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カカの天下  作者: ルシカ
135/917

カカの天下135「ねえねえ牛くん、いただきます」

 こんにちは、トメです。


 今日の仕事は終わり。家に一旦帰ってから夕飯の買い物へと出かけます。


「ただいまー」


「おかえりートメ兄」


「夕飯の買い物いってくるけど、ほしいものあるか?」


「牛を一頭」


「わかった。じゃ、いってきます」


「いってらっしゃい。活きのいいの頼むねー」


 牛を一頭か。


 カカも知らないうちに、大型肉食動物みたいによく食べるようになったんだなぁってちょっと待てぃ。


 慌てて引き返して家のドアを開けた。


「あ、おかえり。速かったね。ノラの牛でもいた?」


「そこらに牛がうろついてたら怖すぎるわ!」


「じゃあ『私を拾ってください』みたいな感じで放置されてたとか」


「そんなデカブツ捨てるような度胸のある飼い主いねぇよ」


「えー、『私を食べて?』って書いて捨てれば結構拾われるんじゃ」


 それは確かに拾われるかもしれないが!


「とにかく牛一頭なんて買ってこれるか。なんでそんなのほしいんだ。牛肉ほしいなら明日にしてくれ。特売で100gなんと98円のが」


「トメ兄、主婦みたい」


 うるさいなぁ……スーパー使って生活してれば誰だって覚えるようになるんだよ、そういうことを。


 特売のチラシをかかさずチェックしたり……するようになるよね? ね? なるって言ってお願い。


「私がほしいのは牛肉じゃないよ。牛乳」


「牛乳? そんなの毎日買ってきてるじゃないか」


 常に一リットルのパックを冷蔵庫に入れていて、なくなったら補充するのがうちの決まりだ。


「それじゃ足りないんだよ。ミルク味のカカ、新発売! ってくらいに飲みたいの」


「ミルク味って……元々のカカは何味なんだ?」


「危険な味」


 ……んー、デンジャラス。 


「大体、誰が食べるんだ?」


「私を食べたいならトメ兄でもいいよ。舐めてみる?」


「どこを」


「ここ」


「無理!」


 さぁ、どこでしょう。


「――要するに、とにかく牛乳飲みまくりたいから手っ取り早く牛を買えと?」


「うん、頑張って元を取るよ」


 何年かかるんだよ。


「なんなら牛乳出る乳の部分だけもぎ取ってくるとか」


 牛の、乳を?


 しぼるんじゃなくて、もぎ取るの?


 こう、抉るようにブシャーッと!


「ぉぇ……ちょっと想像した」


「それだと安くなるじゃん。私毎日吸うよ、そのお乳」


 出るのは赤い牛乳だけだろうがな。しばらくしたら牙が生えて吸血鬼にでも進化しそうだ。


 吸血鬼VS姉、とかどうだろう。怪物同士でいい映画になりそうだな。


「なんでそんなに牛乳ほしいんだよ」


「大きくなりたいの」


 うーん……確かにカカは身長が平均より低めだ。サエちゃんよりちょっと低く、サユカちゃんよりかなり低い。


「牛乳飲めば大きくなるって聞いてさ、胸」


 ナンデスト?


 カカはどこからともなくトマトを二個取り出して、自分の服の中に入れて胸の辺りに持ってきた。


「こんな感じに。ぼいんぼいん」


「ブッ!」


 思わず吹き出した。なんだそのワガママすぎるボディは……もーれつ!


「あのぅ、カカさんや。なぜにそのクソガキと呼べる年齢で胸なんて気にしてやがるんでしょうか」


「胸があればなんでもできるって先生が言ってた。ぼいんぼいん」


 ぼいんぼいん言うな。


「……や、なんでもってさ、そりゃある意味なんでもできるかも知れないが……カカはその胸で何がしたいんだ」


「や、特には」


「特にやることないのになんでほしいんだ」


「いざというとき使うためにとっておこうかと」


 いざというとき?


 胸を使う? てことは好きな人を口説くときかな。


 カカの好きな人はサエちゃんだから、サエちゃんを胸で……


「……………………」 


 や、ダメだろこれ以上の想像は。


「カカ。まぁ牛乳を飲むのはいい。身体にいいから。でも飲みすぎるのはいけない」


「そなの? 飲めば飲むほど胸が出るのかと」


「それだと胸じゃなくて腹が出る。そうするとなんにもできなくなるぞ」


「こんな感じ? ぶよんぶよん」


 胸にあったトマトを下へスライド。


「ブッ!!」


 また吹き出してしまった。


 とにかく、太ると言ったらカカはあっさりと引き下がってくれた。


 しかし、胸かぁ。カカも女の子だし、いずれは本気で悩んだりするのかなぁ。


 特に根拠はないし、なんとなくだが……


 カカは大きくなっても巨乳にはならなさそうだな、と思った。


 や、ほんとなんとなく。


 別にそれが僕の好みってわけじゃないよ?


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