カカの天下154「ものども喜べっ! 夏休みだ」
「さて、明日からてめぇらは夏休みだ」
ふふふカカです。
ただいまテンカ先生が言ったとおり、今日はもう終業式も終わって残すはこのHRだけ。
これが終われば夏休み開始なのだ! めでたいっ! 酒もってこーい!
「ダメ」
……わかってるよノリだよ冗談だよ、だから睨まないでよテレパシートメ兄もとい父親。どこにいるかわかんないけど。
「夏休みは魔物だ。暑い暑いとだらけているとすぐに過ぎ去り、宿題という悪魔が顔を見せる」
テンカ先生は女性にしては鋭すぎる眼光でクラスを見渡す。その迫力に私たちは息を飲んだ。
「だから……いいかてめぇらっ! 油断するなっ! 気を緩めた瞬間に夏休みは消えていると思え!」
「「さー、いえっさー!」」
テンカ先生の勢いに押され、いまクラスが一つになっていた。さー!
「暑さなんざ吹き飛ばせっ、気合をいれろっ、てめぇらはガキだ! おらおらどうしたガキなら無駄にやかましい声で返事しやがれっ!!」
「「さー、いえっさー!!」」
「西革三等兵!」
「西川です、さー!」
「貴様の仕事はなんだ!?」
「えっと……べ、勉強です、さー!」
「ちっがぁぁう! 貴様は世の中をなめている。勉強なんていうつまらないことで人生経験がつめると思うのか? 罰として腕立て100回!」
「できません、さー!」
「威勢よく情けないことを言うなっ、じゃあ倒れるまでやれっ」
「さー、いえっさー!」
なんだろこのノリ。
楽しすぎる。
「カカ二等兵!」
「さー、いえっさー!」
「ではわかりやすく貴様に聞こう。ガキの仕事とはなんだ!?」
「遊ぶことであります、さー!」
「そのとおり! 貴様はこれから番長少尉に昇格だ!」
「なんか嫌です、さー!」
「いいかてめぇら! 子供っていうのは遊ぶもんだっ、遊びつくすもんだ! その中で人間性を育み、歪んだ社会での楽しみ方を覚えていく。それができないやつは……堕落する! 引きこもる! ニートになる! 聞こえているのかガキども!」
「「さー、いえっさー!」」
「だらけるな、遊べっ。引きこもるな、遊べっ。それができた者こそ、明るく楽しく朗らかに老後も安心になってゆくのだ!」
「「さー、いえっさー!」」
「腹黒一等兵!」
「サエです、さー!」
「貴様の夏休みの一番の楽しみはなんだ!?」
「友達で遊ぶことであります!」
……あれ、いま『で』って言った?
「腹黒の名にふさわしい解答だ! 貴様はこれから裏番長中尉に昇格だ!」
「嫌ですー、さー」
「さて!」
あ、無視した。
「てめぇらはこれから何をする!!」
「「遊ぶ! 遊ぶ! 遊ぶ!」」
「てめぇらの楽しみはなんだ!?」
「「海! 山! 花火!」」
「てめぇらが期待するものはなんだ!?」
「「恋! 告白! その向こう!」」
「てめぇらの捨てるものはなんだ!?」
「「だらけ! 勉強! 宿題!」」
「てめぇらは学生じゃねぇ。ガキだ! 余計なことは考えず、ガキの本分をまっとうしやがれっ!!」
「Yes! Yes! Yes!」
「いざゆかん戦場へ! 解散!!」
「ありがとうございましたぁ!」
うん、あれだ。
この教室、カンペキに洗脳されてるね。
楽しすぎ。
放課後。
「……ね、カカすけ。なんかさっき戦争の声聞こえなかった?」
「気のせいだよ」
「さ、カカちゃん、サユカちゃん。夏休みだよー」
「うん、いっぱい遊ぶわよ、カカすけサエすけ」
「「さー、いえっさー!」」
「……なにそれ」
夏休みのはじまりはじまり。
というわけでカカ達の夏休みスタートです! さー!
小学校の夏休み……なつかしぃなぁ。さー!