カカの天下161「スイカ割り大会! 賞品編」
どうも、お休みのトメです。
会社は休みだけどある意味休みじゃありません。それというのも……
「トメ兄、これとこれ、どれがいいと思う?」
「んー……左かな。赤いし」
「赤から離れろ!」
「カカ、んじゃあんな勝ち方するなよ」
「だってそのほうが勝てるし」
というわけです。
ってこれだけじゃわかんないか。説明すると……先日のスイカ割り食い大会で優勝し、僕への命令権を獲得した妹のカカはこんなことを言ったのだ。
「トメ兄、海に行きたい」
「ふむ、連れてけってか」
「私だけじゃなくてサエちゃんとサユカちゃんも」
「それくらいならいいけど」
「それで新しい水着がほしくてさ」
「命令は一つだぞ」
「で、どうせだからトメ兄に選んでもらおうかと」
「一つだって言ってるだろ」
「命令します! 私たち三人を海に連れて行くためにまず新しい水着を選んで買って私に土下座しなさい!」
「なげーよ。でもいいぞ、最後以外は」
「えー、土下座してくれないの?」
「土下座して何を謝れと」
「生まれてきてごめんなさいとか」
「……だからさ、僕なんか悪いことしたか?」
こんな感じで、なぜ僕がこんな目にあっているのかという疑問を残しつつ、デパートの水着売り場にホイホイついてきたわけなのだが。
「これと、これと」
「カカ、おまえ何着買わせる気だよ」
「もちろん一着でいいよ。でもいろいろ試着しないと……うん、これくらいかな」
カカは腕いっぱいに水着を抱えると、試着室に向かってトットコ走っていった。ため息をつきながら僕もそれを追う。
試着室に飛び込む寸前、カカはこちらを振り返る。
「ちゃんとここにいてよ。トメ兄に選んでもらうんだから」
「んなこと言ってもなぁ……僕は水着の良し悪しなんかわからないぞ」
「あれ、おかしいな。トメ兄の部屋に隠してある本は、たしかに水着だらけだったのに」
「さっさと着替えろ!」
試着室のカーテンを乱暴に閉めてカカを追い出す。くそぅ……やっぱたまに僕の部屋入ってるなあいつ。僕の埋蔵金の隠し場所を変えねばならないか。
「ほい、こんなのどう?」
カーテンが開き、分不相応にもビキニタイプの水着を着たカカが現れる。
それを見て、僕は率直な感想をもらした。
「腹が出てるな」
「コロスよ?」
「冗談だって! んー、なんかそれはカカには似合わないなぁ。なんか大人っぽすぎるというか」
「サユカちゃんとかだったら似合う?」
「あー、そうかも」
「ふむふむ……じゃ次いこう」
再び閉められるカーテン。
そしてしばらくしてオープン。
「これは?」
「胸が小さいな」
「水着の感想じゃないじゃん!」
「いやぁ、だってあまりに可哀想で」
「可哀想とか言うなっ」
三度閉められるカーテン。んな怒られても……水着の違いなんかわかんないしなぁ。
「……これは?」
「赤いな」
「トメ兄! マジメに感想言ってよ!」
「妹の水着姿をマジメに語るのもどうかと思うが」
「むぅ……じゃとにかく私っぽい水着選んでよ!」
「んー、でも今着てるのはカカっぽいぞ」
「ほんと?」
「血の色だし」
「そこだけでしょが」
そんな感じで難航しながらも、なんとか買う水着は決まった。
買ったのは結局赤いビキニタイプの水着だったけど、小さなリボン飾りが所々についてて可愛らしい作りだった。子供っぽくてカカに似合うだろうと思う。
なにはともあれ来週の休みは海だ!
「……水着あったかな」
「裸でいいじゃん。注目の的だよ?」
それじゃ警察の的になるわ、たわけ。
というわけで来週は海の話です。
夏はイベント盛りだくさんで大変ですねぇ。
楽しいけどね。
基本的になにげない単発の話のほうが好きだったりする私です。