カカの天下16「名探偵カカの事件簿」
「犯人はおまえだ!」
おはようございまふ……トメでふ。
今日は日曜日。のんびりと昼寝をしていた僕は、そんな妹の声で起こされました。迷惑です。
僕は目をしょぼしょぼとこすり、こちらに指を突きつけながら偉そうにふんぞり返っているカカを睨んだ。
「犯人って……なんの」
寝起きの不機嫌MAXな声で言ったが、カカは微塵も怯まない。
それどころか真顔で首を傾げやがった。
「なんだろう?」
「おまえアホだろ」
「いえいえ、お兄官様ほどでは」
「おにいかんってなによ」
「お代官さまを改造した」
「ああ、なるほどな越後屋」
「ははー」
わけわからん。
「で、なんでいきなり犯人とか言い出したわけ?」
カカは無言でテレビを指差した。
テレビの中では湯煙殺人事件のエンディングっぽいものが流れていた。
「ああ、なるほど。テレビの影響か」
「かっこよかったの」
子供の頃ってズバズバ推理を進めてく探偵とかに憧れるもんだよなぁ。たとえその内容を理解していなくても。
「だから私も犯人捕まえる」
「とは言ってもな。僕は別になんの犯罪も犯してないし」
「じゃあ今すぐ犯して」
「聞きようによっちゃものすごい発言はやめなさい」
「どこがすごいの?」
「いろいろすごいの! とにかく、何か罪を犯してる人見つけるのはいいけど、無実なのに捕まえたりしたら大変なことになるんだからな。そこは気をつけるんだぞ」
「はーい」
わかってんのかなぁ……
翌日。
「あら、トメさん」
「お、サカイさん。おはようございます」
新聞を取りに外へ出ると、たまたま近所のお姉さん、サカイさんとばったり出会った。
「今日もカカちゃんは元気ですか?」
「今日も多分無駄に元気ですよ。おーい」
玄関に向かって呼びかけると、間もなくカカが顔を出した。
そして僕とサカイさんを見比べてこんなことを言いましたとさ。
「不純異性交遊で逮捕する!」
「……はい、カカちゃん。ちょっとお兄さんとお話しようか」
この後。僕は兄妹として、ちゃんとした知識と教養を伝えましたとさ。
翌々日。
僕が朝食に卵焼きを作ろうとしていると、カカがこんなことを言い出しましたとさ。
「ねえトメ兄」
「なに? カカ」
「卵って鳥の子供だよね」
「まぁそうだな」
「今トメ兄は何してる?」
「卵を割ってる」
「この殺人犯!」
「まてやコラ」
この後。僕は育ての親として、食物連鎖の知識と教養を以下略。
翌々々日
僕が風呂場から出ると、なぜかカカが待ち構えていた。
そして僕の股間を指差し、叫びましたとさ。
「猥褻物陳列罪で――」
「HAHAHA! よくそんな罪状を調べたな誉めてやるだが猥褻なのはテメェだ覚悟しろコノヤロウ」
この後。僕は人としての常識以下略。