カカの天下156「サユカの任務、買い物編」
こんにちは、サユカですっ!
前回の続きなのですが、いま……いま、なんと、わたしの愛しい人、トメさんとデート中なのです!
ただ単に買い物に来てるだけだけど!
場所は近所のスーパーだけど!
二人でお出かけです。デートなのです!
「サユカちゃん、大丈夫? プールの疲れ残ってるだろ?」
「いいえ、大丈夫です!」
「そう? でもなんか鼻息荒いよ?」
「そ、そんなことないですよ! ほほほら、わたし牛肉好きですもん! だから牛みたいに鼻息荒くなるんですよ!」
うああああ何言ってるのわたし!? 鼻息荒いとか女の子としてそれってどうよどうなのよ!!
「い、今のは忘れてください! 一次の気の迷い大戦ですからっ!」
「第二次があるのか?」
「あるかもしれませんが阻止したい次第です!」
「そ、そうか……がんばれ」
「は、はい……」
ああ、まずいわ。緊張で頭がおかしくなりそう……トメさんはどう思ってるのかな?
ちらりと横目でトメさんの顔を見る。
……なんか難しい顔してる。わたし、やっぱり変な子だと思われてるのかな。
「……サユカちゃん」
「は、はい!」
「この100円のたまごと200円のたまご、どう違うんだろうね」
「……は」
「買うときいっつも迷うんだよなぁ……たまごのくせに100円も差があるなんて生意気だよな」
「そ、そうですね」
たまご見て難しい顔してたのかぁ……よかった。なんか言ってることがお母さんみたいだけど。そこも好き。
……さて、そろそろカカすけたちと立てた作戦を実行するべきか。
わたしは二人に渡された紙をポケットから取り出して、トメさんに見えないように開いた。
まずは……カカすけの作戦からだっ!
紙にはこう書かれていた。
『水着コーナーに行って選んでもらっちゃえ。試着して悩殺だっ!』
なるほど!
そうと決まれば早速、トメさんをうまく誘導して水着を売ってるところへ!
水着を売ってるところへ……
スーパーに水着なんか売ってないよ!!!
「あれ、どしたのサユカちゃん。なんかガッカリした顔して」
「え、あ、あはは。ちょっと急にカカすけのこと思い出しまして」
「あー、わかる」
なんかすごい納得されてしまった。まぁいいや。
この作戦は却下。次の作戦に移る!
わたしはトメさんに見えないように、サエすけからもらった紙を開いた。
紙にはこう書かれていた。
『手を握れ。腕を組め。そして抱きついて……いやん♪』
なるほど!
そうと決まれば早速、トメさんの手をロックオンしてファイヤー!
ファイヤー……
できるかああああああ!!!
そんな簡単にそれができれば苦労しないわよっ、ていうか『いやん♪』ってなによ!
いやん!!
「あれ、どしたのサユカちゃん。なんか赤くなったり青くなったり信号機みたいな顔して」
「え、あ、あはは。ちょっとサエすけのこと思い出しまして」
「あー……いろいろあるんだろうな、やっぱ」
なんかものすんごく納得されてしまった。どうでもいいけど黄色の顔にはなってなかったみたいね。あ、黄色って普通のときか、まぁいいや。
それにしても……うぅ、全然うまくいかない……やっぱダメだなぁわたし。
「カカたちはいろいろ注文してたけど、サユカちゃんは何がいい? 買ってあげるよ」
「え、いいんですかっ」
「うん、安いものなら」
「じゃ、ようかんを」
あ、つい正直に言っちゃった!
こんな子供っぽくない可愛くないものを……トメさん、呆れてるだろうなぁ、はぁ……
「お、いいねようかん。僕も好きなんだよ、和風なのが」
「ほ、ほんとですかっ!?」
やったぁ! さすが年寄りくさいトメさん!!
「わたしも和風なの好きなんです、趣味あいますねっ」
「んじゃ今度一緒に緑茶すすりに行こうか」
「は、はいっ!」
ぃやったぁ♪ 一緒にお茶の約束しちゃった!
緑茶すすりに、っていうのが少し気になるけど、お茶はお茶だよね、うん♪
今日はついてきてよかった! 協力ありがとうカカすけサエすけ!
……あれ、あの二人なにか役にたったっけ。
二人して緑茶をずずっと……トメとサユカはいいジジババコンビになりそうです。
でもなにげにカカもせんべいとか好きで和風よりなんですよね。