カカの天下162「土用のうなぎは進化する」
「ただいまー、買い物いくぞカカ」
「ん」
トコトコと寄ってくるカカを待ち、出発トメです。
夏休みで暇を持て余しているカカは、最近よく買い物に一緒についてくる。
「知ってるか、カカ。今日は土用の丑だぞ」
「ん、なんだっけそれ」
「とあるモノを食べて夏バテにそなえようって日だ。さて問題です、何を食べるでしょうか?」
「土曜日生まれの牛?」
難しい注文するなぁ。
「違う違う、うなぎだよ」
土用の丑にうなぎを食べる。その由来は江戸時代あたりのこと、売れなくて困ってるうなぎ屋さんが『本日、土用の丑の日』と看板を出したら売れまくった、というところから来ているらしい。つまり元は商売根性から始まった説なわけだ。実際に栄養豊富だろうから別にいいんだろうけど。
そんなウンチクを語っているうちにスーパーに到着。
やはり目に付くのはうなぎ。うなぎオニギリやうな丼など、これでもかーというくらいに並べられている。
「うなぎのぼりって言葉があるね」
いきなりなんだコイツは。
「あるけど、それが?」
「こいのぼりって言葉もあるね」
「……あるけど」
「こいは滝をのぼったら龍になるんだったよね。じゃ、うなぎは何になるの?」
また奇抜な質問を。カカの頭は一体どうなってるんだろうか。おもしろいなぁ。
「うなぎ、か……うなぎ……にょろにょろ……うーん」
「あ、わかった」
「へ?」
カカを見ると、我が妹はスーパーの一角に目を留めていた。
そこにある商品は、うなぎの蒲焼。
「かばやき……うなぎはカバになるんだね!」
「壮絶な進化を遂げたな、おい」
「つまり……おたまじゃくし→どじょう→うなぎ→カバって感じに育つわけだ、うなぎは」
「それはいくらなんでも壮絶すぎるぞ」
たしかに見た目は似てるけどさ、カバ以外は。
と、そこでいきなり肩を叩かれた。
振り返ってみると、なんとそこにはカカの担任、テンカ先生が買い物カゴを持って立っていた。
「お、テンカせんせ」
「よっ、トメカカ」
「テンカ先生もカバ食べるんですか?」
カカの脈絡のない質問に、テンカ先生は小首を傾げる。
「何を言いたいのかよくわからんが、カバはともかくバカは大好物だぞ」
うまいこと言うなこの人も。
「ほら、うなぎの蒲焼」
「あぁなるほど。それでカバか。相変わらずだなカカ」
「いや、それほどでも」
「ほめられてないぞ」
「ほめてるんだが?」
さいですか。
「ところでよ、トメ。いつ飲みにいく?」
「あー、そうだね。今週末の休みはカカたちを海に連れてかなきゃなんないし……来週かな」
「わかった。また連絡する。じゃオレはオレで買い物するから、またな」
「おー」
ひらひら手をふってテンカ先生を見送る。
くいくい、と引かれるシャツのすそ。
「ね、トメ兄。テンカ先生と仲いいね」
「ん、まぁな。話やすいし」
「……対策を練らねば。サユカンのためにも」
「……? カカ、どした」
「なんでもない。いいから早くカバ焼き買お」
「そんなものは売ってないがな」
「んじゃバカ焼きでいいよ」
「バカ、か。じゃカカを焼けばいいのか」
「それじゃカカ焼きだよ。じゃなくて誰がバカだ!?」
「テストで算数が30点だったどっかの誰かさん」
「……さて、カバ焼きはどこかなっと」
「逃げたな、バカ」
「バカって言うな!」
「じゃバカカ」
「つなげるな!!」
そんなこんなでうなぎの蒲焼を買って帰り、おいしくいただきましたとさ。
この夏も頑張ってのりきりましょー!
本当は昨日とかに載せたかったんだけど……スイカ割り大会が続いてたので遅れて載せました土用の丑。
ちゃんと昨日は流行にのって(?)うなぎ食べました。
皆さんも夏バテしないように頑張りましょー^^