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カカの天下  作者: ルシカ
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カカの天下13「お隣のOL事情」

「つまりですねー、やっぱりですねー、会社というのはつまんないものなんですよー」


 こんにちは、トメです。


 この間延びした声で喋っているのは、最近近所に引っ越してきたサカイさん。先日うちの妹カカがお世話になったついでにと、おそばを持ってきてくれたのです。


 で、せっかくだから上がってもらってお茶でも、という良い感じの展開になり、「お仕事なにされてるんですかー」とか聞いたら「実はOLなんですがー」と愚痴がどんどん出てくるという悪い感じの展開となってしまった。


「そうですねぇ。まー僕の仕事場もそんないいもんじゃないですし」


「やっぱり上司が問題ですねー」


 同じくテーブルを囲んでいる小学生の妹はフシギそうに首をかしげた。


「ジョージってなに?」


「こら、どっかの外国人っぽくて漢字にすると危ない言葉を吐くなカカ。上司。えらい人のこと」


「んー、私らにとっては先生?」


「そうそう」


 会社の居心地は上司次第。これはどこでも共通だろう。もちろん同僚となる人間も重要ではあるが。


「歳くってるだけなのに、やたら偉そうなんですよねー。特別優秀でもないのにー」


 おっとりしている風に見えてはっきり言う人である。それだけストレスが溜まっているということなのかもしれない。


「はぁ、やっぱあれですか。雑巾の絞り汁いれたお茶を出したりするんですか?」


 冗談交じりにいった僕の言葉にサカイさんは「あははー」と平和そうに笑った。


「そんなことしませんよー。それじゃ相手に気づかれないじゃないですかー」


 ……ん? セリフがなんか平和っぽくないぞ。


「悪気がないように見せて、かつダメージを与えるのが大事なんですよー」


 おいおい。


「たとえばですねー。やっぱり社内でも虫とかいますよねー。それを見つけたらキープしておいて、お茶にいれるんですー。大抵の人は飲んでから気づきますからそれでダメージを与えつつ、虫が入ったのは偶然です、と言い張ればおっけーです」


「あ、あーっと。ほら、虫とか触れない女の人とか多いですよね? まさかそんなことを世のOLが皆やってるってことは」


 サカイさんは残念そうにため息をついた。


「そうなんですよねぇ。だから結構やる人が少なくて。しかも何度もやるとさすがにばれるから三回くらいが限度ですしー」


 なにその妙にリアルな数字。


「あとはですねー、やっぱり書類のコピーを頼まれるじゃないですかー」


「まぁ、そうだね」


「頼まれたときはちゃんとした部数をコピーして渡すんですけど、会議前とかに隙を見て数部抜いておくんですー」


「えっと、すると、どうなるのかな」


「会議のときにその上司さんは『部数が足りない』と言われて気まずい立場になりますねー。会社の人って無駄にぴりぴりして偉ぶってる人ばっかりですから、さぞやネチネチ言われるでしょう」


「はぁ、それは、その……ばれたりしないんですか?」


「会議で本人がいない隙に、上司の机の上の比較的気づきにくい場所に置いておけばー、「どういうことだ!」って怒る上司に「そこにあるじゃないですか」ってさらに恥をかかせつつ責任逃れできますー」


 ……こえぇよ、OL。


 でもご近所のよしみでちゃんと話を聞いていた僕は気づかなかった。


 横に座っているカカが話を聞きながらメモを取っていたことを。




「んとね、学校に嫌な先生がいてね」


「はぁ、それで?」


「でね、サカイのお姉ちゃんが言ってたことを試してみたの」


「へぇ、どんな?」


「んとね、職員室いって、お茶煎れてあげますーって言って」


「ほぉ。で?」


「捕まえたバッタを入れて出してあげたの」


「どんだけ堂々としたケンカの売り方だよ」


「こっそり入れたよ?」


「こっそりしてないから」


 ピンポーンと無機質に薄情にインターホンが鳴った。


『すいません、あの、カカちゃんのことでお話が――』


 居留守!!




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