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カカの天下  作者: ルシカ
143/917

カカの天下143「のりノリ」

 おはようございます、寝起きトメです。


 今日はなんだか胸が苦しくて目が覚めました。


 目を開けてみると胸の上に妹のカカが乗っていました。


 そら苦しいはずだこのやろう。


「なんだ、おまえは」


「のりカカ」


「……は?」


「トメ兄に乗っているカカ。略してのりカカ」


「なんだその、のりとおかかの融合品でご飯に合いそうな感じのカカは」


 んむ、寝起きでいまいちよくわからんツッコミしてしまった。


「ご飯と一緒に私を食べるの? つまり私はおかず」


「その言葉はなんか危ないからやめなさい」


 何がどう危ないかは言わないが。


「それで、なんでのりカカなんだおまえは」


 変な質問になったのは寝起きのせいだ。そうに決まってる。


「なんでって、のりだから」


 そう言って僕の胸からぱっと飛び下りるカカ。


「早く、朝御飯食べよ」


「ん、ああ」


 カカはなぜか律儀に部屋の前で待っている。仕方なしに身体を起こしながらぼんやりと思った。


「……のりだから? のりたかったからじゃなくて?」


 まぁいいや。細かいこと気にしてたらこの妹と付き合ってられない。




 そう、細かいことを気にしてたらダメ、なのだが……なんかおかしい。


「トメ兄、のりご飯おいしい?」


「ん……ああ」


 朝飯は『ごはんですよ』でのりごはん。だから僕に乗ってたのかぁ、などというのは置いといて。


「……なんでわざわざ僕の隣で食べる」


 そう、いつもは向かい側で食べるカカが今日に限って隣で食べているのだ。正直、狭い。


「のりだから」


「のりご飯だと隣で食べるのか」


「のりってくっつくじゃん」


「……ああ、接着剤ののりね」


 なるほど、だから僕にくっついてるのか。


 あれ、理由になってない? まぁ、いいか。




 やっぱなんかおかしい。


 今日は休みなのでごろごろしながら雑誌を読んでいたのだが、


「なぁ、なんで僕を椅子にして本を読んでるんだ」


「のりって、椅子に塗ってあるよね」


「ツヤを出すのりか? それはそうだが」


「だから」


「理由わけわからん!」




 買い物に行くと、


「私も行く」


「ほしいものでもあるのか?」


「や、のりがほしくて」




 夕飯の準備をしていると、


「……鍋を覗き込んでものりは入ってないぞ」


「じゃあ入れる」


「入れるなっ!」




 そして寝ようとベッドに入ると、


「……なんでいる」


「や、ノリで」


 ……勢いとかの意味のノリか?


「何を企んでる?」


 今日はやたらとカカが引っ付いてきた。こういうときはカカが何かよからぬことを考えていることが多い。だから警戒してたんだけど……ここまで何もなかった。


 どうしたというのだろう。それともここで何か仕掛けてくるか。


「や、特に理由はないんだけど」


「ないんだけど?」


「一緒に寝ようかと」


 ……は?


 ……あー。


 ……ははぁ。


 これはもしかして……甘えてるのか?


 つん、とした表情で目も合わさずに、そのくせしっかりとベッドを占領しているネコみたいな妹に、僕は思わず苦笑した。


「ま、そういうときもあるよな、たまには」


 なんとも久々なことではあるが。


「よしよし、お兄さんが寝る前にお話をしてやろう」


「……ねぇトメ兄、なんかバカにしてない?」


「昔々、王子様とお姫様がいました。王子様の名前はカカ、王女様の名前はサエといって」


「トメという王様を殺して国を乗っ取り、幸せに暮らしましたとさ」


「展開はやっ!?」


 そんな風にじゃれあいながら、久々に僕らは一緒に寝た。


 そういや今日一日、ずっとカカと二人だったけど……こういうのも久々だったな。


 ま、たまにはこういうのも悪くない。


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