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カカの天下  作者: ルシカ
148/917

カカの天下148「ご予定は計画的にトメ」

「おーっすカカすけサエすけ。帰ろう、って何書いてるの」


「おう、サユカン」


「夏休みの予定表だよー」


 性懲りも無くカカです。


 学校が終わって放課後。私たちは明日までの宿題である夏休みの予定表を仕上げているところでした。円の中に『何時から何時までは何をする』と書き込むよくあるプリントです。


 テンカ先生は、


「どうせ誰も守れねーんだから、他の先生ごまかせるような内容なら何でもいいぞ」


 なんて言ってたので、その通りにさせてもらっているところだ。


 でも先生のその言葉に反発して予定を守ろうとする生徒もいる。もしそれを狙ったんだとしたら、テンカ先生なかなかやるなぁ。


「へー、どんなの書いたのっ、見せろ見せろ」


「む、サユカンのクラスも書いたでしょ。そっちのも見せてよ」


「いいよ別に」


 そう言いながら私の書いている予定表を見ようと後ろに回りこんでくるサユカン。あ、顔が近……いやいや、私別に変な趣味じゃナイアルヨ?


「えっと、なになに……?」


 サユカンに乗じてサエちゃんも覗き込んでくる。


 その内容とは……


 朝 6〜9時 トメ兄。


   9〜12時 サユカン。


 昼 12〜18時 サエちゃん。


 夜 18〜18.1時 お姉。


   18.1〜22時 トメ兄。


 こんな感じだ。


「……なんか、これ」


「浮気表みたいだねー」


「あ、そうそう、そんな感じっ。この時間は誰とデート、みたいな風に見えるよね」


「一日に四人も……カカちゃんたら、よくばりさん♪」


「ちがうっ! 面倒だから、『誰と遊ぶか』を簡単に書いただけだよ」


「お姉さんだけすごく短いねー」


「ああ、お姉はいつくるかわかんないから、こんなもんでいいかと。長く遊ぶと疲れるし」


 最近、夕食どきになるとおかずを一品だけ盗みにくることが多いんだよね。そのままうちで食べてけばいいのに、スリルがどうとか言って盗んだらすぐ逃げてく。


 楽しそうで困る。私もやりたい。


「じゃ、サエすけのはどんな感じ?」


「こんな感じー」


 朝 10〜12時 二度寝の嵐。


 昼 12〜18時 遊びの嵐。


 夜 18〜22時 ご飯の嵐。


「サエすけ、やる気ないでしょ」


「うん♪」


「このダメ人間っぷり、どこかで見たような」


 ああ、サカイさんにそっくりなのか。


「だいたいご飯の嵐ってなによ」


「んとねー、思いつきー」


「嵐って言葉だけ聞くと激しそうなのに、その他はとことんポヤヤンとしてるな、君」


「嵐って言っても二度寝と遊びとご飯だしねー。さて、次はサユカンの番だぞよ」


「わたしのは君らのと違って普通よ。ほら」


 それは結構細かく書かれていて、何分でご飯を食べて、自由時間は何時間で、さらに勉強時間や散歩時間など……どこもツッコミ所がない、つまらない予定だった。


「サユカちゃん、普通」


「普通だよ、サユカンのくせに」


「普通でわるいかっ」


「「悪いに決まってる」」


「即答!?」


「じゃあ私がおもしろくしてしんぜよう」


 私はシュバッと鉛筆を取り出し、サユカンの予定表に書き書き。


 トメと、勉強。


 トメと、散歩。


 トメと、自由時間。


「ちょ、そ、そんな……」


 サユカンまっかっか警報発令中。


「べ、勉強に、散歩……や、やだっ、自由時間って自由にナニをするの!? ぅ、うああああ!」


「おー、いい感じな壊れっぷり」


「サユカちゃん、かわい」


「これでいこう! カカすけ、今日はトメさんいる!?」


「おー、アタックする気満々だ」


「私の予定もトメお兄さんとか書こうかなー」




 そして、次の日の職員室。


 テンカ先生サイド。


「あいつら……夏休みの予定ってトメのことばっかじゃねぇか。おもしれぇ、合格!」


 でもこれ、他の先生には見せれないよなぁ、サユカのクラスの担任も首傾げてたし。オレが整理担当でよかった。


 ……ん、ああ。そういえば。


 トメと飲むんだっけ。


「くく、またサユカで遊べるな、こりゃ」


 そうして、テンカ先生の予定にも『トメ』の文字が加わるのだった。


トメ、モテモテ…うらやましや。

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