カカの天下145「番長イェイ!」
もぐもぐカカです。ただいま給食中です。
「なんでサユカンもここにいるの?」
「いちゃ悪いのかっ」
「や、だって別クラスだし」
「……テンカ先生が、いいって言うからさ」
もじもじしてるサユカンは可愛くていいんだけど……いいのかな?
ちなみに私たちはそこらへんの机をくっつけて三人で食べている。誰の机、とかは気にせず食べたい人と食べるのがうちのクラスのルールだ。
「そんなに私たちを愛してるんだねー」
「というよりは向こうに友達があんまりいないんじゃないの?」
「うっさいわカカすけ! その通りだ!」
「わ、認めたー」
サユカンは箸をくわえたまま、はぁ、とため息をついた。
「こっちのクラスにいる人のほうがまだ話せる人多いくらいよ。正直、向こうのクラスあんまり好きじゃないし」
「私みたいな可愛い子がいないから?」
「うん」
「……サユカン、そこは否定してくれないとなんか寂しいよぅ」
「よちよち、カカちゃん。私の胸に飛び込んでおいで」
「…………ぁ」
「なんで鼻血出してるの?」
サエちゃ、ちょと、想像させないで!
「とにかくさ、君らのクラスほど仲良くないんだよ、うちのクラス」
「仲、いいかな? んー、たしかにここしばらくはイジメとか見ないなぁ」
「番長さんがいるからねー」
「番長? 誰?」
そんなのいたっけ。
そう思って聞いてみると、サユカンは立ち上がり、ビシッと私を指差した。
「You!」
「Me!?」
「Yes!!」
「Oh!」
「なんで英語なのー?」
や、ノリでつい。ちょと楽しい。
「私って、番長だったの?」
「知らなかったのー? この小学校じゃね、いじめられそうになったら『カカちゃんに言いつけるぞ』って言えば助かるっていう噂が広がってるんだよー」
なにその怪談のおまじないみたいなの!?
「君さ、イジメにあってる子を助けたりしてたんでしょ? サエすけも助けたって言うし。それの影響じゃないの」
「んー、そりゃ前の学年ではそんなこともしてたけど、最近はとんとそういうことが……」
ふと、教室の入り口で男子二人が喋ってるのが見えた。
私は食事の手を止め、すっと立ち上がり、その二人の下へ向かう。
私が近づいても気がつかない二人。
その二人の膝裏を蹴った。
唐突な膝かっくんで見事にすっ転ぶ二人。
「な、なにすん――」
文句を言おうとした男子生徒の一人を近くの壁を蹴った音で黙らせる。
「入り口で喋るな。他の人に迷惑でしょ」
「……はい」
まったくもう、最近の若いもんは……
ぶつぶつ言いながら元の席に戻ると、なぜか生暖かい笑顔で迎えられた。
「そういうことしてるから番長とか呼ばれてんのよ、カカすけ」
「カカちゃんがクラスをシめてるから、イジメもなくなって仲良くできるんだよねー」
「んむ……や、気に入らないことは我慢するなっていう姉拳法の教えで」
でも女の子で番長って、格好悪いなぁ、なんか。
「こういうの、やめたほうがいいかな」
「カカちゃん、格好いいよ」
サエちゃんが格好いいって言ってくれた……
「じゃ、OK!」
「Yes!」
「GoGo!!」
「Oh!」
「Hoh!」
なんとなくさっきの英語のノリで大騒ぎしてたら、テンカ先生がやってきた。
「シャラップ!!!」
「アイ、サー!」
ほんとノリいいなぁこの人も。
Oh! とか無駄に言ってみるのも楽しいですよねっ