カカの天下14「トイレでの葛藤」
「なぁカカ」
「なに、トメ兄」
「僕さ、おまえの相談にのること多いじゃん?」
「まぁ曲がりなりにも兄だし」
「そこは曲げとくな」
「いいじゃん、曲げても兄は兄でしょ」
「僕ら、何言ってるんだ?」
「さあ?」
よくわかんないけど曲がってるトメです。
唐突にカカに話しかけたせいで曲がってしまいましたが、気を取り直して話を元に戻します。
「えーっとだな。実は相談したいことがあってだな」
「ふむ」
「さっきさ、ファミレスでトイレに入ったんだよ。大きいのしようと思ってさ」
「む、そのときの状況を細かく説明でもするの?」
「どんな性癖の変態だよ。そうじゃなくてさ」
「はいはい。なに? 血でも出たの? じゃあお赤飯だね」
……お子様は遠慮無しに意味を考えず発言するから困りものである。
「そうじゃなくてさ。えっと、トイレットペーパーあるじゃん?」
「うん」
「その横にさ、いつもはファミレスのテーブルの上にある割り箸が、ごそっと置いてあったんだよ」
「……はえ?」
「なんかさ、トイレットペーパーと並んで『俺も使えや』って感じで」
「……ほえ?」
「何に使えばいいんだと思う?」
奇天烈な発言と行動を日課とする我が妹も、これにはさすがに困惑しているらしい。
「えっと、つ、つまむ?」
「なにを?」
「えーと、やっぱほら、アレじゃない? 大きいところだし」
「……つまんでどうするんだ」
「えと……ゴミ箱に捨てるため、とか」
「普通に流せよ」
「私に言われても」
翌日。
「なぁカカ」
「ん?」
「昨日言ってたファミレスにもう一度行ってみたんだよ。どうせだから店員に用途でも聞こうかと思って」
「おお、チャレンジャーだ」
「でさ、とりあえず箸がまだ置かれてるか確認しにトイレに入ったんだよ」
「なかったの?」
「ああ」
「なんだ、つまんな――」
「代わりにスプーンとフォークが『使わねえとタダじゃおかねぇぞ』って感じで置いてあった」
「……わんだほー」
「何に使えばよかったんだと思う?」
「えと……スプーンはすくうもんだし、フォークは刺すもんだし」
「何をすくって刺すんだ……ってやっぱアレか?」
「め、召し上がれ?」
「嫌だよ!」
「店員には聞いたの?」
「怖くて聞けなかった……」
さらに翌日。
カカがそのファミレスの女子トイレに入ってみると。
「面白い店だ」
ミニガスコンロとお鍋が置いてあった。
……煮て食えと?