カカの天下127「カカと言葉、レベル2」
「雨だねーほんと」
「雨だなーほんと」
こんちは、トメです。
今日も今日とて雨雨ざーざー僕らはごろごろです。
「ねートメ兄」
「んー?」
僕は雑誌を読みながらごろごろ読み読み。カカは宿題をしながらごろごろ書き書きです。
「天上天下唯我独尊ってどういう意味?」
えーっと、たしか世の中で自分が一番偉いとか思ってるやつのことだよな。
「おまえのことだよ」
「私なの?」
「おう」
「わかった。えーっと、わ、た、し、の、こ、と」
多分熟語の意味でも書く宿題なのだろう。先生がこの解答読んだらどう思うかな。
「次、二律背反」
えと、二つの要素が食い違うこと、だよな。
「んー、わかった」
「お、すごいじゃん」
「えと、『二』つの法『律』は『背』中を『反』らすって意味でしょ」
や、意味がさっぱりわかりませんが。背中を反らす法律ってなにさ。それが二つもあんのか?
「よし、次!」
僕の宿題じゃないし、まぁいいや。
「大安吉日……大安売りの日だね。いい日だから吉日ってことで」
ああ、なるほど。そっちの意味のほうがわかりやすいな。
「大根役者……ダイコンが好きな役者?」
「ダイコンみたいな役者のことだよ」
「なるほど。顔が、ダイコンの人、っと」
顔の形がダイコンね。意外といるかも?
「いいだくだく……?」
唯々諾々。人の言いなりになることだな。
「これ、漢字で書けって」
んー、小学生には難しい漢字のような気もするけど、そもそもこれは辞書使って調べる類の宿題みたいだしなぁ。そこを僕に聞くのとカンでやってるんだから……
「胃にダクダクとなんかを入れるって意味で、胃入ダクダクでいいや」
こんなスペシャルな答えが出るわけだ。
怒られても僕は知らんぞ。
「次は……ことわざの問題!」
「へー。言ってみ」
「えっとね、次のことわざが指し示す意味を書きなさい。一問目、『いつまでもあると思うな親と金』だって」
親はいつまでも生きていてくれないし、金は使えば減っていくから自立と倹約を心がけろって意味だな。
「これはそのまんまの意味だね」
「まぁな。で、カカ。正解は?」
「働け、ニート!」
……いや、まぁ、間違ってはいないか。
「次は、『豚に真珠』だって」
価値のわからない者に高価なものやっても意味がないってやつだな。
「豚肉の中には真珠が入ってることがあるの!?」
おーほんとか。そりゃすごい。
これからは豚肉ばっか買うようになっちゃうなぁ。いやでも真珠入ってたら食べにくそうだなぁ豚肉。
「最後の問題! 『文は人なり』だって」
文章を見れば書き手の人となりがわかるってことだろうけど……
いい問題が最後にある問題集だな。
今カカが書いてきた解答文を見れば、カカがどんなやつかは一目瞭然だ。
とにかく意味不明な解答文の数々。
それを読んだ人はみんなこう思うに違いない。
わけわからん、と。
ああ、カカ。
おまえはすばらしくわけわからん。だがそこがいい。
「トメ兄、これの意味は?」
「これが私だ、どんなもんだい! とでも書いとけ」
そして宿題提出後。
「カカ、ちょっといいか」
「なんですかー、テンカ先生」
「おまえの宿題な」
「はい」
「合格!」
「やた♪」