、カカです。


 夏休みまっさかりの私たちカカサエサユカの三人は、愛すべきアイスキャンデーを食べながら散歩中でした。


 ん? 『あいす』って別にシャレのつもりはないよ。


「どうするー? カカちゃん」


「行っておけば? 番長」


「番長言うな」


 そして散歩中に出くわしたのが、我が貴咲小学校のグラウンドでのトラブルでしたとさ。


「ここは俺たちの場所だぞ!」


「るっせぇなぁガキども。ケチなこと言ってんじゃねぇよ!」


 片方は私と同じクラスの……えっと、確かタケダとかいう男子と運動好きグループ。


 そしてもう片方は……多分この近くの中学生。制服見たことある。ダサ。


「どしたの、タケダ」


「おぉカカ君! ついに名前を覚えてくれたんだね!?」


 相変わらず暑苦しいなぁこの人。


「タケダ君、それどころじゃないんじゃないのー?」


「おぉぉサエ君! 君まで来てくれるとは心強い。聞いてくれ!」


「わたしもいるんだけど……」


 話を聞いてみると、どうやらうちの小学校のグラウンドを中学生グループが勝手に使っていたそうだ。


 そしてサッカーをしようと遊びにきたタケダたちがそれを見つけ、「ここは俺たちの場所だ!」と文句を言い、口ゲンカになったというわけだ。ガキだね。


「んー、でもあんたら後から来たんでしょ。別に早いもん勝ちってことで使わせてあげればいいんじゃない? 細かいこと言わず」


 私があっさりそう言うと、タケダたちは弱気な顔になった。


 別に授業で使うというわけじゃないし、先に使っていたのなら譲ってあげるのが思いやりの心というものだ、うんうん。


「ば、番長がそう言うなら……そうするか?」


「えー、じゃ俺たちどこで遊ぶんだよ!」


 もめ始める男子連中。


「ていうか普通に番長とか言うな」


「まぁまぁ、番長もそう言ってるしー」


「だからさっ、サエちゃん!」


「譲り合いの精神は大事だーってエライ人は言ってるよ? そう言う人に限ってできてないけど」


「裏番長もこう言ってるぜ?」


「裏番長とか言うな〜」


「別にここでしかサッカーできないわけじゃないでしょ。手間かかるけど他の場所さがしなさいよ」


「番長の子分も……」


「誰が子分か!?」


 そんな感じでわいわい騒ぎながらも中学生に譲る方向に落ち着いてきたとき……私たちの会議に待ちくたびれたのか、中学生のリーダーっぽい人が声をかけてきた。


「おいチビスケども。さっさとどっか行けよ。いいかげんにしねぇと痛い目見るぞ?」


 ……チビ、スケ?


 カチンときた。でも私は大人。せっかく穏便に片付きそうなのにわざわざ荒事にする必要はない。落ち着け私。


「はいはい、先に来た方に譲るよ。こういうのは基本は早いもの勝ちだし」


 なるべく下手にでて私が言うと……リーダー野郎は笑った。


「はっ、違うな。早いもん勝ちじゃねぇ、強いもん勝ちだ。てめぇらみたいな腰抜けのガキどもはさっさとおうちに帰ってママのおっぱいでも吸ってろ」


「はっはっは! いいこと言うぜタクマ! たしかにガキにはおっぱいがお似合いだ!」


「お似合いっつってもそのガキどもには無いけどな! 三人とも見事にぺったんこだぜ!」


「当たり前だろ小学生なんだし!」


 下品な笑いが聞こえる。


 ああ、聞こえた。


 プチンって音も聞こえた。こめかみのあたりで。


 前言撤回、私は子供。


 私は言った。


「思いやりの心、ポイ」


 サエちゃんは言った。


「譲り合いの精神、ポイ」


 サユカンは言った。


「手間、ポイ」


 私はタクマとか呼ばれていたリーダー野郎に宣言した。


「じゃあサッカーで勝負! 勝った方がここを使う! 負けたほうは二度と使わない! いいね!」


 中学生たちは馬鹿笑いしながら、あっさりと勝負を引き受けた。


 相手は私たち小学四年生。楽に勝てると思っているんだろう。


「か、カカ君! そんなことを言って……君、中学生に勝てるほどサッカーうまかったか!?」


「それほどうまくないよ。でも必殺技あるし」


「ど、どんな?」


 私はサエちゃんとサユカンにこれからの作戦を一言で伝えた。


「デッドボールだよ」


「それ、野球……」


 野球だったら反則。


 サッカーだったら……ただの事故なんだよね。




 きん! キン! 金! 金!!!!!




 数分後。


 グラウンドには股間を押さえてうずくまる男たちの涙が光っていた。


「こ、こんなの反そ……」


「シュート!」


「ぎゃわん!!?」


 ゴールキーパー(最後の一人)の股間にデッドボールを決めた私は、笑顔でサエちゃんとサユカンに振り返った。


「ナイスアシスト!」


「「イェイ!」」


 パシン! とハイタッチを決める私たちは無敵だった。


「な、なんなんだ、あの三人……恐ろしいほど、息合ってたぞ……ぃたぃよぅ」


「あのちっこい女……男の股間に恨みでもあるのか……まるで親の仇のように」


「パス回しが絶妙すぎる……三人で一匹の獣のようだったぞ! さすがカカ君たち!」


「俺たち、何もできなかったな」


「番長トリオ、おそるべし」


 ……あら、また変な伝説作っちゃった?


 いますよねー、妙なことだけうまい人って。

 カカもその類です。サッカーは自体は並、でも回し蹴りとデッドボールだけはうまいのです。

 これも姉拳法の賜物か。

 それとも単に性格のせいか(多分こっち


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ