カカの天下153「溶ける人達」
「……ただいま」
……ども。灼熱なトメです。
何が灼熱かというと、もちろん外です。あっついのなんのって。
汗がダクダクになりながら家に帰ってきました……が、鍵が開いていてカカがいるはずなのに返事が無い。
仕事で疲れたお兄ちゃんを出迎えないとは何事だ、訴えてやる。
どこにだって? うーんと……家庭裁判所に「妹が出迎えてくれないんです」って相談したらダメかな。なにせ家庭の裁判所だし。家庭の問題を解決してくれるんだよなぁ。
……あかんわ。熱気で変なことばっか考えてまう。
さて、暑かろうが寒かろうが変なことを考えている我が妹は……
「……んぁ」
寝ていた。
居間でごろんと。布団もかけずに。
おそらく暑さにぐったりしていて、そのまま寝てしまったんだろう。
薄い部屋着のままで寝ているものだからお腹が丸出しだ。みっともない。というか風邪ひくぞ。とりあえず起こそ。
僕はカカの肩を揺らしながら声をかけた。
「おーいカカ。帰ったぞ」
「……何名様で?」
寝ぼけてるな。
「兄が一名様、お帰りだぞ」
「……お帰りはあちらになります」
「どちらだよ」
ほんっとに寝ぼけてるな。いまだに目が線だし。どこかの店で働いてる夢でも見てるのか。
「ほら、起きろよカカ。寝るなら部屋で寝ろ」
「……や、みんな働いてるのに私だけ寝るわけにはいきません……」
どんなとこで働いとるんだおまえは。
「いいから起きろっ」
耳もとで言ってやると、カカはようやく重たげにまぶたを開けた。
そして僕の顔にぼんやりと焦点が合わせると、一言。
「……当店はお客様のような方はお断りさせていただいております」
「待てやコラ。僕のどこが変だ」
「変な妹をお持ちです」
「……は? いや、それはそうだけど……は?」
もう何がなんだか。
「ふあぁぁ……あれ、いま夕方?」
「そうそ、朝じゃないぞ」
「ここ、私の店じゃないの?」
「夢だろ夢。ちなみに何の夢見てたんだ?」
「んんん……私が作った『沈む日本』っていう喫茶店の夢」
「なんつー店だ。行きたくねー」
「でも満席だったよ? 日本人のお客さんいなかったけど」
まさか……その夢の中では日本はもう沈んだ後なのだろうか。予知夢だったりしたら限りなく嫌だな。
「とにかく起きろ。寝るならせめて腹に何かかけろ。腹を冷やすと風邪ひくぞ」
「あー、でもおへそ出してると男の人って萌えるんだよね」
「萌え……? なにそれ」
「サカイさんが言ってた。なんとも言えない感情のことだって」
……や、なんとも言えないんじゃワケわかんないんですけど。
「とにかく、寝るなら自分の部屋に」
「いいよ。トメ兄のが激しくて寝られないもん」
「なんだその誤解招き率100%に限りなく近い発言は。僕のナニが激しいって?」
「ツッコミ」
「そんなに激しくした覚えはないけど」
「男はいつもそう言う」
「おまえホントは何歳だよ」
返しがいちいちマセてるというか……意味わかってないだろうな。わかってたら今時の教育問題がどうたらこうたら……あぁ、めんど。別にどうでもいいや。
「とにかく夕飯の買い物……は行くのめんどいなぁ。外暑いし」
「夕飯は冷凍庫に入ってるアイスでいいじゃん」
「あー、それいいなー……いやっ、堕落した子を作らないためにも保護者はもっと厳しくっ、真剣に教育を考えねばならないのだっ! というわけであえてカレー!」
「えー、暑いのに」
「暑いときにあえて熱くて辛いものを食べるというのもオツなもんだぞ」
「どうせレトルトカレー余ってるから楽したいだけでしょ」
「……ちっ、バレたか」
「妹をなめるなー」
「そうだな。なめるならアイスにするよ……カカもなめるか」
「ん、なめる……」
そして僕とカカは二人して、居間でだらだらアイスを食べた。
「トメ兄の、なめていい?」
「カカのもよこせよー。ほれ」
……あれ? またなんかキケンな発言が……まぁいいや。
外は赤く、でも涼しくなってきた。
今年も、暑くなるのかな。
暑いと身体が溶けますよね〜(意味不明
バテてぐったりしがちですが……頑張っていきまっしょ!