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カカの天下  作者: ルシカ
130/917

カカの天下130「名探偵サユカの事件簿?」

「ん……あれ、トメさんのお姉さんだよね」


 こんばんは、サユカです。


 カカすけの家から帰る途中、サエすけとも別れて近所のファミレスの前を通ったとき……見覚えのある姿を見つけました。


「向かいの人……誰だろ」


 向かいの席でお姉さんと話しているのは……会ったことのない女の人だな。そういえばカカすけが「今日は姉はデート」って言ってたっけ。


 よし、潜入してみよう。


 ……別にカカすけがやってた探偵ごっこが羨ましかったわけじゃないよ?


「いらっしゃいませー」


 えーっと……お姉さんの後ろが空いてる。


 念のためお姉さんの連れの人にも見られないように気をつけて……と。


 お姉さんの真後ろに背を向けて座った。よし、多分大丈夫。


 うーん、わたしって探偵っぽい!


「――でさぁ、あんたも娘に会いたいんならいい加減さぁ」


「そうは申しましてもー、当主様がー」


 ……なんの話してるんだろ。


 当主? 珍しい言葉だなー……って最近どこかでそんな単語を聞いたような。


「だいたいさ、その当主ってのはどんだけ偉いのさ」


「気にくわない政治家をサクッとやっちゃえる程度には偉いですー」


「……そらすごい。うちの親父でも飼ってるのかな」


「とにかく、当主様の命令は絶対で、しかも情報網がものすごく広いんです……娘と隠れて会おうにも……あの子が私に会ったそぶりを誰かに見られた瞬間私はサクッといっちゃいますー」


「んー……ヘビーねぇ」


 あれ?


 あれあれ?


 なーんかひっかかるなー。どこかで似たような話を聞かなかったっけ。


 見られるのを覚悟で後を振り向いてみた。


 お姉さんの連れの顔が見える。


 その瞳を見た瞬間、わたしの脳裏に友人の姿が浮かんだ。


「謎は全て解けた!」


 私は思わず叫んでいた。


 そして当然、それは二人にも聞こえて――




「……あの、なぜ私は裏路地に連れていかれているのでしょうか!?」


「あー、気にしない気にしない。ちょっと人目につきたくなかっただけ」


「誰かに見られて警察呼ばれても困りますからねー」


 ガクガクブルブルガクガクブルブル!!


「別にとって食いやしないよ」


 お姉さんはにやーっと笑って、優しく囁いてくる。


「返答しだいでは」


 ものすんごくこあいこと口にしたよぅこの人!


「カツコさん、冗談はこのくらいにー」


「たしかに冗談は半分だけど、本気も半分あるんだからね、サユカちゃん」


「……は、はい」


 おそるおそる頷くわたしに、お姉さんは今度こそ本当に優しく微笑んだ。


「あたしらの話、聞いてた?」


「……はい」


 誤魔化しようはないだろう。ヘタなことを言えばサクッと……うう。


「謎は解けたーって言ってたけど、それはあたしらが話してた内容が全部わかったと理解していいの?」


「は、はい……その人が、サエすけの……」


 間違いないと思う。だって目がそっくりだ。毎日見慣れている瞳。鈍い子じゃない限りは気づくと思う。


「そういうこと。この人らの家の事情は知ってる?」


「おおまかには、サエすけに聞いて知ってます」


 お姉さんは軽く頷いて、ちらりと女性に視線を合わせる。


「じゃ、あたしの言いたいことわかるよね。これはサエちゃんには秘密」


「これって……お姉さんがその人と会ってたことを、ですか?」


「んとね、この人はサカイさんっていうんだけど……うちの近所に住んでてさ、トメとカカとも知り合いなのよ」


 知り合いなのにカカ気づいてないの!? にぶっ!


 ……でも、サエすけの家の事情知らないんじゃ『母親かもしれない』なんて思いつかないのも仕方ない、か。


「だから、サエちゃんのお母さんが近くにいるってこと自体を誰にも言わないでほしい」


 なるほど……そういう、ことか。


 とにかく全般的に見なかったことにしろっていうことだ。


「さもなくばサクッといっちゃうよ」


「わかり、ました」


 サクッとやられるわけにはいかなかったので、しぶしぶわたしは頷いた。


「でも」


 でも、言わずにはいられなかった。


「サエすけ、寂しがってるんですよ? お母さんがいなくなって、独りぼっちになって、それで――」


 言い募ろうとしたわたしの頭に、優しく手が置かれた。


 サエすけのお母さん……サカイさん。


「いまは、あなたたちがいるでしょう?」


「…………!」


「勝手なのはわかってるー。でもねー、安心してるの。あなたやカカちゃんがいるから。だから、もう少しだけ時間をちょうだい。頑張って……みるから」


 その、優しくて悲しそうな声に。


 今度こそ、本当に。


 私は頷くことしかできなかった。 


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