カカの天下157「あれか!?」
「よう、元気で夏をすごしているかね諸君!?」
「……あー」
「……まー」
暑さにうだっているトメです。
相も変わらず熱気を発散しまくっている太陽のせいでぐったりしている僕とカカ。そこに闖入したのは、砂漠だろうが北極だろうが同じ格好でいそうなほど元気な姉その人だ。
「なんだね、その弱い返事はっ。まだ朝だぞ一日の始まりだぞラジオ体操だぞ!」
暑苦しいなコイツ。
「ラジオ体操はやったけど……ちょっと元気を充電してるんだよ。うだー」
「そうそ、活動する体力を蓄えてるんだよ。姉みたいに一定ターンで自動回復する能力ないんだから」
「そんなRPGのボスみたいに言わないでよっ! まぁいい。そんなことだろうと思って……元気になれるものを持ってきたのだ!」
「どうせ変な高級セットだろ」
「変だと? バカを言うな! あたしは一度も変なものなんか持ってきてないっしょ!?」
じゃあ変なのはおまえの頭だ。
「なんと高級スイカセットだ!!」
おお!? 姉の持ってくるものにしてはまともだ!
「スイカ? やった」
あ、カカが充電完了したらしく復活。やれやれ、じゃ僕もそろそろ復活しますか。
「……ん? セットってなんだ。スイカ以外に何があるんだ」
「ふっふっふ、いま見せてあげるよ。まずはこれ、スイカ!」
ぺカー! と後光が差して見える瑞々しいスイカさまに僕らはひれ伏した。へへー。
「そして……目隠し用のはちまき!」
あ、なるほど。スイカセットってスイカ割りセットか。
「最後に、なんか赤い液体がついた木刀!」
「まてや。その赤い液体ってなんだ?」
「やだなぁ弟、スイカの液体に決まってるじゃん」
「スイカの液体ってそんなドロ赤かったっけ」
「……あー、うん、時効だから心配しないで」
「何の事件が時効なんだ!?」
「うっさいトメ兄!!」
喚いていた僕を、カカがいらだった声で一喝した。
「トメ兄……その木刀が誰を消したところで私たちには関係ないでしょ、ヤったのはどうせ姉なんだから。そんなことよりスイカを前にしてるんだよ。わかってるの!?」
あ、あの……そんな『他人の命より自分の食欲のほうが大事』って胸張って言われても。
「そそ、カカちゃんはわかってるね」
「いざとなったらシュー君がいるんだし、なんとでもなるよ。それより食べよ」
末恐ろしい奴らだ……というかもう今すでに恐ろしい。
「んー、でもスイカ割りか。私たちだけでやるの寂しいね」
「む、そだね。じゃ他のやつら呼んでからやろっか」
「サエちゃんもサユカンも今日は都合悪いみたいだから、今度にしよう」
「わかった。じゃこれ冷蔵庫いれとくねー」
と、いうわけでスイカはお預けになったんだけど……久々に目にするヘンテコセットを見て、僕は思い出したことがあった。
「なぁカカ。そういや二ヶ月ほど前に応募した『商店街の名物を考えよう』ってやつ、結局はずれたんだよな」
「何をいまさら言ってるの。ブラックチャーハンとかリカレンジャーとかいうふざけたのが通るはずないでしょ。当たり前じゃん」
それはそうだがコイツに言われると妙にムカつく。
「じゃあ高級ネコマタセットっていうのもわからずじまいか……どんなのか気になってたのに」
「何言ってるの。こないだ見せたでしょネコマタセット」
「……は?」
「ご近所で噂になったトメ兄の『妹ににゃにゃにゃん事件』を思い出して」
「あれかああああ!?」
意外な見落とし発覚!!
ネコ耳つけたカカのせいで、僕のにゃにゃにゃん♪ な噂が広まりまくった悪夢が蘇る。
「あれはネコマタセットの一部らしいけどね。サエちゃんちに行けば全部あるよ」
高級ネコマタセットって……コスプレセットかよ! そんなん出して商店街はいったいどんな商売を中心に栄えていくつもりなんだ!?
「ちょっと待て、じゃサエちゃんが商店街の名物のに当選したのか」
「うん、さすが私の親友、可愛いの思いつくよね。デンジャーケロリンなんて」
「あれかああああああ!?」
意外な見落とし発覚パート2!!!
カエレカエレとカエルの合唱げろげろされた悪夢が蘇る。
「まったく、トメ兄はカンが鈍いなぁ」
……や、そう、なのかな?
「お待たせー、スイカしまってきたよ。で、話が聞こえたんだけど……なに、今度のスイカ割りはネコとカエルのコスプレしてやるの?」
「おー、カンは鈍いけどおもしろいこと言うのがお姉だね」
「ちょ、ちょいとお二方。まじでやるの? それ」
なんかまた厄介な噂が増えそうな予感。
しかも僕限定の。
でも楽しそうだから困ったもんだ。
はい、というわけで……さりげなーく(?)出てた伏線の回収です。まぁ基本一話完結のこのカカ天という物語にそういうのはあってないようなもんですが(笑)
タイトルの通り読者様が「あれか!?」というのを狙ってみました。
ちなみにネコマタセットはまだ何回か登場する予定です。