カカの天下128「カカVS姉娘 まねっこ」
「手をあげろー」
「…………ん?」
「ばーん」
胸の辺りを圧迫する重さと、ピロロロローという音と共に目が覚めたカカです。
目の前には銃っぽいおもちゃを私に向けているミニサイズの人間が。
「あれ……タマ?」
そう、私の上に乗っかっているこいつは私のライバルにして天敵、姉の娘のタマだ。久々に見るけど……なんでいきなり私に銃を突きつけているのだろうか。
「ばーん」
ピロロローという音が鳴る。撃ってるらしい。
「ばーん」
「……ばーん」
なんとなく指でっぽうで撃ちかえしてみた。
「うきゃー」
撃たれたタマは私のベッドの隅にころん、と倒れた。
「うたれたー」
なかなか可愛いじゃないか。
「おやっさーん」
誰それ。あ、任侠ものかな。
「で、また預かれと?」
「おう、姉が勝手に置いてった」
「で、また私が世話しなきゃなんないと?」
「だって僕は仕事だし。カカは学校休みだろ」
というわけで、またもや私と姉娘タマの戦いが始まったのである。
「……とりあえず朝御飯、食べよ」
トメを見送ってから、いつもより少し遅い朝食。こういうのをしっかり用意してくれるトメ兄はいいお嫁さんになれると思う。よかったねサユカン。
「たべうー!」
「なに、あんたも食べるの?」
仕方ない……タマ用の食器は、と。
万が一割れてもいいようにトメ兄のお椀でいいや。
自分のご飯をよそう。すると横でタマが同じようによそうマネをしながら無駄にキラキラ瞳を光らせてこっちを見ている。
「……やりたいの?」
こくこく、と勢いよく頷くタマ。
この子が何歳なのか、いったいどこまでこういう生活関係のことができるのか、そういうことは全くわからないけど……とりあえずやらせてみることにした。
お、ちゃんとよそった。
よそった。
よそいまくった。
よそいすぎて高くそびえたったご飯が倒れた。
ちゃんとできるかどうか近くで見ていた私の顔にかかった。
ご飯と怒りのせいで熱いぜベイビー。
負けるな私……そうだ、私は年上。この子よりでっかいの。だからこのくらいのことは大目にみてあげるの。ああ私って理性が強いわ! あははははは誰かほめろ。
ぶん殴りそうになるのを必死でこらえてご飯を片付けた私は、気を取り直してコップに氷を入れて、ジュースをいれる。
そして、またもや隣でマネをしながらキラッキラキラリーンな瞳でこちらを見つめる悪魔の娘。
「……やるの?」
こっくりこっくりと頷きまくるタマ。
「……いいよ。ただし氷だけね」
氷一つ入れるくらいならいいだろう、と氷を入れた容器と氷を掴むトングを渡した。
タマがテーブルにコップを置く。
そして氷を掴んで、コップの上に……ほ、なんとかうまくいきそうだ。
そして氷を落下させた。
氷はみごとコップの真上。
なのに氷は弾かれて床へ――
「コップさかさまじゃん!!!」
そっちは盲点だった!
「はいったー」
「入ってないわ!」
やれやれ、と氷を拾う。
そして顔を上げた。
「ジュースー」
「だからコップさかさまだって!!!」
ああ……テーブルと床がオレンジ味に……
「あ、あのねぇ……タマァ!!!」
私はキレた。
しかしタマはまるで私に感謝するようににっこりと笑って……私の頬に、キスをした。
お……
お…………
お………………
おこれないいいいいいいいいい!!!!!!
「ただいまー、って、どうしたカカ」
「トメ兄……女ってさ、いくら弄ばれても愛してしまう悲しい生き物だね」
「や、だからさ。なんでタマと留守番するたびに何か悟るんだよおまえ」
「女だもの……」
つかれた……